このページではこれまで製作した機器の写真や設計情報を公開しています
制作から30年以上経過した初代機の近況
最初の記事は1991年に書いたものだから実に21年ぶりの更新ということになる、前作はさすがに30年以上も経過しているため初代機はスイッチの接点が 接触不良を起こしかけていたりケミコンの容量抜けと思われる特性の変化など寄る年波に勝てなさそうな状態だったので、実は部分的なニューリ アルの構想を立てていた。 具体的には不安定で歪みが多い8038波形ジェネレーターに代えてDDSを採用し、DDSの制御、周波数測定とAC電圧の読み 取りをPICマイコンで行うというもので自動で周波数をスイープしながらデーターの収集を行い最終的にはPCでグラフ化するというプランであった。 しか しながら測定のスタイルは旧態然としたままであり測定結果をグラフ化したりする行程まで作り込むには趣味に費やせる時間が少なくなった身にはやや過大な労 力を要するものに感じられ部品等はすべて入手したものの制作に掛かれない状況がここ10年ほども続いていた。
オーディオ雑誌とかでよく見かける簡易型のインピーダンス測定方法について
Block Diagram of Speaker Impedance Mesurement Method
(frequently can be seen in magazine/web )
上に示したようにダンピングファクターが大きなアンプで十分な性能であれば一度V1の電圧を測定して合わせておけばV1は一定なので、周波数を変えながら
V2とV3の値を記録していくことで測定データが得られる、これをプロットして最終的にインピーダンス特性のグラフが描けるという点では私の旧システムと
大差ない、ただ殆どの記事で言っているようにV2の電圧を無視してV3のみに注目していたのでは被測定対称のスピーカの共振点でのインピーダンス上昇に
伴って測定誤差を生じてしまう欠点がある。 また現実のスピーカーは純粋な抵抗ではないので、周波数によって位相が回転し単純にV2+V3=V1とならない場合も
あることも知っておいてほしい
旧方式測定システムのブロック図
電圧→電流変換器を使うことで、一度電流値を校正してしまえば、あとはただV3の電圧を測定するだけで済む使い勝手の良さは好評だったが、グラフをプロットする手間が苦痛なので根性が必要な点が要改良のポイントであった。
実は2000年ごろからV3の電圧計の代わりにPCサウンドカードのオーディオ入力を接 続してWaveSpectraで測定値のピークホールド表示させながら周波数を振ってグラフを描かせることでLogスケールではあるがインピーダンス特性 グラフが得られることには気づいていた、カーソールを使って共振周波数を直視できるというワザを何度か使っていたが、ただこの時にはY軸をリニア表示できる 事に気づいてもいなかったし、WaveGeneの存在すらも知らなかった、何よりも借り物のPCしか自宅に無かったのでその間に数回試しただけであっ た・・・・
上の画像の試作機ではボルテージフォロワーの代わりにリニアテクノロジー製のLT1010を使っていたが、高価だしそこまでの性能も必要ないので、代替部品として安価で ドライブ能力に優れた高出力電流オペアンプ4556を入力された信号の電圧電流変換兼駆動回路と中点電圧の生成に使っている。 測定端子の電圧バッファー とゲイン10倍のマグニファイヤー回路に汎用オペアンプの4558を使用している。 RD5.1は定電圧化のための「ツェナー・ダイオード」なので初心者な方は普通のダイオードと間違えないよう注意。これら回路のトータルの電流容量は100mAもあれば十分なので車両のバッテリー電源や乾電池、ノイズさえ少なければそこいらに転 がっている10V〜19V位のACアダプター等でも構わない。
一番上側のオペアンプで供給された電源から作った約5Vの電圧をバッファーし、これを測定用の仮想グランド電位にしている。
電圧ー電流変換回路はLEDドライバー等でよく使われている方式だと正負の両極性オーディオ信号には対応できないため、本回路はそれらとは全く違っていることと片電源仕様と相まって回路は多少込み入ったものとなってい
る。
回路図の上から2個目のオペアンプ4556では入力(DACの左チャンネル側のみ使用)された信号電圧と、その出力にシリーズに挿入された抵抗200Ω
(Rs=100Ω+100Ω)の両端に発生する電圧EはDUT(被測定物)のインピーダンスには関係なく常に同じになるように増幅される、結果的にはオー
ムの法則よりオペアンプ出力に挿入された200Ωの抵抗に流れる電流Iは(I=E/Rs)で計算できる。つまり被測
定物に流れる電流は常に入力信号の電圧Eを抵抗Rs(=200)で割った値に比例し、信号源の電圧がそのまま一定なら流れる電流も一定となる。 結果的に
スピーカーが入力信号電圧に比例した電流で駆
動される事となる。 もしDACの出力電圧が小さくて測定がS/N的に苦しいときはRsを100Ω一個に減らせば、入力電圧1Vrmsで1オームあたり
10mV (つまり0.1V@10オーム)の出力がLEFT側で得られる。 もちろんVer1.0と同様に任意の周波数のサイン波を入れて、LEFT側出
力をテスターのACレンジやミリボルで読んだ値をLEFT側なら100倍、RIGHT側なら10倍すればその周波数でのインピーダンス数値として読むこと
ができる
測定用グランド電位を約5Vに持ち上げた仮想グランドを使用しているので、車 両電源を使用している場合 被測定スピーカー用端子を車両のグランドや電源に接触しないように気をつけること。 なおピン端子のコールド側は車体と同電位 なのでオーディオインタフェースと車体のマイナス(グランド)とは繋がっても構わない。
測定に際して、騒音や振動があるとスピーカーに起電力が生じ、その影響で測定誤差を生じるので注意すること。 またユニットの置き方でも測定値が変わって くるので、特にユニット単体で裸の場合は吊り下げるとかして周囲の影響を受けないようにすること。 すでにマウントした状態でもネジの締め方ひとつで値が 変化するのが違いとして見えてくる位に敏感なので、音圧しか測ったことがない方はぜひ体験してみてほしい。