ブッカー賞受賞作品翻訳本
  
   

 

ふと、ブッカー賞受賞作品を全部読んでみたいなと思い立ち、まとめてみるこ とにしました。文学賞をとったからどうだということもないのかもしれませんが、それぞれの賞には それぞれの傾向があり、読書のひとつの指標として文学賞は役立てたいと思っています。 そんな中で、ブッカー賞は私たちの好みに比較的あうかなと思い、ひととおり読んでみようと計画を立 てました。ということで、私的な情報収集なんですが、ご参考になればお役立てください。
  
ブッカー賞について
  
イギリスの文学賞。元来はブッカー・マコンネル小説賞と称した。1969年に多国籍コングロマリット、 ブッカー・マコンネルがゴンクール賞をまねて、小説に対する社会的関心を喚起するために創設した賞。 過去1年間にイギリスおよび旧イギリス領植民地で発表された長編小説を対象として、毎年9月に最終候 補数点を挙げ、10月に1点を選ぶ。第1回の受賞者はP.H.ニュービーで、以後ナイポール、マード ック、W.ゴールディング、ラシュディ、アニータ・ブルックナー、カズオ・イシグロらが受賞。
『集英社 世界文学大事典 5事項』より

参考本:「ブッカー・リーダー 現代英国・英連邦小説を読む」
  
翻訳されているブッカー賞受賞作品
  
1970バーニス・ルーベンス『えらばれしもの』(鈴木和子訳・YMS 創流社)
 未読です。図書館でも利用しなければ、手に入れるのは困難です。
1972ジョン・バージャー『G』(栗原行雄訳・新潮社)
 未読です。図書館でも利用しなければ、手に入れるのは困難です。
1973ジェイムズ・G.ファレル『セポイの反乱』(岩元巌訳・新潮社)
 未読です。図書館でも利用しなければ、手に入れるのは困難です。
1976デイヴィッド・ストーリー『サヴィルの青春』(橋口稔訳・集英社)
 未読です。図書館でも利用しなければ、手に入れるのは困難です。
1978アイリス・マードック『海よ、海』(蛭川久康訳・ 集英社)
 未読です。図書館でも利用しなければ、手に入れるのは困難です。
1979ペネロピ・フィッツジェラルド『テムズ河の人々』(青木由紀子訳・晶文社)
 未読です。
1980ウィリアム・ゴールディング『通過儀礼』(伊藤豊治訳・ 開文社出版)
 読みました。2001年になってようやく翻訳出版されました。この3年後の1983年にゴールディングはノーベル賞を受賞しています。有名な『蝿の王』は 1954年発表作品です。ご紹介はこちら。
1981サルマン・ラシュディ『真夜中の子供たち』 上・下(寺門 泰彦訳・早川書房)
 読みました。 イギリスに住むインド人であるラシュディが、インド・パキスタンを舞台にして、不思議な能力を持った一人の男の数奇な運命を、 政治にからめて語っていきます。濃厚な余韻がいつまでも残る名作でした。 ご紹介はこちら。
1982トマス・キニーリー『シンドラーズ・リスト』(幾野宏訳・新潮社)
 未読です。映画で有名ですよね。副題は、「1200人のユダヤ人を救ったドイツ人」です。
1983J.M.クッツェー『マイケル・K』(くぼたのぞみ訳 筑摩書房)
 未読です。読もう、読もうと思いつつ時が流れていくうちに、この作家さんは1999年、ふたたび ブッカー賞を受賞しました。出版社からのご紹介によると、俺はここにいたくない。だから逃げるんだ。内乱の南アフリカを舞台に、人間の自由を緊張感あふれ るタッチで描く寓意的長編、だそうです。
1984アニタ・ブルックナー『秋のホテル』(小野寺健訳・晶文社)
 読みました。が、若い頃に読んだためかピンと来ず、もう少し年を重ねてから再読してみようと思っています。
1987ペネロピ・ライブリー『ムーン・タイガー』(鈴木 和子訳・朝日出版社)
 読みました。ここで受賞するまでにも、『トーマス・ケンプの幽霊』でイギリス児童文学の最高峰である カーネギー・メダル賞を受賞しており、『リッチフィールドの道』では77年ブッカー賞候補となり、他にもいくつかの賞をとっている実力派の作家さんです。 ご紹介はこちら。
1988ピーター・ケアリー『オスカーとルシンダ』(宮木 陽子訳・DHC)
 読みました。とてもとても不思議な余韻を残す長編です。 ご紹介はこちら。
1989カズオ・イシグロ『日の名残り』(土屋  政雄訳・中央公論社)
 読みました。厳選作家にも入れています。カズオ・イシグロはこの作品を、ブッカー賞を獲るために書いたと 言っているそうですが、それにしても、しっとりとした雰囲気の堪能できる良い本でした。 ご紹介はこちら。
1990A.S.バイアット『抱擁』 I・II(栗原行雄訳・ 新潮社)
 読みました。バイアットはこの作品をノヴェラ(小説)ではなく、ロマンス(ごく空想的な恋愛もの)であると 言い切り、あくまでも実験的な作品と定義づけているそうですが、それにしても、これに賞をあげなくてどうするのってぐらいの完成度の高い素晴らしい作品です。 ご紹介はこちら。
1991ベン・オクリ『満たされぬ道』 上・下(金原瑞人訳・平凡社)
 読みました。精霊世界と人間世界を行きかう少年の、かなり児童文学に近い作品です。大人の小説を期待すると裏切られるかもしれません。
ご紹介はこちら。
1992マイケル・オンダーチェ『イギリス人の患者』(土屋政雄訳・新潮社)
 読みました。ごめんなさい、ちょっと私たちの好みではなかったですね。
1993ロディ・ドイル『パディ・クラーク ハハハ』(実川元子訳・ キネマ旬報社)
 読みました。両親の離婚に傷つきながら成長していく少年の姿がやさしく、ノスタルジックに書かれています。この方の作品は、アイルランドの家族たちをやさしく描いた名作揃いです。
ご紹介はこちら。
1996グレアム・スウィフト『ラスト・オーダー』(真野泰訳・中央 公論社)
 読みました。 亡くなった男の散骨に出掛ける男達の胸に去来するさまざまな思いを静かに、緻密に書き上げた、大人の小説です。ブッカー賞らしい秀作といえるのでは。
ご紹介はこちら。
1997アルンダティ・ロイ『小さきものたちの神』(工藤惺文訳・DHC)
 読みました。インド南西部のケララ州を舞台に、栄華をすぎて没落していく家族を、双子の兄妹エスタとラヘルの目を通して叙情豊かに書き上げています。 ただ、読んでいると眠くなる(笑)
ご紹介はこちら。
1998イアン・マキューアン『アムステルダム』(小山太一訳・新潮社)
 読みました。厳選作家にも入れています。私たちは、この作品より、この前の年にブッカー賞候補と なった『愛の続き』のほうが、ずっと優れた作品だと思っています。ご紹介はこちら。
1999J.M.クッツェ−『恥辱』(鴻巣友季子訳・早川書房)
 読みました。ストーリーの裏で、南アのアパルトヘイト問題を強く訴えかけた作品のようですが、アパルトヘイト問題が国家の深刻な課題だからといって、 男の暴力に屈し、みずからすすんで男に隷属しようとする女の姿を、一種の象徴として読むなんて私たちには無理ですね。女性問題のほうを強く意識してしまいました。
ご紹介はこちら。
2000マーガレット・アトウッド『昏き目の暗殺者』(鴻巣友季子訳・早川書房)
 読みました。事故でなくなった妹の遺した小説は、猥褻ともいわれ、近代SF小説の草分けともいわれながら、今だ賞賛されつづけている。 残された姉は老いた身を嘆きながらも、華やかな一族の過去に隠された謎のすべてを語りはじめる。アトウッドが20世紀文学にケリをつけた大作です。
ご紹介はこちら。
2001ピーター・ケアリー『ケリー・ギャングの真実の歴史』(宮木陽子訳・早川書房)
 読みました。ピーター・ケアリーは1988年の『オスカーとルシンダ』に続き、2度めの受賞です。私たちには『オスカーとルシンダ』とはかなりイメージが違っていました。『オスカーとルシンダ』は作者が斜に構えていて冷たいような印象を受けたのですが、 この作品の作者の眼差しはとにかくあたたかく、主人公への思い入れに満ちていました。とにかく文章が上手でないととれない賞ですから、ケリー・ギャング自身が書いたという設定の文章は原書ではどのように書かれているのか、かなり気になりました。
ご紹介はこちら。
2002ヤン・マーテル『パイの物語』(唐沢則幸訳・竹書房)
 読みました。通常よりも大判の本、ちょっとかわいらしい表紙絵、内容紹介には少年の漂流記・・・こんなYA本まがいのものがブッカー賞受賞か、とすっかり騙され、読んで度肝を抜かれました。
ご紹介はこちら。
  
もしかしたら、他にも翻訳されているブッカー賞受賞作品はあるのかもしれませんが、 今回はここまでしか調べがつきませんでした。ご存知の方がいらっしゃいましたら、掲示板にてご一報いただけると、 大変ありがたいです。