パネルの結論
上記の観点から、パネルは次のように結論する。
a)Ⅷ.Dに述べた検討結果に基づき、パネルは、フランスの大統領令の「禁止」規定はTBT協定の適用範囲に入らないと結論付けた。フランスの大統領令の「例外」規定は、TBT協定の適用範囲に入る。しかしながら、大統領令の例外規定の部分に関しては、TBT協定の適合性について、カナダが何も異議を申し立てていないことから、パネルは、後者に関していかなる結論にいたることをも差し控える。
b)ⅧE.2の検討結果に基づき、パネルは、クリソタイルアスベスト繊維とそれを代替する繊維は1994年GATTのⅢ:4条の意味での同種の産品と判断する。同様に、パネルは、アスベストセメント製品と、パネルに十分な情報が提出された繊維セメント製品はⅢ:4条で意味する同種の産品といえると結論付ける。
C)同種と認めた産品について、パネルは、大統領令が1994年GATTのⅢ:4条規定に違反していることを認める。
D)しかしながら、ⅧE.4の検討結果に基づき、パネルは、大統領令が、これらの製品に対する取り扱いにおいて、Ⅲ:4条に定めている差別を導入しているが、(b)項の規定によって実施されていること、また、1994年GATTのⅩⅩ条の導入節により正当化されると判断する。
E)最後に、パネルは、Ⅷ.Fの検討結果に基づき、カナダが、1994年GATTのⅩⅩⅢ:1(b)条の規定における無効化または侵害をこうむっていることにはならないと結論付ける。
(参考)
WT/DS135/R Page 465
Ⅸ. CONCLUSION
http://www.wto.org/english/tratop_e/dispu_e/135r_c_e.pdf
1994年GATTⅢ条 内国の課税及び規則に関する内国民待遇
4 いずれかの締約国の領域の産品で他の締約国の領域に輸入されるものは、その国内における販売、販売のための提供、購入、輸送、分配又は使用に関するすべての法令及び要件に関し、国内原産の同種の産品に許与される待遇より不利でない待遇を許与される。この項の規定は、輸送手段の経済的運用にのみ基づき産品の国籍には基づいていない差別的国内輸送料金の適用を妨げるものではない。
1994年GATTのⅩⅩ条 一般的例外
この協定の規定は、締約国が次のいずれかの措置を採用することまたは実施することを妨げるものと解してはならない。ただし、それらの措置を、同様の条件の下に、ある諸国の間において任意の若しくは正当と認められない差別待遇の手段となるような方法で、又は国際貿易の偽装された制限となるような方法で、適用しないことを条件とする。
(b)人、動物又は職別の生命又は健康の保護のために必要な措置
1994年GATTのⅩⅩⅢ条 無効化又は侵害
1 締約国は、(a)他の締約国がこの協定に基づく義務の履行を怠った結果として、
(b)他の締約国が、この協定の規定に抵触するかどうかを問わず、なんらかの措置を適用した結果として、又は(C)その他の何らかの状態が存続する結果として、この協定に基づき直接若しくは間接に自国に与えられた利益が無効にされ、若しくは侵害され、又はこの協定の目的の達成が妨げられていると認めるときは、その問題について満足しうる調整を行うため、関係があると認める他の締約国に対して書面により申立又は提案をすることができる。この申立又は提案を受けた締約国は、その申立又は提案に対して好意的な考慮を払わなければならない。