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夏合宿1日目の稽古は、柔軟に引き続いてフリーエチュード。 |
■エチュードってなんだ?「エチュード(e'tude)…語源はフランス語。英語では「a study」と訳される。画家のスケッチ、習作、試作。また、音楽の練習曲。」
なるほど、「study」と訳されることを考えるとわかりやすいなあ。つまり、「お勉強」。音楽家や画家が基礎を学ぶこと、と解釈すればいいのかな?
待てよ。この辞書には演劇のことは一言も書いてないぞ。むむ。演劇にとっての「エチュード」、「お勉強」とはなんなのか。というわけで、手元にあるわずかな演劇専門書や入門書を繰って、少々”study”する事にした。ふむふむ、なるほど…。と、読みふけってどうする?
■エチュード=「戯れ」=「PLAY」???
と、一冊の本にエチュードの章があることを発見。
その本は、90年初版のJICC出版刊「TOKYO芝居探検隊」という、第三舞台や夢の遊民社が脚光を浴びていた頃、いわゆる80年代小劇団ブームを取り上げたものだ。
読んでいくと、エチュードの章には繰り返し「即興」という言葉が使われている。
「即興」また難しい言葉が…。で、もう一度辞書を引いてみた。「即興…その場で生ずる興味。座興」うーん、よくわからない。
では、座興まで調べてしまえ。
「座興…その場の興を添えるための遊芸・遊戯。また、その場の一時のたわむれ。」
うーむむ。つまり、「演劇におけるエチュード=即興=座興=一時の戯れ」???
辞書での「エチュード」からはなんだかかけ離れている…。片や「お勉強」、片や「お遊び」っていうこと???でもでも、よくよく考えてみると演劇って英語で「play」。と、辞書遊びはこのくらいにして。
くだんの本に戻ってまとめてみると、エチュードとは「なんらかの設定のもとで即興で演技をする」こと、であるようだ。
実際、夏合宿から1月の発表会まで、ワークショップで行った数々のエチュードを振り返ってみても、この解釈で納得がいった。■じゃ、「フリー」はなんなのか。
では、フリーエチュードの「フリー」には、どういう意味があるのか。
例えば、夏合宿で行ったフリーエチュード、「笑い」。
このフリーエチュードは、前出のリリック通信コラムに書いたように、合図と同時に5〜6人のグループ全員がとにかく、笑う。ルールは笑いを途切れさせないこと。
また、後述の「手つなぎ歌合戦」。
これは、1対1で勝敗を決めるものだ。対戦(?)相手と手をつなぎ、スタートの合図で相手の目を見据え、それぞれ歌を歌う。これは、目をそらしてしまったり、笑ってしまって歌い続けることができなくなったものが、負け。こうして書き連ねてみると、それぞれが演劇におけるエチュード、「ある条件下のもとで、その場で演じたり、動いたりする」という定義は満たしていると思う。しかし、その中身を考えると、はたから見て、とても演劇の稽古とは思えないところがあるよね?笑ったり、歌ったりするということが。
でも、フリーエチュードをやってみて、これら一見演劇とは思えないような「お遊び」とも思える(ゲームとたとえてもいい)ものは、確実に「演劇的」だと思うことができる。
付け加えれば、「ある役を演じる」という一般的な「演劇」の規制からは外れて、「演じる」ことを根源的に体験することができる。もっと「自由」に、「楽しむ」なかで。それがフリーエチュードということなのかな?以上あくまでも私見。
■おまけ情報■ 演劇ぶっく社刊行の「演劇ぶっく」99年6月号の安田雅弘氏の連載「演劇の正しい作り方」で、「笑い」のエチュードが取り上げられています。要チェック!