=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「デイルマーク王国史4 時の彼方の王冠」 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ (イギリス)
<東京創元社 文庫本> 【Amazon】 数人の伯爵が自分の領地を治め、南と北に分かれていがみ合い、領民たちを苦しめている、王不在のデイルマーク王国。この国を救うには正当な血筋を持つ自分が王となり、国を統一するしかない。 <唯一の者>に励まされ、継承者の印としての王冠を手に入れようと立ち上がった18才の少女ノレス。北に逃れ、アベラス女伯爵の庇護のもと、15才となっていたミットは、なんとそのやさしい庇護者であるはずのアベラス女伯爵から、ノレス殺害を命じられた。 一方、200年後の現代世界で、母と暮らしていた13才の少女メイウェンは、タンノレス宮殿の館長である父のもとを訪れる旅で、父の部下ウェンドと知り合い、自分にそっくりだというノレスの代わりとして、200年前の世界へ送りこまれてしまった。 | |
「詩人たちの旅」「聖なる島々へ」「呪文の織り手」と続いてきた<デイルマーク王国史>シリーズですが、この第4巻で、ぶじ完結です。 | |
おもしろかったよね〜。1、2、3巻と読んできて、完結編である第4巻への期待がいやがおうにも高まったけど、その期待をはるかに超えてた。 | |
「九年目の魔法」からダイアナ・ウィン・ジョーンズに入った私たち的には、やった〜、ようやくダイアナ・ウィン・ジョーンズの本領発揮! こういうのを待っていたのよ〜って叫びたくなったよね。 | |
正直なところ、第1巻はけっこうおもしろかったんだけど、第2巻が重苦しくて、第3巻で、う〜ん、なるほどこう来たか〜と思って、第4巻は、まあ、こんな感じだろうって予想が立っていたのだけど、ぜんぜん違ったなあ。最後まで読んでよかったと、これほど強く思ったシリーズはこれまでなかったかも。 | |
シリーズ名の<デイルマーク王国史>についても、この巻でようやく大納得だったよ。3巻までは、それぞれデイルマーク王国で暮らす子供たちの一人が主人公で、なにか大きなものに向かって進んでるんだろうな〜って感じはあったけど、王国史ってほどのものじゃないよなって思ってたんだけど、この巻で、やっぱり王国史だった〜とスッキリした。 | |
ただね、内容について話す前に言っておきたいんだけど、このシリーズをまだ1冊も読んでない方は、できれば4巻、あいだを開けずに一気に読んだほうがいいと思うし、これまで読んできた人は、できれば前の3巻を身近に置いて読んだ方がいいと思う。 | |
そうだね、あいだを開けて読むことになった私たちは、巻末のデイルマーク用語集に助けられ、ストーリーは引っかかることなく楽しめたけど、細かいところでちょっとね。 | |
そうなのよ、細かいところで、1巻でこういうやりとりがあったから、ここでこんなことを言ってるとクスリと笑える、とか、3巻でこういう記述があったから、ここでこういうエピソードにクスリと笑える、とか、そういう小さなクスリがいくつも用意されていて、それを楽しむにはやっぱり記憶が鮮明なほうが。 | |
まあ、とりあえずクスリはあきらめて、ここはストーリーを存分に楽しみ、あとでチョコチョコっと読み返して、あ、そうか、そういうことか、と微笑んだりしてもいいんだけどね。 | |
まあね、でも、そういう細かいところでたくさん楽しめる気配りや、予想を超える大きな展開で、なるほど、そのためにこれまでの話があったのかと納得させられるところとか、そういう楽しませ方の素晴らしさは、さすがダイアナ・ウィン・ジョーンズ、とつくづく思うよね〜。 | |
とにかく途中で止めちゃった人がいたら、第4巻を読むまで、判断を早まってはいけませんっ、と強く言っておきたいよね。そんなことを言ってもどうせあの程度だろうな、なんて予想は超えると思うし、ある意味ガラッと変わって、いい感じに裏切られますよ〜。 | |
ほんと、ほんと。さてさて、第1巻では楽器クィダーによって奇跡を起こす少年モリル、第2巻では秘密の言葉によって奇跡を起こす少年ミット、そして、第3巻では、前2巻よりずっと前の時代に生きた少女、織物によって奇跡を起こすタナクィが主人公だったんだけど、 なんとこの第4巻では、いきなり現代を生きる少女が主人公なの。メイウェンっていうんだけどね。 | |
メイウェンは13才、父親はタンノレス宮殿の館長で、母親は彫刻家、二人とも仕事人間で、今は別れて暮らしているの。で、メイウェンは母親と暮らしているんだけど、父親に会いに行くことに。 | |
その道中、電車のなかで、ウェンドというとてもハンサムな青年に出会うんだよね。そしてなんと、ウェンドによって200年前の世界に送りこまれることに。 | |
メイウェンは200年前の世界なんて、歴史で勉強してちょっと知っているというていどで、ほとんどなにも知らないに等しいのに、ノレスという18才の少女のふりをしなくちゃいけなくなるのよね。しかも、そのノリスは王位を継承するための旅に出ようとしているのだから大変。 | |
その旅に、ミットやモリルも同行することになるのよね。他にもたくさん、懐かしい人物が現れるんだけど。 | |
私たちはなにも知らないメイウェンと一緒に旅をすることになるから、メイウェンと一緒に知らないことを学ぶ、というか、だんだんと真実を知っていくことになるのよね。薄暗がりに光が刺して、だんだん明るくなっていくみたいに視界が開けていくの。 | |
メイウェンをノレスと思いこんで命を狙っている者もいるし、指輪、剣、聖杯、王冠、と王位継承の定番アイテムを手に入れていかなくてはならないから、かなりスリリングな旅だよね。そのなかで謎が深まったり解けたり、懐かしい人物が幾人も登場したりするし。 | |
やっぱりこういうSFとファンタジーを合わせたような展開と、ミステリっぽいのも含めての謎と謎解きを何層も重ねて、その上で大きな目的へ導いていくという技は、ダイアナ・ウィン・ジョーンズじゃなくっちゃねと思うよね〜。もう最高っ。 | |
最後の最後まで、どう話が結ばれるのか、まったく予想が立たなかった。だからホントに引っぱられっぱなしだったな。それにしても、第1巻から読みはじめて、ラストにこういう展開が来るなんて、いったいだれに想像できたでしょう。まるで世界観そのものが変わって別の小説になってしまったみたいだけど、でも思い直すとどう考えてもひと連なりの話なのだなあ。不思議。ということで、オススメですっ、がんばって最後まで読みましょう。 | |