=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「地球礁」 R・A・ラファティ (アメリカ)
<河出書房新社 単行本> 【Amazon】
アメリカのあまり大きくない町ロスト・ヘヴンに住むデュランティ一家はプーカ人だった。そもそもは十年前、 デュランティ家のヘンリーとフランクの兄弟が、コルコラン家のヴェロニカとウィッチーの姉妹と結婚し、 地球に着いてから、あわせて7人の子供をもうけたのだ。親たちと違って、7人の子供たちは地球で 生まれたため、地球アレルギーの免疫がある。しかし、プーカ人独特のゴブリンのような容貌だけは まぬがれない。よって、町の人々にはあまり好かれていなかった。 | |
私たちにとって、2冊めのR・A・ラファティです。今度は長編小説。 | |
でも長編になっても、短編に負けず劣らずの不思議っぷりだったよね(笑) | |
設定から登場人物から、摩訶不思議なお話なのもあいかわらずだけど、 それなのに意外ときれいに話がまとまってるところも同じだった。 | |
アメリカの作家で変わった小説を書くというと、どうしても薬臭が気になるところなんだけど、 この人は奇想天外ながらも薬臭なしで、知的で冷静、破綻なしだから好きなのよね〜。 | |
「地球礁」は地球に住む、地球外生命体の一家が主人公のお話。どういう星から、どういう 事情で、どうやって来たかというようなことはよくわからないんだけど。 | |
まあ、もともと科学的な説明なんて添える人じゃないみたいだからね。私たちにはそのほうが 読みやすくていいんだけど(笑) | |
なんだかとにかくプーカ人なの(笑) プーカ人っていうのは、見かけはゴブリンみたいな、 類人猿みたいな感じなんだけど、なんかの力によって自分を美しくも、巨大にも見せることができるみたい。 | |
言語はバガーハッハ詩とイーラッハ語を使いこなすのよね。バガーハッハ詩っていうのは、 なんか変な四行ほどの詩なんだけど、この詩を唱えると、相手を思い通りに動かすことも、殺すこともできるみたい。 | |
あんまりすぐには殺せないみたいだけどね。効果のほどがどの程度なのかは最後まで読んでも よくわからなかったし。 | |
なんか使命を帯びて地球に来たみたいなんだけど、そのわりにこれといって 指示が来るわけでも、なんかするわけでもないんだけど、とにかく地球に来て暮らしてるのよ。 | |
デュランティ一家の二組の夫婦は地球アレルギーが出ちゃって健康を害して調子が出ないんだけど、 地球アレルギーに免疫のある7人の子供たちはとにかく元気なのよね。 | |
7人と言えるのかどうかわからないんだけど。なにせ1人は生まれてすぐ死んで、幽体化しちゃってるから。 | |
とにかくまあ、仲良く元気そうで、残酷な話をしたり、残酷な計画を立てるのが大好きみたいで。 | |
とりあえずの子供たちの目標は、地球上の自分たち7人以外を全員殺してしまうことみたいね。親たちまで死んじゃえば いいと思ってるんだから、恐ろしいやつら。 | |
でもそのわりに、いざとなったら情がわいて、とどめを刺すまではできないみたいなところもあるけどね。 | |
そのうちに母親の一人は亡くなっちゃって、もう一人は発狂して病院送り、 父親二人もガックリきて正常じゃなくなってるところに事件が起きるの。 | |
地主の地球人が何者かによって殺されちゃうんだけど、父親の一人ヘンリーが容疑者として逮捕されちゃうのよね。 | |
もう一人の父親フランクは、ヘンリーを助けようと奔走するんだけど、 地球アレルギーで思うように力が発揮できず、そうしているあいだにもヘンリーは死刑にされちゃいそうな雲行きに。 | |
その間、子供たちがどうしてるかというと、プーカ人に理解のあるフランス人の酔っぱらいオヤジから 船を借り、いよいよ地球制服の旅に出るのよね。 | |
でもまあ、旅といってもロスト・ヘヴンのなかで、そんなに遠くまでは行かないんだけど。 | |
最後には真の殺人犯と対決することに。ってことで、途中にはアクションシーンのようなものもあったりして、 最後には大団円が。読み終わって思うのは、私もプーカ人として立派に生きていこうって、ああ、違うっ(笑) | |
なんとも広がりのあるいいラストだったよね。なにはともあれ、おもしろかった。 まあ、こういう内容だから、お好みでどうぞとしか言えないけど。 | |
ところで巻末の解説によると、ラファティさんの晩年は作品を書いてもSFの枠を外れて ジャンルが不明ってことで、発表の場がなかったとか。ラファティがピンチョンよりあとの時代の作家だったらどうなんだろうなんて、ふと思ってしまったんだけど。 ピンチョンよりあとなら、はみ出しにもわりと寛容だったんじゃないかな。ちょっと作風が似てるし。 | |
そうだねえ。でも、こういう作家さんの作品って消えないから、ブームはこれから先、何度も訪れると思うよ。 気長に待てば、全作品読めるんじゃないかな、なんて期待してるんだけど。 | |