女神の騎士

11

「まぁ、そういうこっちゃ。
 誉められへん生き方っちゅうんはわかっとるつもりや。だけど、変えられへん」
 ラヴェルナは自分の話をそう締めくくった。
 アレスは話の途中から、高鳴る心臓の鼓動を感じ続けている。

 変えられない生き方。

「……俺に求めるのか……」
 口にすると共に、苦い気持ちになる。
 もしこの女が頷いたのなら、自分はどうすればいいだろう。
「あんた。何かをずっと見てるやろ?
 なんやようわからんけど、ただひたすらに何かを見据えて生きとる。そんな感じがするんや。
 その目がウチの方に向いたのなら。求めていたもんが手に入る気がするんや」
 間違いなく、この女は自分と同じ種類の人間。そして自分を求めている。
「俺は……応えられない」
「でも、あきらめられへんのや」
 手に入るはずがないのに。俺に求めてもどうにもならないのに。
「……タークドまでは一人で行け。もう俺はおまえを護らない」
「な、なんやて?」
 そう言い放ち、部屋を出るアレス。
 ラヴェルナは慌てて追いかけるが、もう姿は見えなかった。
(アカン……)
 最後の言葉を口にするときの声色と表情。
 それまでのアレスとは比べものにならないほど、感情が表に出ていた。必死に抑制していたものが壊れたような、そんな風に感じた。
(ここで逃げられたら、一生会われへん)
 直感的に思ったことだが、ラヴェルナには絶対の自信があった。
 おそらくアレスは外に出たはずだ。感情の高ぶっている状態なら、どこかに潜むような行動はしないはず。
 どこへ向かえばいいのかなんてわからない。だがラヴェルナは、何の躊躇いもなく外の闇へと身を投じた。


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