魔王じゃないもんっ!
「第8話 太ってないもんっ!」


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 健康な一日は朝食から。
 ダイエット中だからといって、朝食を抜くのは、好ましくない。だからといって、たくさん食べ過ぎてもいけない。
 必要な栄養をバランス良く摂取するべきだ。
 成長期の過度なダイエットは、成長不良を引き起こす恐れがある。成長が遅れている真央としては、なんとしても避けたい事態だ。
 そのため、食事は特に気を配っている。

 料理上手な真央が本気で取り組んだ朝食は、見事にカロリーの抑えられた栄養価の高い食事だった。

 まずは主食のご飯を、白米から雑穀米に変更。
 白米は消化もよく、吸収されやすいが、そのぶん血糖値の上昇も高い。ゆっくりと吸収される雑穀米はダイエット中の心強い味方。それに白米よりも様々なミネラルを得ることができる。
 それに野菜のたっぷり入ったみそ汁。カロリーの割りに満腹感を得られる。
 主菜副菜も野菜をメインとし、カロリーの高い脂肪はなるべく摂取しない。極端な話、肉と魚を食べなければ随分カロリーは抑えられるが、それでは味気無い食事になってしまい、満足感が得られないだろう。
 それでは長続きしない。
 脂の少ない部位を選んだり、脂を落とす調理法などを心掛けるのだ。
 いろいろと面倒だが、料理好きの真央にとってはこれぐらい軽いもの。むしろこういう工夫は楽しいぐらいだ。
 楽しくなければ続かない、成果もでにくい。
 しっかり考え、しっかり楽しむ。真央はダイエットをやらせても非常に優秀と言えた。

 休日でなければ昼食は必然的に給食となり、カロリーなどは決まってしまっている。
 しかし、だからと言って無視したりしない。
 給食のメニューはしっかりとチェック。
 それにより、朝食と夕食の献立を調整するのだ。
 摂取カロリーの目安は理想摂取カロリーと同じ値に抑えてある。同じ値であれば、体重は減らないことになるが、真央は消費カロリーにて体重を減らす算段だった。
 夕飯前に行うトレーニングは小学5年生が行う運動量を凌駕する。単純に表現するなら、激しい運動を一時間分。消費カロリーはかなりのものだ。
 ふだんならこのトレーニングは週に一度で、その日の夕飯は特に豪勢なものにするのだが、ダイエット期間は毎日それを行い、摂取カロリーも変えない。

 これで痩せないわけはない。

 真央は確信を持ってそのメニューを毎日こなした。


 そして一週間後。


 その結果を知るため、真央は体重計に乗る。前と同じ条件で、夕飯を食べたあとだ。

「…………」

 真央はまた目を疑った。
 自分の目がおかしくなったと思いたかった。

 成果。
 プラス1キロ。

「いぃぃいゃぁあああああ!」

 真央のその悲鳴が屋敷に響き渡ったその日から、真央の短くも長い戦いは始まったのだった。


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