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98年7月下旬。ワークショップの合宿当日。
2泊3日のスケジュールで、会場は長岡湯本館という、新潟ローカルではオリジナルソングで人々の印象に強く残る温泉旅館である。集合は午後1時。
この日も蒸し暑い日だったけど、湯本館は長岡の山あいに近く、建物は木々におおわれていてなかなかに涼しげ。温泉もあるというし、のんびりおしばい?なはなは、いいご身分だな、あたし。
…という考えがひじょーーーに甘いものだということに気づくのにそんなに時間はかからなかった。だってお芝居だモンね。役者の基本はまず身体作りだモンね。
涼しい旅館でくつろぎたいところだけど、休む間もなくランニングに出かける。そんなに距離はないんだけど、真夏日のアスファルトの上、照り返しがきつい。あっという間に汗だく。
安田さんが先頭を切って走っている。10歳ほど若いはずの私、がんばってついていく。いやあ、負けそう。
と後ろを見ると、私よりもっと若い連中がひいひいいってる。おおっ、やるじゃんあたし。って、安田さんには負けてる…。
すっかり汗を流しきって旅館に戻る。いますぐ温泉に入りたいくらい。
しかし、その欲望もむなしく、10分少々の休憩の後、集会室での肉体訓練へと移る。クーラーが利いている集会室、しばしほっとする。
が、ここからさらに地獄が待っていたのであった。柔軟体操である。
「日常生活に埋没していると、使われる筋肉が限られてくる。そういうところに目を向けて、自分の身体がいかに不自由なものか体感できると思うよ。」
と、安田さんは言った。さらに、
「新潟の人は自動車中心の生活になってて、ドアからドアへが車の中。はっきり言って、電車が交通の中心の首都圏の人より身体がなまっているよ。」
たしかに。私も新潟に戻ってから自動車の恩恵にあずかって、徒歩5分のスーパーへもオン・ザ・カーなわけで、それはそれで問題あるよね、ある意味。
逆に、自動車なしではこのワークショップへの参加もままならなかったわけで、やっぱり自動車様々なわけだけど。
というわけで、安田さんの言うとおり、自分の身体がいかになまっているか、よーくわかった。日常生活では決してすることのない開脚。しかも開脚したまま、上体を前方へ倒せと。しばらくそんな運動はしてなかったから、がんばって手をできるだけ前へ、前へと思うんだけど、身体が言うことを聞いてくれない。そうこうしていると、安田さんが一人一人回って、指導をしてくれる。
「まだまだいくんじゃないの?」と、やさしく(!?)背中を押してくれた。
ぎしぎしと、股関節が音を立てているような気さえする。
「いててっ、いててっ、もう、かんべんしてください!!!!!」
と、思わず叫んで周囲の笑いを誘ってしまった。いや、笑える人はかなり余裕のある人かも。みんな真剣なのだ。ふう。
とにかく、この柔軟訓練はさっきのランニングの10倍ぐらい汗をかいた。
その代わり、久しぶりに動かした股関節のあたりは、ほのかに痛みもあるけど、「のばしたぁぁ〜〜!!!」という実感で、痛みさえもなんだか心地よい。身体は使っていかないとどんどん固くなるそうだし、毎日続けると本当に身体が柔らかくなるでしょうな。
しまった、安田さんにまんまとのせられている?
地獄の柔軟体操のあとのフリーエチュードの様子は次に。
■WSの主催財団の発行する機関誌「リリック通信」に、この柔軟体操のことについて簡単にコラムを書きました。よかったら読んで下さい。