すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「アレクサンドリア四重奏4 クレア」 ロレンス・ダレル (イギリス)
                                      <河出書房新社 単行本> 【Amazon】

ネッシムからの手紙を受けとったダーリーは、ついにアレクサンドリアに戻る決意をした。戻ってみると、アレクサンドリアの街も、多くの知人たちも懐かしいばかりではあったが、それぞれに変化を遂げ、新しい人間関係が形成されていた。戦争が色濃く影を落とすアレクサンドリアで職を得たダーリーにもまた、予期せぬ新たな展開が待ち受けていた。
にえ 1 ジュスティーヌ」「2 バルタザール」「3 マウントオリーヴ」と読んできたこのシリーズですが、ついにこの本で完結です。
すみ 1、2、3は、アレクサンドリアで同じ時期に起きた同じ出来事を、視点を変えることでまったく別の様相を見せて驚かせるって感じだったんだけど、いよいよこの第4部で、時がその先へ進むのよね。
にえ とはいえ、やっぱり驚くのは、これまでに語られてきたことの真相がわかって、ええっ、そうだったのってところだよね。
すみ パースウォーデンの自殺の理由も、とうとうわかったよね〜。これはこれまで読んできて、想像もしてなかったことが原因だったから、本当に驚いた。
にえ わかってみれば、伏線らしきものはあったけどね。でも、一冊ごとにカラーが違ってそれに引きずられちゃうから、こっちの方向では考えようともしなかったかも。
すみ というか、答えは最初からそこにあったのよ。それなのに完全に目を眩まされてたんだな〜。
にえ あと、死んだと思っていた人が実は生きていたりとかって驚きもあったでしょ。
すみ その人の手紙ともうひとつの箇所では、アラビアンナイトの世界が急に挿入されるみたいになってておもしろかったよね。
にえ あとやっぱり、タイトルになってるクレアでしょ。これまでクレアだけは違う一面を見せたりしないで、常に同じ人って印象で、唯一、客観的な不動の立場って感じだったけど、クレアにもまた意外としか言いようのない過去があったのよね。
すみ うん、あれは完全に意表を突かれた。でも、あれもまた答えは最初からあったとも言えるのかな。
にえ でもまあ、最終的にはおもしろかったから、興奮してあれこれ言ってるけど、この巻もまた、前半がけっこう読んでてつらいというか、だるくなるというか、ちょっとしんどかったよね。
すみ まあねえ、さすがにこちらも慣れたもので、我慢すればじきにおもしろくなるんだろうみたいな期待があって、嫌になっちゃうってことはなかったけど。
にえ でも、きっちり前半分は停滞ムードだったよね。私の読書スピードも停滞ムードだった(笑)
すみ とりあえず、漠然と話すと、ようやく第1部の語り手だったダーリーがアレクサンドリアに戻り、いろいろと変わってしまっていることを知るところから始まるの。
にえ 意外な人が大出世を遂げていたり、逆に凋落してしまっている人とかもいて、それはそれでまだ全体としては仲間意識があって、互いに心配し合ってたりもするのよね。
すみ 小説家を目指し、ひたすらジュスティーヌに恋いこがれていたダーリーにも、大きな変化が。
にえ そうそう、ダーリーが育てていた女の子は、ぶじに幸せな生活を送ることになるのよね。案外、すんなりと収まって、これは良かった、良かった。
すみ でも相変わらず、人は死ぬよね。登場人物が次から次へとあまりにも劇的な死を遂げると、う〜ん、またかいってところもあったりするんだけど(笑)
にえ それでもまあ、ラストは爽やかで、明るい未来を予測させる終わり方だったからいいじゃない。死なない人は死なないし(笑)
すみ いろいろあったけど、結局は愛に始まって愛に終わったと言えるのかな。最初に見せられた愛とはずいぶん違っているけれど、ずっと大人で、登場人物たちの成熟ぶりがうかがえるような。
にえ 私は結局、レイラが一番印象に残ったかな。ネッシムの母親で、美貌を失ってしまった知的な女性なんだけど。そんなふうに、読めば登場人物それぞれの生き方のなかで、だれかしらの人生が深く印象に残るんじゃない?
すみ そうだね、とにかく4冊セットで驚きを与えてくれるという、こういう小説を読んだのは初めてだったし、おもしろかったし、ホントに読んで良かったですってことで。
 2007.8.31