DIY Theile-Small Parameter Measurement Page

Introduction

大手海外製のスピーカーユニットの大半はTheile-Small パラメーターが公開されていますが、日本製とか、取り外し品や年代物ジャンクなどで得体のしれないスピーカーユニットの T-Sパラメーターを測定するためにDATS等の専用機材も発売されていますが、そうそう頻繁に使うものでもないしと感じて購入するまで踏み切れない方も多いと思われます。 そこで自作派が最小限の設備でもって、これらのパラメーターを測定することを支援するページを新たに作成しました

以下に主要なT-Sパラメータについて記します
パラメーター 解説等
Re
  • スピーカーユニットの「直流インピーダンス」の事です、普通にデジタル式テスターのΩレンジでボイスコイルの直流抵抗を測定することで直読できます、単位は [Ω]
Le
  • ボイスコイルのインダクタンス値で単位は[μH]、一般的には1kHzでの値が採用されます。SPユニットのインピーダンスカーブが高域側で上昇していく理由の大半はこのインダクタンス分の特性によるものです。 簡易的にはコーン紙の動きを抑制しながら1kHzで測定したインピーダンスZから巻線の直流抵抗分Reを差し引いて誘導性に依存している部分から求めます。 Le =(Z-Re)/(2πf ) で近い値が計算できます
  • 銅ショートリングを有するSPユニットの場合には高域側でのインピーダンス上昇が抑制されます。。
Fs
  • 一般に「最低共振周波数」と呼ばれているものです。フリーエア状態でのインピーダンスカーブの低域にある山のピーク周波数、単位は [Hz] 。 測定する際に振動板の振幅が大きいと、この周波数が変化してしまうSPユニットもあります。
Qms
  • メカニカルな共振の鋭さを表すパラメーターで、ダンピングが弱くて振動が長く強く続き、そのピークが狭く鋭く大きいものほど高い値となります
Qes
  • 電気的な共振の鋭さを表すパラメーターで、強力な磁気回路をもつSPユニットでは低めの値になります。 デリケートな値で測定する際に振動板の振幅が大きすぎると値が変動してしまってうまく測定できないことがあります。
Qts
  • QmsとQesを併せた総合的な共振の鋭さを表すパラメーターで、最低共振周波数Fsにおいて効率よく電力が振動に変換されると高い値となります。 逆の言い方をすると、このパラメーター値が高い(概ね0.8以上の)ユニットは低域の周波数特性がエンクロージャーに敏感に反応するので低域特性をちゃんと設計する必要度が高くなります。
Sd
  • 振動板の有効投影面積です単位は[m2]、コーン紙の投影面積とエッジ部の関与部分の面積の合計となります、メーカー公表値が無い場合には見当で決めるしかありませんが、ロールエッジならエッジ幅の1/5から1/3程度、ギャザードエッジならエッジ幅の1/2程度を含めて振動板の範囲として加えます。
Vas
  • Sdと同じ断面積を持つ径のシリンダーを想定しエアサスのような空気バネを構成したときに、SPユニットのバネ下部分のバネ定数(=コンプライアンス値の逆数 =スティフネス =動きにくさの度合を表す数値)と同じ強さとなるシリンダーの容積、単位[m3]。 
  • エアサスのシリンダー容積が大きいと柔らかいバネになるのと同じで、Vasが大きいSPユニットほど大容積のエンクロージャーでないとエンクロージャー内部の空気バネの影響を強く受けてしまい振動板が動きにくくなってしまうために、周波数が低くなるにつれ急激に大きな振幅が必要となっていく低音域を出すことが難しくなってしまうので大型のエンクロージャーが必要になります。 
  • 例えばVasと同じ容積の密閉型エンクロージャーにSPユニットを取り付けるとSPユニットの最低共振周波数はFsの√2倍(=約1.414倍)に上昇しますし、これよりも小さい密閉箱にマウントした場合には最低共振周波数は更に上昇して中低域にピークをつくりがちですし、非常に低い周波数の音は出なくなってしまいます。


必要機材について

 T-Sパラメーターを測定するには次の器材を用意する必要があります。
  1. DATS等の専用測定機
  2. サウンドカード+PCなどのサイン波発生器と交流電圧計 、V-I変換アダプタで構成される自作インピーダンス測定システム(参考ページその1/その2/その3)
  3. 汎用測定器とオーディオ機材による測定システム
オーディオ帯域のサイン波発振器やミリボルなどの交流電圧計のような高価な測定用機材でなくても、デスクトップPC内蔵型のサウンドカードや、外付けのUSB-Audio I/Fを使ってWaveGeneのようなサイン波発生ソフトと、WaveSpectraのような波形/音声信号レベルが測定できるソフト、もしくは Visual Analyzer などのアプリを利用することで安価に計測システムを構築することができます。 
想定の際に注意すべき事として周囲から十分離れた空間で測定し反射の影響を避けることと、振動板の質量が大きいウーハー等は垂直に立てた状態で測定しないと、重力でボイスコイルがニュートラルな位置からズレてしまうために特性が違ってきてしまいます、しかし自分でパラメーターを測定する目的自体が設計と実際に製作したものとの相違を少なくするためなのですから、実際の使用状態と合わないのであれば後者は一概に間違いとも言えないと思われます。

  1. 通常のフリーエア状態のFsから7割程度の周波数にまで共振周波数が下がる重さの質量付加テスト用ウェイト(≒可動部分重量の6割程度の質量)と固定用粘着材(エアコン配管用パテ等で代用可)
  2. マウントすると電気的な共振周波数がフリーエア時の1.5倍〜2倍程度に高くなるような、あらかじめ内容積が解っている頑丈な密閉エンクロージャー
  3. 平均的サイズであらかじめ内容積が解っていてポートの長さ変更とポートの開閉ができる測定用バスレフ型エンクロージャー


測定ウイザード

Step1:

Sdの測定

ここでは振動板は円形であるものと仮定しています。 SPユニットのエッジ形状がロールエッジなら振動板のセンターを通過する直線上でエッジ幅の約1/5〜1/3までの範囲を直径Dとしてものさし等で測ります、ギャザードエッジの場合はだいたいエッジ幅の半分までを含めて直径Dとして計測した長さをフォーム1に入力します。
 
この直径Dの半径をrとすると 半径r=D/2 なので 計算して得られる投影面責Sd[m2]は以下の式で計算されています
(計算の単位はm2、1cm = 0.01m、1cm2 = 0.0001m2なので必要に応じ換算します)
Sd =πr2 = π * (D/2) * (D/2) 
    ≒ 0.785 * D * D


Step2:

デジタル式のテスターを抵抗測定レンジにし、ボイスコイルの直流抵抗値Reを測ってフォーム1に入力します。 (単位はΩ)


測定に使用するシリーズ抵抗器Rsの値を測定します。 (単位はΩ)


Step3:

インピーダンス特性の測定

  • インピーダンス測定設備を持っている場合は低域の「周波数対インピーダンス特性」を測定し結果をグラフ化してください。
  • 汎用の測定機材を駆使して測定する場合は→こちら
  • 測定機材がない場合でもフリーエアのインピーダンス特性が公開されている場合もあるので、信用できるものであればそれで代用することもできます。

Step4:

測定データの後処理

参考文献:Joeseph D'Appolito著 "Testing Loudspeakers"から引用)

(原書のRxを示す図が間違っている箇所を訂正して掲載しています)

ステップ3で実測したインピーダンス特性グラフから上図に習ってFsとRmaxを読み取ります。

Fsを求める

  • インピーダンスカーブ山のピークの周波数を読み取り、最低共振周波数 Fs値[Hz]としフォーム2に入力します。

Rmaxを求める

  • 周波数Fsでのインピーダンスのピーク値 Rmax[Ω]を読み取り、フォーム1と2に入力します。

「Calc Rx」ボタンを押します



[データ入力フォーム1]
Diaphragm Diameter [cm]: Ddimaeter=
Voice Coil DC Resistance [ohms]: Re=
Free Air Resonant Impedance [ohms]: Rmax=


==== Calculated Results ====
Diaphragm Area : Sd = cm2
Edge of Resonant Impedance : Rx = ohms

Step5:

インピーダンス特性グラフからF1,F2を読み取る

ステップ4で得られたFS、計算結果のRxの値とSPユニットのインピーダンス値が等しくなる周波数F1(山の左側斜面上)とF2(山の右側斜面上)の周波数をグラフから読み取ってフォーム2に入力します。

<<<<< UNDER CONSTRUCTION : 以下 工事中 >>>>


[データ入力フォーム2]
Free Air Resonant Frequency [Hz]: Fs=
Lower Resonant Edge Frequency [Hz]: F1=
Upper Resonant Edge Frequency [Hz]: F2=
Free Air Resonant Impedance [ohms]: Rmax=
Voice Coil DC Resistance [ohms]: Re=


==== Calculated Results ====
Mechanical Q : Qms =
Electrical Q : Qes =
System Total Q : Qts=


Step6:

Vasを測定する

Vasの測定は非常に気難しくて、同一のユニットでも気圧、気温、湿度、測定方法によって違った値となることがあります、またダイアフラム振幅の大きさによっても変化してしまう場合もあります

質量付加法による測定:
(振動板がデリケートなものや非常に小型のSPユニットの場合は、質量付加法による測定は避けてください。)


測定用エンクロージャーを使用する測定:
フリーエアでの最低共振周波数fsのSPユニットを、容積VABの密閉エンクロージャーにマウントしたときの共振周波数FcとVASの関係は以下の式で表されます
 これをグラフに描くと下のようになります。
この比の値は別名でα値と呼ばれます、要は容積VABの箱に入れた時に電気的な共振周波数fcが、フリーエア時の最低共振周波数fsの何倍になったかという事から逆算することでVASを求める事ができるという事です。 具体的な例を挙げるとVASと同じ容積の箱ならfcは1.41倍に、VAS の1/3 相当の容積ならfcは2倍になるという事を意味しています。上の式を変形してVASを求める式に変形すると・・・
VAS = VAB * ((FC^2 / FS^2) -1)
となるので、フォーム3に測定で使用したエンクロージャ容積VAB [L]、測定で得られたFC [Hz} および FS [Hz}を入力します。


以前はフリーウェアの theile.exe を使用した測定方法のページを掲載していましたが、肝心のソフトの提供元が消滅してしまっていたので新たに作成しました。



Notice:
各メーカー/団体等のブランド名、ロゴおよび登録商標等は,それぞのれメーカー/団体等のものです。
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