理想を追って転職する
ハウスメーカーは言ってみれば合理的に工場生産された新建材で造られたキットで作るプラモデルハウスです。納得のゆく居心地の良い家を建てるのにプラモデルでは限界があり、プラモデルではない在来工法の家に関わりたくて「匠の会」という看板のある工務店に入社しました。柱の樹種、寸法から決めてゆく昔ながらの家の建て方です。匠という言葉も魅力的でした。設計室は2階の古い畳の部屋にドラフターがコの字並び、のんびりとした家庭的な雰囲気がありました。居心地が良かったのですがここも国道沿いに四階建ての本社ビルを建てた頃から空気が変わってきたのだと思います。
ある日、コンセントの位置の打ち合わせをしている時クライアントの隣に座っている営業マンがテーブルの下で私の足を蹴ったのです。終わった後彼は言いました。「コンセントの打ち合わせなどはさっさと終わらせろ」「コンセントの位置を決めるのも大切なこと。時間は充分ほしい」と言い返した私。営業マンや会社と私の意見が分かれるのは毎度のことになってきました。やはり会社で一番大事なことは利益を上げることという、考えてみれば当たり前のことでした。出来るだけ合理的にすみやかに打合せを済ませて次の仕事に取り掛かることが私の使命だったわけです。