すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「新しい太陽の書1 拷問者の影」 ジーン・ウルフ (アメリカ)  <早川書房 文庫本> 【Amazon】
遥かな未来、惑星ウールスの南半球は<独裁者>によって支配されていた。両親を知らず、<剣舞(マタチン)の塔>で、<拷問者組合>によって育てられたセヴェリアンは、そのまま拷問者となる宿命だった。まだ徒弟だった頃、セヴェリアンは墓場で独裁者に反逆する運動をしている男ヴォダルスを助けた。そのことが、その後のセヴェリアンの運命を大きく動かすことになるとも知らず……。 世界幻想文学大賞受賞作品。
にえ 私たちにとっては、「ケルベロス第五の首」に続く2冊めのジーン・ウルフ本です。
すみ これは<新しい太陽の書>という4部作の1作めなんだよね。ちょちょっとあらすじ紹介を盗み見てみれば、どうやらこの先も主人公は同じだし、話も続いていくみたい。
にえ 「ケルベロス第五の首」が難解というか、謎をたっぷり残して読者の想像に委ねるって感じだったから、これもかなり身構えて読みはじめたんだけど、意外にも?(笑)きっちりストーリーのある話だった。
すみ 異世界の話だから、これだけ読んだかぎりでは、まだまだわからないことだらけだけどね。それより、ちょっと可愛らしいというかなんというか、あらま、意外ときっちりファンタジーじゃないのって要素があって、それに驚いたんだけど。
にえ 全体としてはかなりグロテスクではあるけどね。なんといっても、主人公が拷問者だし。
すみ じつは私、読んでてやたらとジェフリー・フォード「白い果実」とイメージが被ってしょうがなかったんだよね〜。「白い果実」に似てるっていうより、ジーン・ウルフが書いたってわかっているのに、ジェフリー・フォードが書いたものかと思ってしまう、みたいな。
にえ 異世界で独裁者が支配する世界だから? どちらもグロテスクなところはあるけど、色調はずいぶんと違うけどね。
すみ ん〜、なんか歪み的なものかな。でもたしかに、こっちのほうがずっと濃厚だし、「白い果実」みたいな漫画チックなところはないよね。
にえ とにかくまあ、どんな話かというと、主人公のセヴェリアンは、ネッソスの一角にある<城塞>の中の<剣舞(マタチン)の塔>ってところに住んでいるの。
すみ そこは拷問者たちが住むところであり、仕事をしているところなのよね。
にえ 罪を犯した人がそこに連れて行かれて、拷問を受けたり、処刑されたりしているの。その拷問っていうのがかなり独特みたいだけど。
すみ セヴェリアンもそうだけど、他の拷問者も、処刑された罪人の子供なんだよね。罪人が子供を産むと、女の子は<魔女の高楼>で育てられ、男の子は<剣舞の塔>で育てられることになるの。
にえ だけどさ、そのまま拷問者の徒弟となっていくけど、最終的に拷問者となるかどうかは本人の意志に任されているんだよね。
すみ とはいっても、拷問者にならずにどこへ行ってなにをするのかって話だけどね。
にえ とはいっても、拷問者となってしまえば、人々から忌み嫌われる存在となってしまうけどね(笑)
すみ でも、<剣舞の塔>や拷問者の存在を知らない人も多いみたいね。そんなものはとうの昔になくなったものと思ってる人も多いみたい。
にえ そういえば、人間は一種類じゃないみたいだよね。高い身分の人は高貴人と呼ばれていて、背がかなり高くて、庶民たちとは容姿が大きく異なるみたい。
すみ セヴェリアンも高貴人の容姿を持っているみたいね。両親を知らないから、きっと高貴人に違いないと本人も思いこんでるみたいだけど。そのへんについては、これから先の巻でわかってくるのかな。
にえ なんか世界は衰えてるみたいなのよ。それは太陽の力が弱まっていっているせいらしいんだけど。
すみ まあ、そういう広い範囲の話は、この先にわかってくるって感じかな。とにかくこの本では、セヴェリアンは、独裁者に反逆する運動をしているヴォダルスという男に出会い、罪を犯していないのに<剣舞の塔>に連れてこられた高貴人の女性と親しくなり、<剣舞の塔>を出て、旅をすることに。
にえ サイエンス・ファンタジーってことだけど、今のところはよくわからない下地にサイエンス・フィクションがあって、その上にはっきりわかる異世界ファンタジーがあるってところだよね。下地は今のところ、うっすら透けて見える程度。
すみ 興味深さから一気に読んでしまったけど、なんかまだ良いのか悪いのかっていうか、好みなのかそうじゃないのかわからないよね。ジーン・ウルフが4巻全部読んでもらえば、かならず期待に応えられるっていうようなことを言ってるそうだから、それに期待っ!