女神の騎士
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「まぁ、そういうこっちゃ。 誉められへん生き方っちゅうんはわかっとるつもりや。だけど、変えられへん」 ラヴェルナは自分の話をそう締めくくった。 アレスは話の途中から、高鳴る心臓の鼓動を感じ続けている。 変えられない生き方。 「……俺に求めるのか……」 口にすると共に、苦い気持ちになる。 もしこの女が頷いたのなら、自分はどうすればいいだろう。 「あんた。何かをずっと見てるやろ? なんやようわからんけど、ただひたすらに何かを見据えて生きとる。そんな感じがするんや。 その目がウチの方に向いたのなら。求めていたもんが手に入る気がするんや」 間違いなく、この女は自分と同じ種類の人間。そして自分を求めている。 「俺は……応えられない」 「でも、あきらめられへんのや」 手に入るはずがないのに。俺に求めてもどうにもならないのに。 「……タークドまでは一人で行け。もう俺はおまえを護らない」 「な、なんやて?」 そう言い放ち、部屋を出るアレス。 ラヴェルナは慌てて追いかけるが、もう姿は見えなかった。 (アカン……) 最後の言葉を口にするときの声色と表情。 それまでのアレスとは比べものにならないほど、感情が表に出ていた。必死に抑制していたものが壊れたような、そんな風に感じた。 (ここで逃げられたら、一生会われへん) 直感的に思ったことだが、ラヴェルナには絶対の自信があった。 おそらくアレスは外に出たはずだ。感情の高ぶっている状態なら、どこかに潜むような行動はしないはず。 どこへ向かえばいいのかなんてわからない。だがラヴェルナは、何の躊躇いもなく外の闇へと身を投じた。 |