ラブパニック.19




 『いよいよ始まりますっ、最終決戦! 高まる緊張の中っ、桂木女史が荒磯最大の謎を解き明かすため、ラブリー久保田の前に立ちはだかったぁぁっ! 勝利条件はビューティー時任戦、タッグマッチと同じ、どちらか先に膝をついた方が負けとなりますっ!』
 『いやぁ、これは楽しみですね。桂木女史と言えばハリセン、ハリセンと言えば桂木女史っ。その威力はラブリー久保田の蹴りに通用するのか!』
 『桂木女史には、ぜひとも勝利を手にして、誰もが一度は夢でうなされるという荒磯の謎を解いて頂きたいものですっ!!!!』
 『ガンバレっ、女史っ!!! 全生徒の期待と願いがっ、貴方のハリセンにかかってるっ!!!!』
 
 うぉぉぉぉっっっ、頑張れっっ、桂木ぃぃぃっ!!!!!

 なんで、そんなに応援…、そんなモノが夢にっていうか…、
 そもそも、そんな謎ないんだけどね…。
 なーんて言った所で放送で盛り上がり切った荒磯では、人っ子一人っ、誰一人として信じないっ!!
 そして、真の戦いの目的は、向かい合う二人のみぞ知るっ。
 そんな二人はじり、じりと間合いを計りつつ、距離を取った。
 しかし、どこかの誰かのように、照れて5メートル離れたいわけではない。
 そう、二人がするのは愛の告白ではなくっ、戦いっ!!全生徒の期待と謎のためではなく、一人はハリセン片手に、もう一人は素手で自らの目的のため、この戦いに挑むっ!
 ここは地の果ての酒場ではなく、私立荒磯高校。
 そして、二人が向かい合う場所は荒野ではなく、学校のグラウンド。
 その中心で男と女は愛を語らず、男と男は逃げてヘタレての恋模様!
 この場にいる教師や生徒達の注目を一身に浴びる二人は、見る者の背筋を震わせる素敵な微笑みを浮かべながら、お互いの隙を、戦いの火蓋を切る一瞬をうかがっていた。
 しかし、いくらハリセン対素手とはいえ、桂木が勝つ可能性は低い。
 力も早さも技も、圧倒的に久保田の方が上だ。
 それがわかっていても勝負を挑む桂木を見つめ、正確に意図を理解し、右手で軽く顎を撫でたのは松本。桂木が久保田の前に立つと同時に執行部の面々の近くに避難していたが、ついさっきのチャペルもなんのそのっ、まるで何事もなかったかのようなマジメな顔で横に立つ、恋人に復帰した橘に向かって、どう思う?…と問いかけた。
 「誠人は勝つと思うか? それとも負けるだろうか?」
 「桂木さんが…とは、お聞きにならないのですね?」
 「当然だろう?」
 「そうですね、当然です。そして、それこそが、この戦いの意味であり、意義…」
 「つくづく敵に回したくない相手だ。戦う前から、勝てる気がしない。初めから負けが決まってる相手とは戦いたくないと、誠人も思っているはずだがな」

 ・・・・・・この戦いの目的ではなく、意味と意義。

 橘の言葉に、近くに居た相浦と室田が難しい顔をして唸る。
 自ら戦いを挑んだ以上、桂木は本気で戦うだろう。どんな理由だろうと全力で戦わない戦いを、姉御の中の姉御は挑んだりはしないっ。
 挑んだ以上は勝とうと負けようと、ただ全力で戦うだけだ。
 そして、そんな桂木の全力を持ってしても、本気の久保田に勝つのは奇跡に近い。
 そう、もしも勝つ事があるとすれば、桂木が一発のハリセンに賭けて奇跡を起こすか…、久保田が本気を出さず、自ら負けるかだ。
 だからこそ、桂木はハリセンを握りしめ、その先を久保田に向けている。勝っても負けても不思議ではない本気で、奇跡に賭けて、ハリセンに全力を込めながら…、

 ・・・・・この結末を自分で選べと。
 
 強引なようで、決して無理強いはしていない桂木らしいやり方だ。
 馬に本格的に蹴られない程度に拳ではなく、ハリセンでジョブを食らわせっ、背中をポンッと軽く押すっ!相方に逃げ続ける久保田にピシリと愛のムチ…ではなく、この場合は男の友情のムチなのかっっ!!
 勝っても負けても、勝った気などするはずもない戦いに、久保田は微笑むばかりで何も答えないし、何も言わない。内心、どう思っているのかも、その表情や雰囲気から読むことができないっ、まさに鉄壁のポーカーフェイスっ!
 それを崩せるのは、この世でたった一人だけ。
 そして、久保田を本気にさせられるのも、この世でたった一人っ。
 だが、そのたった一人を理由に久保田を本気にさせて、五体満足、精神的にも無事で済んだ人間は未だかつていない! まるで明日、この世は終わらないがっ、終わるくらいの勢いで嘆いていた相浦と室田は、決死の覚悟で突入態勢を取ったっ!!

 「相手が桂木なら大丈夫だとは思うが・・・、久保田だからな」
 「あぁ、久保田だもんな」 

 アイツは久保田だっ、あぁ、久保田だっっ。
 久保田だっ、久保田だっっ、久保田なんだぁぁぁっっ!!!!
 そう心の中で叫び合うっ、決死の相浦と室田!
 それもそのはずっ、久保田は飼い主のためならっ、飼い猫のためなら…っっ、
 相方のためならっ、妻のためならっっ、番犬にも狂犬にもなれるっ!!!!
 なんだってヤっちゃうよー、たぶん。
 それが二人の知る私立荒磯高校三年っ、久保田誠人だったっっ!!!!
 
 「いんや、ベツに自分のためだけど」

 そんな狂犬の呟きが聞こえたような気もしたが、とりあえずそれは置いといてっ!
 久保田とはどんなにイチャイチャしていてもっ、おいしそうな相方が目の前で寝転がっていたとしても耐えてっ、耐えてっっ、耐え抜いてきた男っ!それはヘタレの証拠なのかっ、それとも純情の証なのかっ、そのジャッジは一体っ、本当はどっちに傾いているのかっ!!
 眼鏡は逆光でキラリと光り、久保田は戦いを受けながらも戦闘態勢は取らず、のほほんと立っていた。
 微笑みは氷点下だが、見た感じ、やる気があるのか無いのか不明だ。
 しかし、それを見つめる桂木は怒らず怒鳴らず、口元に浮かべた微笑みを深くした。
 「そうやって、いつまでも余裕ぶってればいいわ。だけど、心して覚えておくことね。賢い犬のフリして指をくわえて待てを続けても、誰もアンタにヨシとは言わない」
 「・・・・・・・」
 「いつまでたっても、何があっても何が起こっても待ては終わらない。自分で、自分自身にゴーサインを出さない限りはね」

 キュウウゥゥゥーン…。

 …とはやはり鳴かないが、相方で待てを続ける番犬っ。
 その理由は番犬もしくは、狂犬の胸の奥深くにあって誰にも覗けない。
 おそらく、負けた所で久保田の事だ、おとなしく素直に告白などしないだろう。
 そうでなければ桂木を相手に、あれほどの心理戦は展開されなかったはずだ。
 そう、だからこそ松本と橘は言った。
 戦うのは目的があっての事ではなく、意味と意義があっての事だと。
 勝つにしても負けるにしても、久保田に選択を迫った事に意味と意義がある。
 恋は逃げれば逃げるほど、ドツボにはまりっ、その先にあるのはトンビに油揚げ、指をくわえて歯ぎしりしても過ぎた時は戻らずっ、相方の爽やかな笑顔に心に涙っ!
 受けた仲間の相談っ、屋上で噴き出しかけたいちご牛乳にかけてっ、姉御はハリセンを握りしめて声高らかに宣言したっ!!

 「せっかくの機会だから、アンタの鉛のように重い尻を思いっきり、引っぱたかせてもらうわっ!!!」

 し、尻叩きぃぃーーーっ!!!!!
 桂木のムチはどうやら頭ではなく、尻にさく裂する予定らしい。
 それは嫌だっ、頭よかマシっぽいけどっ、なんとなく嫌だっっ!!
 そう思って尻を抑えたのは久保田ではなく、なぜか相浦と室田っ。
 そして、そんな室田の尻を見つめたのは、恋人の松原っっ。
 尻っ、尻っ、しり…っっ、標的はしりっ!!!
 じゃりっと足元の小石を踏み、桂木はいったん構えていたハリセンを引き、まるで刀のように持ち居合抜きの体制を取った。最初の一発に全力を架ける構えだ。
 すべてにおいて久保田より劣っていたとしても、桂木はやはり勝つ気で戦う。
 そして、この戦いの勝敗が決まるのは、おそらく、最初の一撃っ。
 桂木が瞬息でハリセンを抜きっ、久保田の尻を叩く方が早いかっ、
 それとも、久保田の蹴りが桂木に足をとらえ、膝をつかせる方が早いかだ!
 
 ・・・・・・ゴクリ。

 誰もが息を飲みっ、そんな戦いの行方を見守る。
 バカップルの謎の行方をっ、狙われた尻の運命を…っ!
 そして、人々の視線と期待を背負わず、一笑に付して叩き落とした桂木は、久保田いわく立て板に水のような勢いの言葉攻めと共に、同じ勢いと早さでハリセンを抜き、前に足を踏み出し尻を叩きに行ったっっ!!
 
 「こうしてる間にもアンタんちの前のコンビニの店員が眼鏡だったりっ、ストーカーになったりっ、たこ焼屋になりすまして校内に侵入したりっっ、飼い猫の大切なモノが奪われたりなんかして泣いてもっっ、慰めてなんかやらないわよっ!!このヘタレ眼鏡ーっっ!!!」

 この長ゼリフを立て板に水のごとくっ!!!
 握りしめたハリセンは、女王のムチのごとくっ!!!
 桂木は凄まじい早さで攻めて攻めてっ、必殺の一撃を繰り出すっっ!!!
 すると、その攻め攻めしさは、この一瞬だけ橘を大きく上回りっ、桂木の光速ハリセンをかわそうと動きかけた久保田の目がハッと大きく見開かれる!
 これはっっ、もしかしてもしかするのかっ!!
 このまま攻め攻めしい桂木に尻を差出しっ、負けるつもりなのかっっ!!?
 
 初めてだから、優しくしてネ。
 
 そんなこんなっ、もしかしてな展開に突入かと思いかけたがっ、しかしっ!!
 目を見開いたまま、人間とは思えない早さで桂木のハリセンをかわした久保田は自分の尻を守らずっ、別なモノを守りに走り出したぁぁっ!!!!
 さすが狂犬っ、早いっ、早いっっ、はっやぁぁぁいっっ!!!!
 あまりの早さに、桂木のツッコミもハリセンも追いつかないっ!!
 それもそのはずっ!走る狂犬の目の前で、眼鏡のコンビニ店員のストーカーがたこ焼き屋になりすましっ、飼い猫の大切なモノを奪おうとしていたっ!!
 
 「へい、らっしゃい」

 そう、実は発病5メートルの後、まるでグラウンドから姿を消したかのような扱いになっていたが、だた注目を浴びていなかっただけで消えた訳ではない。消えてはいないが、ぐーっと鳴った腹を抱えて、ふらふらと屋台へと吸い寄せられていた。
 姉御と相方が気にならない訳ではないが、空いた腹には逆らえないっ。
 りんご飴、たこ焼き、焼きそばなどなど、腹の虫が暴れ出す良い匂いを漂わせる屋台がひしめき輪を描くように並ぶグラウンドの端っ。そこをふらふらと彷徨い歩くっ、腹を空かせたネコ一匹…っ!!
 そして、そんなネコを見つめる眼鏡は二人!!
 一人は言うまでもなく、時任の中で桂木と男の友情で結ばれているらしい久保田。もう一人は焼きとり屋の眼鏡で、まだ名前は無い…とかではないがっ、時任も久保田も誰も彼の素性を知りたいとは思っていなかった。
 ほんの一瞬前まではっ!
 「塩とタレとあるけど、どっちが良い?」
 「あ、悪りぃ、そうじゃなくて。今、金持ってなくて見てるだけっつーか」
 「あぁ、金はいらないよ。実は今日、46人目のお客様に、焼きとり10パック無料でプレゼントって企画しててさ」
 「・・・って、まさか46人目が俺?」
 「おめでとうゴザイマス」
 「やったーっ!マジで全部もらっていいのか?」
 「10パック入るビニールないから、新聞で包んで…っと。コレ、両手で持たないと落ちるから」
 「おっ、さんきゅー」

 ・・・って、ちょっと待てぇぇぇぇ…っっっ!!!!

 なんで46人目っ、なんで10パックぅぅぅっっ!!?
 見ていたならっ、聞いていたならっっ、そう叫びたくなる怪しい展開っ!!
 もしかしてな展開には突入しなかったがっ、まるでヘンタイ親父の間の手にかかるがごとくの素敵な展開に一気に突入っ!!
 そしてっ、そんな展開を狂犬の目だけが捉えていたっ!
 腹を空かせたネコの両手を焼きとり10パックで塞ぎっ!なおかつ、それを持つために俯いたネコが再び顔を上げるのをっ、キス待ち顔で待っている眼鏡野郎をっっっ!!!

 事故と見せかけてキスしてやる、チューしてやるっ、唇を奪ってやるぅぅっっっ!!

 ヤる気はまんまんっ、妄想はもんもん…っ!!!
 やはりっ、やはり荒磯において眼鏡はデンジャラスだったぁぁぁっ!!
 え…っ、荒磯の眼鏡にはストーカーしかいないの!?
 そんな問いには誰も答えてはくれないがっっ、唸る狂犬の黄金の右ストレート…ではなくっ、両腕がっ、秘密兵器がっ、最終兵器が荒磯最大の謎を解き明かすっっ!!しかしっ、グラウンドの中心ではなく、狂犬の世界の中心でチューをかまそうとしたブルータスが、それを知ることは叶わなかったっっ!
 
 どかばきっっ、びしっっ、ばきゅーーーん…っっ!!!

 え・・・、今の蹴り一発だったよね?
 コンビニのバイト中、人妻…ではないが、たぶんそんな感じかもしれないネコに一目惚れした上に、焼きとり屋として校内に侵入したブルータスは素敵な音声と共に星となり。狂犬の世界の中心で、何が起こったかわからず、ポカンとした顔をする飼い主、妻、ネコっ。
 呼び方は色々とある気はするが、あくまで彼らは相方。
 どんなに顔を近づけていようと、チューなんてしたこともない清い関係っ。
 しかしっ、桂木の攻めが効いたのか、ブルータスの攻撃が効いたのか、狂犬久保田は両腕を伸ばすと焼きとり10パックごと相方を優しく抱きしめた。

 「俺の両手は戦うためじゃなくて、お前を抱きしめるためにあるから…」

 優しい抱擁と甘い声と言葉…。
 いつもと少し違う相方に、時任はビシっと固まり動かない。
 未だ発病中のはずなのに、未だ久保田の腕の中。
 額にチューでは伝わらなかった想いがっ、もしかして、ようやくっ!!
 時任の様子を見ていた相浦は、ぎゅっと拳を握りしめ涙ぐみ。
 桂木はやれば出来るじゃないと、良かった、良かったとうなづく。
 そして、松本と橘は恋人らしく、顔を見合わせて微笑み合った。
 両想いだとわかれば、時任も少しは落ち着くだろう。
 これで荒磯は安泰っ、平和はブルータスの犠牲により守られたっ。
 ありがとう、コンビニ店員ブルータス。
 ありがとう、焼きとり屋ブルータス。
 ストーカー眼鏡だったし、良いヤツか悪いヤツかもわからないけど、お前の焼きとりの味は忘れないっっ、ウマかった!!
 
 「ビールと焼きとり最高!」
 
 そう叫んだのは、焼きとりとビールにしか興味の無い三文字。
 その横で歯軋りしつつ、アタシというものがありながら、どういうコトなのよっっと三文字に掴みかかったのは徹クンこと五十嵐徹っ。
 あぁ、けれど平和だ。
 三文字の首が絞まろうとガクガク揺らされようと、何事もなく平和だ。
 あとはっ、あとは第二のチャペルが鳴り響くのを待つだけっっ。

 「・・・・・あの、スイマセン。俺、死にかけてる…、ですけど?」

 そんな三文字の声が神様に届いたのかどうかは謎だが、観客の生徒達や教師は、二人のラブシーンを待ちわびっ、気分はすでにエンドロールっ。
 そこでチューだっっ、チューすればエンディングだぁぁぁっ!!!
 よっしゃあぁぁぁぁっっっ!!!
 誰もが拳を握りしめっ、チャペルの瞬間を待つ!!!
 チューで二人の仲は確定っっ、チューこそが二人のただならぬ関係の証っ!
 だがしかしっっ!!そうは問屋が降ろさなかったぁぁぁっ!!!
 
 
 だぁーーーーーーー…。


 え・・・・・・、今の何の音?
 もしかして、誰かのツッコミの音?
 いやいや、この状態じゃ誰も突っ込めないし、何も突っ込めないしっ、
 そんな音じゃなくて…、これは…、
 これは?!

 ・・・・・・・・・・・時任が砂を吐いた音だ。

 なにぃぃぃ…っっ!!
 早く流れろっ、エンドロールっ!
 チューを待ちわびていた人々の前で時任がっ、時任がっ、砂を吐いてるっ!!
 しかも、半端な量じゃないっ!!!
 ぎゃあぁぁぁーっっ、荒磯が砂に飲まれるっっ!!
 新たなる荒磯の危機に、観客席は混乱にパニックに陥るっっ!
 だが、それを引き起こした久保田はのほほんとしているし、そんな久保田にゆっくりと歩み寄る桂木は、右手の人差し指で眉間を抑えながらも慌てた様子はなかった。
 「つまりは、そういう事なワケね」
 砂を吐く時任を抱えた久保田に向かって、桂木がため息交じりにそう言う。すると、久保田はチラリと頭の中が真っ白になっているらしい時任を見た後、軽く肩をすくめた。
 「ほら、時任って甘いの苦手だし?」
 「しかも、それが食べ物限定じゃないってのは、砂を見れば一目瞭然」
 「だぁね」
 「…ったく、何かおかしいとは思ってたけど、こういう理由で相方止まりだとは思わなかったわ」
 半ば呆れたような桂木の言葉に、久保田はだろうねぇと微笑む。
 そして、そんな二人の間で時任は、砂を吐き続けていた。
 相方としてではなく、別の関係めいた状況で甘い言葉を聞いてしまったためにっ!
 つまりはそういう事とは、見たままの状況に他ならない。恋発病で5メートルの時任稔は、スニッカーズのようなスナック系の甘いものは食べるクセに、パフェとかそういう類のものは苦手だと絶対に食べないのだがっ、まさに久保田とのいちゃラブがそれと同じっ!
 相方としてなら、いくらイチャイチャ、イチャイチャしていても平気だがっっ、
 恋人として、そういう意味で好きと意識した相手とは、いくらイチャイチャしたいと思ってもっっ、その甘さに耐えきれず砂を吐いてしまうっっ。
 えーーーー…っ的な良くわからない味覚と感覚はっ、さすが俺様っ、時任様と言うべきかっ!?それを知っている久保田は、恋人として5メートル離れるよりもっ、相方としてイチャイチャ、イチャイチャしまくる方を選んだのだった。

 「ま、両想いも捨てがたいけど、相方で居られるのも学生のウチだけって気するし、ね。だったら、今は5メートル離れるよか、相方のままでもいいかなーって」

 相方で居られる内に、もっといちゃいちゃしておきたい。今だったら風呂にだって一緒に入れるし、一緒のベットでだって寝られるし、触りたい放題だしね…な久保田の純粋なんだか、不純なんだかわからない犯行動機っ。
 それって、ある意味拷問っていうかっ、藤原を上回るマゾ…っっとは思っていても怖くて口には出せずっ、相浦は両手で口を押えるっ。そして、時任を抱きしめるためにあるという久保田の両手で判明した荒磯最大の謎にっ、桂木は勢い良くハリセンを振りかぶったぁぁっ!!

 「ふーんそう、それは良かったわね…とか言うと思ったら大間違いよっっ!このエロ親父ぃぃぃっっっ!!!」

 ヘタレからエロ親父へ、これは昇格なのか降格なのかっっ!?
 再び襲い来るハリセンに、時任を抱きかかえたままの久保田は逃げられないっ!
 重い尻は叩かれなかったがっ、時任とセクハラしか入っていないかもしれない頭に直撃するのは必至っ!やはりっ、最後の最後に勝つのは猫でも犬でもなくっ、姉御っ!?
 そう放送席の放送部が叫ぼうとした時、甘い声と言葉にダウンしていた時任がっ、砂を吐きつつも再起動!ハリセンが到達するより早く、砂を吐く唇でチュ…と可愛らしいキスを相方ではなく、両想いになった相手の唇にした…がっ、しかしっ!!
 次の瞬間っ、照れ隠しのエルボーが久保田の顔にさく裂っっ!!
 パリーンと眼鏡が割れたっっ!

 「く、く、久保ちゃんなんかっ、久保ちゃんなんか相方だけどっ、相方じゃないんだからなぁぁぁーっ!!」

 照れのあまり意味不明なセリフを叫んだ時任は、ダダダーっとグラウンドを荒磯を走り去るっ。すると、可愛らしいキスをされた時の状態のまま、今度は久保田が固まっていて動かなくなってしまった。
 ファーストキスは、砂の味。
 おーい、生きてるか?…と、相浦が目の前で手を振ってみたが無反応。
 だが、時任より早く2分半で、がしゃーん、がきーんとロボの音がしそうな動作で再起動した久保田は、砂の味を噛みしめ、ぷつり…と何かが切れた音を立てた後、無表情のまま自宅であるマンションに向かって走り出した。

 「・・・・・・・こりゃダメだわ」

 二人がいなくなり、ひゅるりーと風が吹き抜けるグラウンドで、さじではなくハリセンを投げた桂木は、松原にすすめられ、たこ焼きを口に放り込む。すると、絶妙なタイミングで校舎に張られていた大弾幕が外れ、風に吹き上げられて空を舞い…、
 その裏に書かれていた文字が、客席の生徒達や教師達の目に飛び込んできた。

 ・・・・・・これにて一件落着。

 んなワケねぇだろぉぉぉっ!!!
 対決はすべて決着がつかずっ、バカップルは可愛いキス残して逃亡っ。
 荒磯の謎は解けたような、解けなかったような微妙な感じっ。
 …でっっ、結局っ、二人は付き合ってんのっ、どうなってんのーーっ!?
 生徒達や教師の叫びはグラウンドに木霊しっ、チャペルにより結ばれた二組のカップルは幸せいっぱいで微笑み合いっ、退治された大塚はキスで再起不能っ。そのお友達は、あーあ結局やられ損かよ、帰ろうぜと大塚を置き去りにして校舎に向かう。
 すると、それとは無関係に、保健室の藤原が大きなくしゃみをしっ、
 いつの間に現れたのか、ヤケ酒で酔っぱらった五十嵐に絡まれ唇を奪われ、良かったなっと同じく酔っぱらった三文字にバンバンと肩を叩かれた相浦が涙ぐむっ。
 そして、室田は相変わらず松原の横で、顔を赤くしたり青くしたりしていたがっ、
 本日は晴天っ、執行部が治安を守る荒磯は今日も平和っ。
 翌日、少し遅刻して登校した時任が、何かがプツリと切れた狂犬に何をされたのか、何をされちゃったのかっ、妙なへっぴり越しで歩いていてもっ。そんな時任にあれだけスゴいことしちゃったんだから、コレくらい平気だよねとか何とか言いつつ、相方件恋人?がうれしそうにセクハラして蹴り飛ばされていてもっ、すべて世はことも無しっ!!


 もしかしたら、大騒ぎなラブパニックも平和の証拠…、なのかもしれなかった。


                                        END  2010.12.31


 このお話は、45555HIT! カノウ様のリクエストでvv
 甘々な久保時vですっ!!!vv
 つ、つたないお話なのですが、時間も膨大にかかってしまいましたのですが(涙)
 楽しいラブラブを目標にvvv甘々な二人を目指してvvvv
 ラブと感謝を込めて全力で書かせて頂いてしまいました(≧д≦)ノvvvv
 色々と本当に申し訳ありませんですっ、ごめんなさいですっっ(/□≦、)
 でもでも、やっと完結することができましたのですっ!!!!!
 お詫びしてもしきれないのですが(涙)
 リクをしてくださって、本当にありかどうございますですっっvvvv
 リクをして頂けて、とってもとっても嬉しかったですvvvv
 書かせて頂けて幸せですっっっvvvv

 (。TωT)ノ☆・゜:*:了└|力"├vvvv

 

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