すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「アレクサンドリア四重奏3 マウントオリーヴ」 ロレンス・ダレル (イギリス)
                                      <河出書房新社 単行本> 【Amazon】

外交官としてアレクサンドリアに赴任したマウントオリーヴは、美しく知性あふれる人妻レイラと恋に堕ちた。レイラはネッシム、ナルーズ兄弟の母親で、夫は病で長くは生きられそうになかった。いったんはアレクサンドリアを出て、新たな赴任先へと旅立ったマウントオリーヴだったが、アレクサンドリアは忘れがたく、ふたたび戻ってくるのだった。 しかし、ようやく戻れたアレクサンドリアはマウントオリーヴを苦しめるものと変容していた。
にえ いよいよ3冊目になりました、<アレクサンドリア四重奏>。これが終わると、あとは最終巻のみっ。
すみ 第2部でがぜんおもしろくなってきたこの四部作なんだけど、この第3部は読みはじめ、うっ、これはまたおもしろくない一冊になるのか? と悪い予感ヒシヒシだったよね。
にえ そうそう、政治的な話とかになっちゃって、それがけっこう続いて、いっこうに楽しいストーリーへ繋がっていかないの。でもまあ、3冊目ともなると、まあ、それはそれで勢いが衰えずに読んじゃったりするんだけど。
すみ で、このままかな〜と思って読んでると、一気におもしろくなってくるんだよね。
にえ うん、しかも、かなりビックリだった。第1部で悲恋の重なりのように思えたその物語そのままが、第2部で陰謀めいた複雑な人間関係に見えてきて、それがこの第3部になると、そのさらに裏の、というか、真実の姿が見えてきて、愕然としてしまうの。
すみ 狂気の愛と思われたものが、冷静な取り引きだったり、唯一の純粋な人と思われてた登場人物がまったく別の面を見せて、そりゃそうだよな、人間だもんなと納得させてくれて、そうこうするうちに、最初に悲恋の物語と思ったストーリーそのものがまったく違ってくるのよね。
にえ 1冊目、2冊目、3冊目で同じストーリーを別の目線で違って見せるとは聞いていたけれど、ここまでガラリと変わるとは思ってなかった。
すみ 衝動的と思われた行動まで、まったく違うことがわかるんだもんね。
にえ なんかオセンチな物語だなと思っていたのに、これほど利害関係のからまったというか、そういう生々しい世界だとわかってしまうと、おもしろいと思いつつも、なんか裏切られてしまったという気も……。
すみ 最初の語り手であるダーリーなんて、もはや物語のカスていどの存在になってしまったもんね。
にえ でもまあ、その裏切られた感が快感だったりもするんだけどね。とにかく、ここまで違ってしまったものが、第4部でどうなるのかってところだねえ。
すみ どう完結するのか、興味津々だよね。
にえ とりあえず、あんまり詳しくは話せないんだけど、この第3部は複雑な陰謀やらなにやらが重なり合う、利害関係とその中にいて苦しむ人々の物語だったりするの。
すみ でもさあ、愛なんてどこにもなかったのね、と思ったら、最後にやっぱり愛の物語? と思わせる展開があったりもしたよね。
にえ パースウォーデンの自殺については、新たにいろんなことがわかってくるんだけど、まだどうして死を選んだのかってところで納得いかないところもあったな。
すみ パースウォーデンの盲目の妹ライザなんて、ここに来てようやく登場して、なんかキーパーソンだったりするのかなと気になるところではあったりした。
にえ ジュスティーヌは…言えないけど、そういうことだったのねえ。なんかこうなってくると、ジュスティーヌさえも単なる脇役って感じになって来ちゃうんだけど、そのへんは第4部でまた違ってくるのかなあ。
すみ それよりこうなると気になるのは、第1部で紹介されていたネッシムとメリッサの娘でしょう。この第3部からすると、ネッシムとメリッサがどう結びつくのかサッパリわからなくなってしまった。ということで、最終巻が気になりまくるところですってことで。
 2007.7.23