=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「アレクサンドリア四重奏2 バルタザール」 ロレンス・ダレル (イギリス)
<河出書房新社 単行本> 【Amazon】 アレクサンドリアでの出来事を書いた原稿をぼくはバルタザールに送っていた。バルタザールは突然、島に訪ねてきて、ぼくの原稿の内容は真実から遠く離れていると告げ、行間にびっしりと書き込みを入れた原稿を返してきた。 バルタザールの書いた真実は、ぼくにとって受け入れがたく辛いものになるだろうと言われたが、ぼくはそれを読まずにはいられなかった。 | |
はい、ということで、<アレクサンドリア四重奏>の第二部に入ったんですが、けっこうビックリだったよね。 | |
うんうん、第一部「ジュスティーヌ」とはガラッと変わったよね。味が急に濃厚になったというか。 | |
私は第一部をなぞって、抜けた穴を補充していくような流れになるんだろうと想像していたのよ。同じ時の同じ場所の同じ人たちのことを語って、ここまで違ってくるとは想像してなかった。 | |
そうだよね。第一部は語り手である「ぼく」から見た話だったんだけど、今回はおもにバルタザールという登場人物から見るとどうだったかって話なのよね。バルタザールは冒頭で、「ぼく」の書いた原稿は、真実からかけ離れている、つまり、おまえはなんもわかっちゃいないよってことを言うんだけど、ホントにその通りなんだなとこれを読んで思ったよ。 | |
第一部では登場人物たちは本当に薄っぺらかったし、やけにおセンチな感じで、やることなすことメロドラマって気がしてしまったんだけど、実は全然違ったんだね〜。 | |
登場人物は厚みというか、グッと奥行きが出たよね。あの人たちが見る人を変えることで、ここまで魅力的になるのかと驚いた。 | |
なんか主人公をおセンチにするためのストーリーに添って動いていたとしか思えなかった人たちにも、それぞれ深い行動の理由があって、複雑な人間関係だったんだなとわかったよね。 | |
うん、バルタザールの非難に納得。「ぼく」はホントに表面的にしか人を見ていなかったのね。でもまあ、恋は盲目の状態になっちゃってたから、同情はできるけど。 | |
そのジュスティーヌとの恋愛にも裏があったんだねえ。他にも同性愛や女装趣味やスパイや殺人事件、そして異常性格に契約結婚と、とにかく今回は食いつきどころが満載だった。 | |
まだ全部はわからないけどね。とくにスパイについては、この後でいろいろわかってくるのかなと気になるところ。なにしろ、謎の暗号みたいなものも出てきたことだし。 | |
殺人事件については、この本のなかで匂わせていたとおりの人物が犯人と見ていいのかなあ。なんかまだ裏があったりするのかと疑いたくもなるところなんだけど。 | |
どうだろうね〜。まだもう1冊分の本になるぐらいのなにかがあるわけでしょ。いろいろ考えられるよね。 | |
パースウォーデンの自殺についても、まだなにかわかってきそうだし。あと、登場人物のなかでクレアだけずっと別扱いになってるという気がして仕方ないんだけど、このへんはどうなるのかな。第四部のタイトルが「クレア」だけに、この人はなにか重要な鍵を握っているのかなと気になったりもしてるんだけど。 | |
メリッサとネッシムがどうして短いあいだの恋愛関係に陥ったのかっていうのも、まだ説明されてないよね。あとそうだ、「ぼく」の名前がダーリーだということも、ここで初めてわかった、よね? | |
あとそうそう、第三部のタイトルにもなってる「マウントオリーヴ」氏も登場! したけど、まだチラッとだけ。これが次でどうなるのか。 | |
第二部を読んだら、チラッと話に出てきた人も重要かもって気がますますしてきたよね。なにしろ第一部で単なる脇の人みたいな軽い扱いだった人物が、かなり第二部で重要な人物に変貌していたから。 | |
とにもかくにも第一部で、う〜ん、と思った方、少なくともこの第二部を読むまでは止めちゃいけませんよってことで、あとは話が続かなくなってきちゃうからここからはネタバレで。まだ読んでない方はここでさようなら、また会いましょう(笑) | |
んじゃあ、安心して言わせていただくけど、ジュスティーヌが愛していたのはパースウォーデンで、ダーリーはネッシムの目を眩ませるための囮だったというのは、すっごいビックリしたよね。 | |
第一部のダーリーのおセンチさが全否定されたようなものだもんね。しかも、第一部では浮気性の性悪女にしか思えなかったジュスティーヌが、実は子供を取り戻してくれるという約束で、愛していないネッシムの求婚を受け入れた、ネッシムは愛されていないことを最初からわかっていたという事実も、これまで信じてきたものを根底から覆すよね〜。 | |
どっちにしても、ダーリーはかわいそうなぐらいのオマヌケさんだよね。メリッサのことがなかったら、大笑いするところなんだけど。 | |
今回はナルーズというネッシムの弟が出てきて、こいつが存在感を放ってたよね。なんか生まれながらにして悪気のない殺人鬼みたいなところがあったりして。 | |
あとさあ、トト・デ・ブルネルの殺人に気を取られてしまうけど、なにげにダ・カーポが死んだのは実は身代わりで、本人はどこかへ逃げてるかもって話、あれもまた先になるとわかってくるのかな。 | |
子供の頃のジュスティーヌを暴行したってことだし、まだなにかありそうだよね。 | |
第三部のタイトルが「マウントオリーヴ」ってことは、ネッシムの母のレイラとかも次では重要になってくるのかな。などといろいろ気にしつつ、第二部はここまでってことで。 | |
2007.6.6 | |