すっきりとしない空は、それだけでなぜか人の心を疲弊させる。 六月の始め、あまり雨は降っていなかった。 だが七月になった今になって、晴れ間の見えない曇り空がずっと続いている。 そんな空の下を、久保田は一人で歩いていた。 三週間前にはひどい土砂降りの雨が降っていたが、今はそんな気配すらない。 中華街にあるビルで何者かによって射殺された男は、東条組系の暴力団員の男だったとニュースでは報じていたが、暴力団同士の抗争として片付けられたせいか犯人についての報道はまったくされていなかった。目撃者が本当にまったくいなかったのか、それとも何か裏工作があったのかは不明である。 久保田は東湖畔への道すがらチラリと古いビルを見上げたが、すぐに前を向いて歩き出した。 ビルを見上げた瞬間、久保田の瞳がわずかに細められた気がしたが、一瞬だったのでよくわからない。久保田はセッタを口にくわえたまま、乾いた空気をまとって歩いていた。 「いらっしゃい、久保田君」 「どーも」 しばらくして東湖畔に到着した久保田が店の中に入ると、鵠がいつものように微笑を浮かべて久保田を出迎えた。 東湖畔は表向きは薬を扱っている薬店だが、あまりこの店に薬を買いにくる客をあまり見たことがない。だが、鵠は密輸品などを売りさばく他に無免許医という顔も持っているので、薬は主にそういったことに使われているのかもしれなかった。 「これが、一週間分の薬と点滴です」 「いつもスイマセン」 「貴方の分の薬もありますから」 久保田は時任の薬を受け取りにきたのだが、鵠は久保田の分の薬も出していた。 確かに怪我をしてはいるが、もう薬は必要ないはずである。 しかし、その薬の意味するところを理解すると、久保田は軽く肩をすくめた。 「あれ、もしかしてバレバレ?」 「無免許とはいえ一応医者ですからね。患者の顔色ぐらいはわかります。…貴方の怪我だって重症だったんです。それをちゃんと自覚してください」 「ほーい」 久保田は平気な顔をしているが、肩に受けた弾傷はまだ完全に治ってはいない。 今日の久保田は確かに顔色が悪いが、それ以上に鵠が気にかけていたのはその身体から漂ってくるは血と硝煙の匂いだった。 その理由がわかっている鵠はさすがに少し顔を曇らせる。 返り血を浴びるようなヘマをしない久保田が、これだけの匂いが染み付かせているとしたら、それはおそらく半端ではない人数を相手にしたということなのだろう。 久保田は一見いつもと変わらないように見えるが、何か微妙なズレのようなものがある。そのズレは小さくて目立たないが、確実に久保田自身を侵食していっているようなそんな気配があった。 鵠はそのことを感覚で感じ取ってはいたが、あえてどうしたのかと聞かずに、 「ところで、時任君の容態はどうです?」 と別のことを尋ねつつ紙袋を久保田へと差し出す。 すると久保田は、やはり表情を少しも変えずに鵠の差し出した紙袋を受け取った。 「変化なし、相変わらずってトコ」 「そうですか…」 「また、診察に来てやってよ」 「ええ、それはもちろん伺わせていただきます」 久保田が薬を持って東湖畔を出た後、鵠は現在の時任の容態を考えて視線を床へと落す。 鵠が時任の主治医をするのは二度目だった。本当は右手のことが気になっていたのだが、時任がなんでもないからと言って手についての診察は行われていない。 前回は衰弱していたことが主な原因だとわかっていたから良かったが、今回ばかりはさすがの鵠もどうすることもできない状態だった。 怪我の方は手術と輸血によって奇跡的に危篤状態を脱した後、順調に回復しているが、それ以外の問題が時任に発生している。 手術が終わってしばらくたって目覚めた時任は、動いたり話したりできないばかりか、その意識も感情もどこかへ置き忘れたかのように、ただじっと空虚な瞳を開けているだけだった。 こうなった原因を予測するとすれば、こめかみを弾丸がかすった際に脳になんらかの衝撃があったとしか思えない。外傷はこめかみの傷のみだが、脳に損傷があるとなると精密検査の必要がある。 しかし、時任を普通の病院に連れて行くわけにはいかなかった。 このままでは治る見込みが薄いにも関わらず…。 あの日、時任を抱えて東湖畔に飛び込んできた久保田は自らも血を流しながら、 『お願いします。時任を助けてください』 と、見ている方が痛くなってくるような瞳で鵠に向かって深く頭をさげた。 頼んでも無駄かもしれないと知りながら、それでも…。 その時、このままでは時任ではなく久保田が死んでしまうかもしれないと鵠は思った。 その瞳があまりにも哀しかったから。 「…モグリは所詮モグリなのかもしれませんね」 鵠はそう呟くと、自分が飲むためのお茶を入れ始めた。 「ただいま」 久保田は自分でカギを開けて玄関に入りつつそう言った。 時任が怪我をして以来、久保田はカギを持って出るようになっている。 始めの内は違和感があったが、それも次第に慣れていきつつあった。 ただいまと言っても、おかえりという返事の返って来ない部屋。 けれど、そこには前と同じように時任がいる。 久保田はリビングに入ると、鵠の所に行く前にソファーに寝かせていた時任の前にしゃがみ込む。けれど時任の瞳は、じっと何もない空間を見つめたまま動かなかった。 「ただいま、時任」 久保田はもう一度ただいまを言うと、じっと何もない空間を見つめている時任の額に軽くキスを落とし、それから焦点の定まっていない瞳に自分の瞳を合わせた。 するとその瞳の中には久保田の顔がうつる。 だが、瞳にうつってはいても、時任の表情はうつろなまま少しも変わらない。 時任には久保田の顔がその瞳にうつってはいても見えてはいなかった。 「…どうやったら、俺のコト見てくれるんだろうね?」 久保田はそう呟くと、時任の肩に手を伸ばして両手でしっかりとその身体を抱きしめる。 まるで少しでも、何かを伝えようとするかのように。 頬にキスして、髪の毛にキスして、首筋に顔を埋めても、時任はピクリとも動かない。 いくら抱きしめても、時任の腕が久保田を抱き返すこともない。 いくら名前を呼んでも、返事すら返らなかった。 それでも久保田は毎日毎日時任に話し掛けて、呼びかけて、その身体を抱きしめ続けている。 二人きりのこの部屋で、ずっとずっと…。 まるで、時任さえ傍にいればそれで何もいらないと言うかのように。 けれど久保田自身も気づかぬ内に、何かがまるで砂のように滑り落ちて行っていた。 ピンポーン、ピンポーン…。 「誠人っ、俺だ!」 久保田の叔父である葛西がマンションを訪ねてきたのは、時任が撃たれてから丁度一ヶ月がたった頃だった。 連絡はしていなかったのだが、昨日電話がかかってきた時に時任のことを聞かれたため、正直に今の時任の状態を話してしまったのである。話してしまった後で久保田は葛西が来ることを予測したのだが、そうしたら案の定、その翌日に葛西がやって来たのだった。 「…ウソじゃないみたいだな?」 うつろな瞳のまま動かない時任を見た葛西は、そう久保田に言う。 すると久保田は小さく肩をすくめて薄く笑った。 「ウソは言ってないけど?」 「あっ、いや、すまん」 「まあ、信じたくないってのはわかるけどね」 久保田がそう他人事みたいに言うと、葛西は眉をしかめてじっと久保田を見た。 時任がこんなことになって、さすがの久保田もまいっているだろうと思って来た葛西だったが、久保田はいつもと変わらず飄々としている。けれど、やはりその顔はやつれてしまっていた。 「こういう時くらい電話しろよ、誠人」 「忘れてたんで」 「…お前なぁ」 「まあまあ」 久保田がいつもと変わらないのに拍子抜けした葛西は、うつろな瞳を何を見るでもなく開けている時任の頭を軽く撫でると、リビングに置かれている椅子に座る。 すると久保田は、葛西の前にコーヒーを入れて置いた。 「なぁ、誠人」 「なに?」 「…ちょっと考えてみてほしいんだがな」 「時任を病院に連れてく話なら、するだけムダだからしない方がいいと思うけど?」 久保田は葛西が時任の様子を見に来ただけではないことを知っていたらしく、そう言って話の出鼻を挫く。だが、葛西はそれに構うことなく話を続けた。 「このままじゃあ治る見込みなんてねぇだろ?」 「・・・・・・・」 「右手のことは伏せて、バレねぇようにするって約束するからよ。時坊のことを俺に任せてみねぇか?」 「病院に行っても、治るって保証なんてどこにもないのに?」 「ここで何もしないよりマシだろう?」 「身体あちこち調べられて、挙句の果てに実験なんてされちゃうのがマシ?」 「そうならねぇようにするって言ってんだろうが」 「悪いけど時任は渡せないよ、葛西さん」 「誠人っ!」 「話すだけムダだって言ったでしょ?」 いくら葛西が説得しようとしても、久保田は取り合わない。 あまりその態度がかたくなだったため、葛西の目には時任の右手のことがばれるからというのではなく、久保田が時任を離したがっていないように見えた。 久保田はまだまだ説得する気でいる葛西にため息をつくと、、時任のいるソファーへと歩いて行く。もうじき食事のできない時任に、点滴をしなくてはならない時間だった。 「せっかく来てもらって悪いけど、用がそれだけなら帰ってくれない?」 「話はまだ終わってねぇぞ」 帰れという久保田に、葛西はなおも食い下がろうとする。 けれど久保田はそれを無視すると、そっと時任の耳に何か囁いて腕を伸ばしその身体を抱き上げた。その動作と、時任を見つめる瞳があまりに優しかったので、葛西はそんな久保田の姿を見ていられなくて二人から視線をそらせる。 その瞬間、気のせいなどでなく、本当に久保田が時任を離したがっていないことに葛西は気づいた。もしかしたら、失うと思った瞬間に久保田の中で何かが変わってしまったのかもしれない。 二人が点滴のために寝室に行ってしまうと、葛西はキッチンにある冷蔵庫を開けた。 すると予想した通り、冷蔵庫には水とビールしか入っていなかった。 葛西は冷蔵庫のドアをゆっくりと閉じると、深く息を吐く。 このままでは、二人とも潰れてしまうのは目に見えていた。 「このままにはして置けねぇ…」 葛西は無理やりにでも病院へ引きずっていく覚悟をすると、二人がいる寝室へと向かう。 二人ともダメになってしまうことを知りつつ、放っては置けないかった。 けれど、寝室へと踏み込んだ葛西を待ち受けていたのは、時任の眠るベッドに腰かけて拳銃を構えている久保田だった。 「お前、俺を撃つつもりか?」 「時任を連れて行くつもりならね」 「本気か?」 「なんならためしてみる?」 そう言った久保田は、葛西が一度も見たことがないような乾いた笑みを浮かべている。 まるで地の底から凍りつくような久保田の瞳に見つめられた葛西は、自分の身体がガタガタと震え出しそうになるのを感じて、思わず自分の腕を両手で押さえた。だが、その震えを完全に止めることができなかったため肩が短く小さく震える。 この殺意は見せかけではなく本物だった。 久保田は本気で葛西に銃口を向けていたのである。 「・・・・・・わかった。今日のところは帰る。また来るから、そん時までに少しはメシぐらい食えよ」 葛西は今日の所は退散することに決め、そう言い残すと部屋を出て行く。 久保田は拳銃を降ろしたが、葛西の言葉に返事はしなかった。 ずっと自分が何も食べてないのは承知していたが、それは食べないのではなく食べられないだけなのである。何を食べても砂を噛むようで味がしないし、無理して食べると後で全部吐いてしまう。食べては吐くをしばらく繰り返していたが、段々面倒になって食べなくなった。 「注射、嫌いなのにゴメンね」 本当は時任だけではなく久保田も点滴をうつべきだったが、久保田はそう言いながら時任の腕に点滴の針を慣れた手つきで射す。すると黄色い液体が、プラスチックの小さな容器の中で雫を落とし始めた。 まるで心臓の鼓動にあわせるかのように雫が落ちていくの眺めながら、久保田は点滴のせいで冷たくなっていく時任の手を握りしめる。その手は冷たいせいかまるで死人のようだった。 「時任…」 久保田は名前を呼びながら、時任の指に自分の指を絡めるがやはり反応がない。 こうやって名前ずっと呼び続けてはいたが、やはり時任が答える気配なかった。 その声が届いているのかいないのか、それを知る術さえもなくただ日々だけが過ぎていく。 生きているのに、抱きしめればその体温がちゃんと伝わってくるのに、それを感じても久保田は冷たく冷たく胸の奥が凍えていくのを止められない。 久保田は時任の胸の辺りに耳を押し当てると、ゆっくりと目を閉じた。 「生きていてくれればって、そう思ってたのに…。どうしてなんだろうね?」 この鼓動さえ止まらなければ、生きてさえいてくれたらそれでいいと思っていたのに、握り返されない指とか、何も見ていない瞳を見つめていると痛くて痛くて呼吸さえできなくなりそうになる。 しばらくして点滴が終わると、久保田は再び時任を抱き上げて部屋を出た。 このマンションの屋上は立ち入り禁止になっているが、時々カギが開いたままになっている。 久保田が階段を上って屋上に到着すると、今日は運良くドアは開いていた。 ドアを開けて時任を両腕に抱いたまま久保田が屋上に出ると、風が強く二人に吹き付ける。 もう七月になったとはいえ、夜の風は少々冷たかった。 屋上から見る夜の街は昼間見える灰色の街とは違って、まるで星をちらばめたように綺麗に見える。けれどそれは、所詮空の星々には叶わないことを嘆いているようにも見えた。 久保田はそんな街の灯りを眺めながら、前へ前へと歩き出す。 その歩みは低いコンクリートのブロックの前ではなく、その上に来てからやっと止まった。 この屋上はフェンスが取り付けられていないので、久保田の足元の数センチ先に真っ暗な空間が広がっている。 だが久保田は、そんな生と死の境目の位置に立ったままで、何も見ていない時任の瞳を覗き込み、そっとその目蓋に唇を落とした。 「生きててくれてよかったって思ってるのに、それだけじゃ足りない。時任が俺のコト呼んでくれないと、見つめててくれないと…、ダメだって。そんなコト、全然気づきたくもなかったのにね」 感情など欠片も浮かべていない時任に微笑みかけると、久保田は時任の髪に頬を寄せる。 けれど、いつもタバコの匂いしかしなかったその髪からは薬の匂いがした。 それに気づいた久保田の身体が、まるでその匂いに目眩を起こしたかのように大きく揺れる。 だが、なんとかブロックの上でかろうじてまだバランスを保っていた。 けれど風に煽られたりすれば二人とも危ない。 二人の足元には暗闇と死が広がっていた。 「…時任」 久保田はそんな生と死の境目に立ちながら、うわ言のようにひたすら時任を呼ぶ。 まるでその言葉しか知らないように…。 今まで何回呼んだかしれないその名前は、おそらく今まで生きてきた中で、一番心から求めて呼んだ名だった。初めて知った時から、その名前は久保田にとって特別だった。 それは、その名前が一番傍にいたくて、一番大切な人の名前だったから。 いつまでもどこまでも、傍に一緒にいたいと願った人の名前だったから。 だからこんなにも名前を呼ぶたびに、息もつけないくらい苦しく苦しくなって、恋しさと愛おしさで胸が焼け付くのに耐え切れず、すべてを壊してしまいたくなった。 生きていれば、そばにさえいられればなんて、ただの綺麗ごとに過ぎない。 心が身体が時任を欲しがって、その激しすぎる想いが久保田を壊していく。 求めて求めすぎて、恋しすぎて愛しすぎたから、後戻りができなくなった。 出会ってしまったら、もうなかったことになんかできない。 久保田は時任のぬくもりを感じながら、遠い街の灯りを見つめた。 「…好きだよ、時任。それだけが俺の全部だから…、本当にそれだけが全部だったから…」 そう言いながら、久保田の足が再び前へと歩き出そうとする。 けれど、久保田の唇が『ゴメンね』と言葉を綴った瞬間、久保田の頬に何か暖かいものが当たった。久保田はハッとして立ち止まったが、その暖かいものが何なのかわからなくて、そっと自分の頬に手を伸ばしてみる。 すると信じられないことに、それは間違いなく何度も何度も握ったことのある、手袋のはまった時任の右手だった。 「時任…」 久保田が信じられない気持ちで名前を呼びながら時任を見ると、時任の真っ直ぐな瞳が久保田を見つめていた。 「く、ぼちゃん…、泣くな…」 たどたどしい口調でそう言いながら、時任の右手が驚いている久保田の頬を撫でる。 なぜ泣くなと言っているのかわからずに久保田が瞬きすると、時任の顔に雨のような雫が落ちた。まるで空から落ちたような雨のような雫は、時任の頬をゆっくりすべって流れ落ちる。 けれどそれは、時任の涙ではなく久保田の涙だった。 「くぼちゃん…」 久保田は自分が何度も呼んだように、何度も何度も久保田を呼ぶ時任を抱きしめたまま、その場に膝をつく。すると時任は、久保田の首に腕を伸ばしてその涙を止めようとするかのように抱きしめた。 名前を呼んで呼ばれて、求めて求められて。 お互いの鼓動を体温を確かめるかのように強く強く抱きしめあった後、二人はお互いの想い引き寄せられるように自然に唇を重ねる。 まるで吐息を重ねるように何度も何度もキスをして、好きと言葉で言えない分だけ、その想いの深さだけ口付けあった。 あまりにも激しすぎる想いを抱きしめるように…。 「ああ、いらっしゃい」 東湖畔の店主である鵠が店内に入ってきた人物にそう言うと、一人だと思っていたのに二人分の返事が返ってきた。 「仕事しに来てやったぜ」 「どーも」 後遺症が残るかと心配されていた時任だったが、久保田のリハビリが効いたのか、身体もその他もまったく元通りに戻っていた。結局、ああなってしまった理由はわからなかったが、治ってしまえばそんなものはどうでもいいらしく、久保田も時任もそのことについて鵠に尋ねることはなかった。 「で、仕事って何?」 怪我が治って始めての仕事だということで張り切っているらしく、時任がそう鵠に聞く。 すると後ろから久保田が時任の頭をガシッと片腕で抱き込んだ。 「無茶はしないって約束。忘れてないよね?」 「わぁってるってっ!」 「なーんて言っても、聞かないだろうけどねぇ」 相変わらずの二人を見て、鵠が微笑を浮かべる。 やはりこの二人は、二人いた方がしっくりとくる感じがした。 「それでは、この届け物を三時に新宿西口公園までお願いします」 「了解。行くぞ、久保ちゃん」 「はいはい」 今日の空は雲一つない快晴で、梅雨の名残りのような雨もいつの間にかすっかりなくなっている。この晴れ渡った空にも、相変わらず灰色に沈んでいる街も、いつの日にか降った雨の痕跡はどこにも見られなかった。 |
終 『薄曇りの空』 2002.6.27 キリリク22222 前 編 キリリクTOP |