魔王じゃないもんっ!
「第8話 太ってないもんっ!」


−3−

 シュヴァルツが懸賞で当てた体重計は、体脂肪率などは測定できない単純なデジタル体重計だった。それでも現在洗面所にあるアナログな体重計と比べれば、随分といいものだ。
 真央は早速新しい体重計を設置すると、最近体重計に乗っていないことを思い出す。

「………………」

 若干の思案の後、まわりに誰もいないことを確認してから、そろりと体重計に足を乗せた。
 数値を表すセグメントが世話しなく点滅を繰り返し、やがてぴたりと止まる。

「………………」

 ごしごしごしごし。

 真央は目を勢いよくこすった。
 目に映るものが非現実的で、自分の目の方を疑ったからだ。

 さて、もう一度。

 じっくりとデジタル数字を凝視。

「………………」

 真央の視力は学校の身体測定において、ポジティブな方向に計測不可能。
 とりあえず、2.0以上であることは間違いない。そんな視力を持つ真央が、体重計のデジタル数字を見間違えることなどありえなかった。
 前に体重計に乗ったのは1カ月前。この新しい体重計は、その日から変動した数値が4キロだと言っている。
 1カ月で4キロはなかなかの増量、というか増え過ぎだ。

 さーっと引いていく血の気。
 しかしすぐに別の可能性が思い当たる。
 なんたって自分は成長期。
 身長がぐぐんと伸びれば体重だって増えてしかるべきだ。
 真央は自ら毎月つけている柱の傷と現在の自分を比較する。

 ………………!

 やっぱり伸びていた!!

 ……2ミリ程度だが。

 2ミリ4キロのペースで体重が増えていくなら、成人女性の平均身長まで伸びたとき、軽く500キロを越えてしまう。

 もう否定しようがない。
 自分は太ったのだ。

 なぜこんなことに?
 そう思ったが、思い返せば思い当たる節がしっかりある。
 魔族な家族が増えてから明らかに食事量が増えていた。一人で食事していたころの倍近く食べているかもしれない。

 これはまずい。非常にまずい。

 どんどん顔が青ざめていくなか、真央はさっきの翔太の言葉を思い出した。

「ぽっこりお腹」

 つまりあれは太ったということなのか。
 自分のお腹をそっと触ってみる。
 ぽよんと柔らかいその感触に、真央はダイエット実施を決断した。


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