ワークショップ       

付・

リリック通信98年9月号コラム

 ワークショップを主催する長岡芸術振興財団の発行する機関誌「リリック通信」に合宿についてなんか書いてくれ、といわれて書いたものです。提出した原稿をママでどうぞ。
 (更新日:00.1.30)

 「演劇を知らない人にもなにをしたのかわかりやすく、楽しく書いてくれ」とお願いされて書いたものです。しかし、エチュードひとつ取ってみても、どういう意味があってそれをするのかということをわかりやすく書くというのは難しいものだな。結局、1日目のさわりしか書けなかったよ。


●7月18〜20日というくそ暑い中での3日間、安田雅弘のワークショップの合宿に参加しました。しかーし!暑いなどと言ってははばかられるような、熱気ある、密度の濃い体育会系の3日間でありました。それでは、ワークショップ1年生の私、ミネムラがその様子を極私的な視点からお伝えしたいと思います。

●場所は長岡温泉湯本館。CMで有名な旅館と言うことで、内心「温泉に浸かってのんびりやるのね・すてきだわ・・」なんて思っていたんですが、とんでもなかった…。旅館に到着するやいなや、古風な大部屋でくつろぐ間もなくジャージに着替えてランニング。昼下がりの炎天下、肌にじわりと汗がにじむのがよくわかります。講師の安田氏も、もちろんいっしょに走りました。てゆうか、一番先頭でがんばってる…。最年少の受講者がひーひーゆってる中、安田氏よりも若いはずの私も「うーん、負けてるなあ」とただため息。

●ランニングから戻ると、すかさず柔軟運動。これがまた、なんというか…。容赦ないんです、安田氏は。内股の筋肉を引きつらせながらなかなか開かない脚をかばいつつやっていると、「もっと開くぞー、ほら。」と笑顔でお手伝いしてくれるのですが、痛くて痛くて辺り構わず叫びまくっててしまいました。

●安田氏曰く、「役者は観客に見せて恥ずかしくない体作りが必要だ」ということで、安田氏が主宰する劇団山の手事情社は、日頃の基礎訓練を大切にしているとのこと。なるほど、安田氏自身、確かにとても体が柔らかい!「日頃から継続していけば、すぐ柔らかくなるよ」とおっしゃってましたが、なまりきった私の体には長い道のりだろうなあと、ぎしぎしと音を立てる関節をいたわりつつ思ったのでした。

●「笑い」というエチュードでは、5、6人で1チームとなって、半円陣を作ります。で、安田氏の合図で全員笑い始めます。ルールは一つ、「終わりの合図までとにかく笑いを途切れさせないこと」。

●字づらだけ見ると、なんか簡単そうですが、合図と同時に、自分の感情を「おかしくて笑っちゃう」という一種の興奮状態に持っていくのは結構大変です。しかも、目の前でダウンタウンがトークやってるわけでもない。最初は自分が笑顔というより、無理矢理顔の筋肉を引きつらせた顔してるな、と感じました。これはとても辛い。

●でも、何回かやっているうちに、そうやって何とか笑おうともがいている参加者の顔を見ているだけでももうおかしい。もっとよく見回すと、隣に座っている人のTシャツのプーさんが意味もなく笑える。じゅうたんのほつれた糸が扇風機でひらひら動いているのがむちゃむちゃ爆笑モン、という自分でもなんだか訳の分からない状態になっていくのがわかってまたおかしくなっちゃいました。

●このエチュードでは、そういうなんだかおかしいものがグループの人にも伝わると、どんどん笑いが盛り上がっていくんです。つまり、笑いっていうのはその場にいる人と感情を共有する体験だなと。笑いの空間を作り上げること、それって演劇の原点ってやつかな、と。

●演劇って舞台の上に、実は嘘なんだけど、そこでは現実であるかのように一つの世界を作っていく作業なんだと安田氏が言っていました。もっともらしい世界を観客に見せ、騙しきるためには、役者はなんにもない状態から笑ったり、泣いたり、自分の感情をコントロールできる技術が必要なんだな、と考えました。

●と、一見なんだかよくわからないことをしているようで、実はふかーい意義のある3日間だったのです。だって、とても全部は書ききれないですから。

●ぼちぼち、安田氏がどっさり出してくれた課題を始めないとな。うひー。(夏休みの小学生気分)


(補足)

2日目、3日目にやったショートストーリーズ(役者だけで話し合いながら5分程度の小話?を作り上げろという課題)の方がよっぽどつらいし、演劇っぽい事をしてるという印象は与えやすいんだろうが。

場面設定から、どういう話の流れにするか、配役は?オチは?など、すべてグループとなったメンバーで考えたんだけど。

こういうやり方はもちろんはじめてで、しかもあまり現実とかけ離れないように(つまり、どこにでもありそうな状況の中でドラマを作る)という条件があって、あたしゃ色モンしかしたことないから見事に新劇チックの臭い芝居(照れ隠し。いやあ、恥ずかしいっすよ。恋愛ものになっちゃっていたから)してしまって、反面、今回が演じるのが初めてという人がそういう役をさらりとやっていたりして、さて、私はどれだけ芝居というものをやっていたつもりだったのかね、なんて考えました。なは。 

3・夏合宿氓ヨ    4・フリーエチュードへ