すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「宇宙舟歌」 R・A・ラファティ (アメリカ)  <国書刊行会 単行本> 【Amazon】
戦争が終わり、男たちは家路についた。6人の船長たちの、スズメバチ型の小型宇宙船6隻いっぱいに詰めこまれた猛々しい乗組員たち。いざ出発! だが、ロードストラム船長たちは、ロトパゴイに寄って1日、2日、酔って騒ぎたくなった。1人の船長を除いてロトパゴイに向かった男たちはその後、さまざまな奇々怪々の世界で、とんでもない冒険をすることとなってしまった。
にえ 私たちにとっては、短編集「九百人のお祖母さん」、長編「地球礁」につづく3冊めのラファティ本です。これは長編。
すみ ラファティは1968年に「トマス・モアの大冒険」「地球礁」「宇宙舟歌」の3作の長編をほぼ同時に発表したんだって。
にえ 普通の作家さんだと驚いちゃうけど、ラファティだとなぜか驚かないのだけど(笑)
すみ ラファティは天才だからね(笑)
にえ とはいえ個人的には、この「宇宙舟歌」ではラファティの天才っぷりを堪能しまくれなかったかなというのはあるんだけどね。私としてはラファティの無限の想像力、というか、その際限のない法螺吹きっぷりにこの人の頭ってどうなってるんだろ〜、どうしてこんなこと思いつけちゃうんだろ〜と前の2冊では感動しまくってきたんだけど、これは元ネタがあるからね。
すみ これは宇宙版「オデュッセイア」なのよね。ホメロスの「オデュッセイア」を読んでない私でも、たしかにこれは宇宙版「オデュッセイア」だわと納得(笑)
にえ なんとなくね、なにもないところから作り上げてる感が強いと、ただただその法螺話に圧倒されまくるんだけど、元ネタありだと、どうしても、ああ、こういう流れで想像したのかなとかってに見当をつけてしまったり、「で、仕上がりはどうなのよ」とそっちが気になったり。そんなこんなで、デッカイ脳味噌であるはずのラファティが小さく見えてしまったような。
すみ まあ、でも、この際、あなたの個人的な感慨は置いといて、この小説じたいがどうだったかって話をしましょうよ。主人公的存在のロードストラム船長は、アホ丸出しだけど、どこか賢いような、お気楽な中にも、やるせなさ感が漂うという、ラファティらしいなと思うような方よね。
にえ あとの船長も乗組員も男ばっかり。男だらけのお話よね。でも、途中からマーガレットという天女が同行するんだけど、このキャラは好きだな〜。要領よく立ちまわったり、得体の知れないところがありまくったりして、で。
すみ ストーリーは単純明快、5隻の宇宙船に乗った男たちがさまざまな星、というか、世界に立ち寄りながら旅をするってお話よね。
にえ 行く先、行く先、ろくでもないことが起きるけどね(笑)
すみ まったく知らない人類の住んでいる、まったく知らない世界へ次々と飛びこんでいくんだから、当然、危険はつきもの……と言いたいところだけど、危険なんてものじゃないよね。
にえ そうね、危険っていうのが生命の危機に瀕するってことだったら、ロードストラム船長たちが出会うのは、危険なんて生易しいものじゃないよね(笑)
すみ しかも、読者に襲いかかってくるのは、恐怖というより脱力!(笑)
にえ そして、たっぷり挿入されている、酔っぱらいが大声で歌いそうな詩の数々!
すみ まあ、正直なところ、私もこの本に関しては、なんだかラファティの粗さばかりが目立ってしまたようなという気はしなくもないんだけど、でもまあ、驚かされるし、笑わされるし、気楽に愉しめばいいんじゃないのってことで。