魔王じゃないもんっ!
「第3話 巨乳じゃないもんっ!」

−14−

「おっぱい! おっぱい!」

 5年4組に響き渡るおっぱいコール。
 教壇に腰掛ける真央に跪く生徒たち。その中に、担任である博美がいるのは驚きだった。
 あれからすず子の演説はどんどんエスカレートしていき、この「おっぱい教」が設立するに至った。
 なんでも、この「突発性豊胸症」の女性を崇めるときに唱える言葉が偶然にも「オッパイ」なのだそうだ。
 もちろん偶然でもなんでもないのだが、実情を知らないすず子はそれを受けて「おっぱい教」の設立を表明した。
 真央の胸に宿る神を崇め、真央を神に選ばれしものとして奉る宗教らしい。
 あまりの出来事に、完全に抜け殻状態の真央はもはや抗う気力も無く、神の使いの役目を引き受けていた。
「真央様。我々におっぱいウェーブの慈悲を!」
 すず子が恭しく頭を下げて「おっぱいウェーブ」をねだる。
 これもウェブサイトに書いてあったことらしいのだが、大きな胸を揺らすことで生まれる不可視の『波』は人々を幸せにするらしい。
 恥ずかしいことこの上ないが、すっかり洗脳されたクラスメイト全員にねだられ仕方なく胸を揺らす。

 ぶるるんっ!

「おっぱい! おっぱい!」

 再び起きるおっぱいコール。
 確実にこの教室は異次元と言っていいレベルの異質さだ。
 なお、このおっぱいウェーブには、豊胸作用があるらしい。それにより、胸が小さめの博美も「おっぱい教」の信者となった。
 なお、クラスメイト全員が信者となったわけではなく、小手岸ほのかをはじめとする、すず子の演説により洗脳されなかった面々はすでに下校していた。
 真央はほとんど薄弱な意識の中、ぼんやりと姉の言葉を思い出す。
『真央ちゃんが崇め奉られる姿が見える』
 姉の占いの結果なのだが、なんてこったい大当たりじゃないか。姉の占いの正確さをかみ締めつつ、教室に度々おこる「おっぱいコール」に打たれながら、時が過ぎ、解放されるのをひたすら待つことしかできなかった。



13へ 戻る 15へ