おまけ34
もう春なんだね?:
そう、
冬きたりなば、春とんがらし・・・なんて言ってられないね。
きのう、ぼくのからだにノミがやってきた。
それでね、
ぼくはもう、あの快適な冬が去ってしまったことを悟ったのさ。
そして、最後までがんばっているシクラメンにお別れを言った。
「また今度のクリスマスの頃に会おうね」ってなぐあいにね。
シクラメンがそれを聞いてどう思ったかは、
ぼくの関知する問題じゃない。
そう言ってみることが、
ぼくにとっては、大好きな冬にさよならをするために
どうしても必要なステップだったんだ。
もちろんきみは、庭の植木に話しかけていたとしても、
高尚な娯楽の一種だって思ってくれるだろ?
それはいいんだ。
とにかく冬は行ってしまった。
去るものは追わずさ。
その結果、ぼくには、春といっしょに新しい友達がやってきた。
その友達はいつもぼくといっしょにいて、
ぼくのすてきな毛皮の中に住んで、
家族を思いっきり増やしたりする・・・。
ホームスイートホームのできあがりってわけさ。
そして、ぼくがどんなにぐるぐる回っても目を回すこともなければ
どれほど水浴びをしたって、洪水で溺れる心配もない。
ぼくがどんなにぐっすり熟睡をしようとしているときでも、
毛皮の中で大運動会をして、
まるでぼくを地球かなにかのように探検して、
ところせましと這いまわるんだ。
そして、何てことだろう!!
住んでいるところが全部食料ときてる。
ご飯の中に住んでいるから、
どこに行ってもおなかがすく心配もなければ、
食料を探す手間もない。
その上、あたりかまわずウンチさえして、取りもしないんだ!!
そしてね、信じられるかい?
その住みかというのが、ぼくのからだなんだ!!
ぼくはこういう生物と友達にならなければならないなら、
シクラメンをからだに貼り付けておいたほうがずっとましだろうと思った・・・。
もちろん、きみが見かけを気にしないでくれればだけどね。
考えてみれば、ノミとは、なんて羨ましい生きものだろう。
ご飯の中で生まれ、ご飯とともに生き、
ご飯の中で死んでゆく生活。
それも、新鮮、取りたて、産地直送、調理不要、食べ放題ときてる・・・。
悔しさと、こんな羨ましさだけだって耐えがたいのに、
それに加えて、この体中に沸き起こるかゆさ!!!!
もう、何で春なんて!!!
流れているのは「ありがとうの言葉」です