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~毒殺罪~(2006.1.3)
昨年末に政府が発表した、アスベスト被害者救済基金制度では、第一に「労働者を雇用する事業主等」に費用の拠出を求め、それに加えて、アスベストとの関連が特に深い事業主に対して、追加的な拠出を求めるのだという。
本気だろうか?
1996年、フランスの禁止直前、AIA会長と(社)日本石綿協会会長、音馬氏がニチアス(株)本社で会談をした。
そこでは、イギリスのぺトー教授らによる「過去に施行された吹付石綿がもたらすリスクに対し、ビル保全作業者への警告」が話題になっていたという。 (その3「AIAとは?」)
すべての事業者が基金の負担をすることになるなら、ここでいう「ビル保全作業者」の事業者も、基金を負担することになってしまう。
これでいいのだろうか?
2001年6月、石綿対策全国連絡会議は、厚生労働省との会合で、ビルメンテナンス関連の協会と話し合いの機会を作ってほしいという要望をした。
吹付けアスベストはボイラー室や電気室などに使われている。
鉄骨に吹付けられているものも多い。
フィルターの清掃をしたり、メンテナンスのために天井裏に入っていく作業は、日常的に行われているが、作業を行う人は、アスベストという言葉すら知っていない人がほとんどなのだ。
それだから、何とかして、作業者にアスベストの危険性について知ってもらいたいと考えた。そのために要望をしたわけだ。
(この会合は実現していない。)
アスベスト業界は、アスベストを使い続けることで、ビルのメンテナンス作業者に被害を与える可能性があることを十分に承知していた。
それにもかかわらず、膨大な利益のためにアスベストを使い続けてきたのだ。
政府は、すべての事業者から徴収する理由を、「石綿は、産業基盤となる施設、設備、機械等に広く使用されてきたものであり、およそ事業活動を営む全ての者が、石綿の使用による経済的利得を受けてきたと考えられる」としている。
一般の業界が、アスベストを使用したことによって受けた利益は、被害者の発生を前提にした上で、アスベストを輸入したり、製品を製造・販売したことによって得た利益と同じとは思えない。
被害者側と加害者側を「一緒くた」にして徴収するシステムを作ることは、アスベスト業界の責任をあいまいにし、負担を減らす結果につながる。
被害者救済のシステムまで、アスベスト問題を作り出してきた構造を引き継ぐのか?
1996年に、フランスがアスベストを禁止したとき、被害者の家族たちが責任者を「毒殺罪」で訴えたと聞いた。
それが事実なら、「毒を盛られた業界」が「毒を盛った業界」のために、資金の支払いをする制度になる。
そんな制度を誰が望むのだろう?