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 昼間に新調した黒いスーツと黒いワイシャツ。さらに黒いネクタイに身を包み俺は闇に溶けていた。
 多少動きにくいかもしれないが、この格好が一番処理をするのに慣れ親しんだ格好だ。
 七時ぐらいから、俺は学校の近くにある木の上に潜んでいる。この場所だと学校、特に校門の様子がよく分かるからな。
 今、恵子の通う中学校で明かりが点いているのは体育館だけだ。恵子は確かバレー部だったな。現在八時半。他のバレー部員が帰ったのが八時ぐらいだったからそろそろのはずだ。 ふっ……と体育館の電気が消え、その代わり廊下の電気が点く。
 ……終わったか。

 ドクン……ドクン……ドクン……。

 否応無しに心臓が高鳴る。
 いよいよだっ。
 ゆっくりと校門に近づいてくる二つの人影。
 明かりが無いために顔は確認できないが、二人の背丈には差があることは確認できる。
 そして校門の目の前に着くと二人とも足を止めた。
「ほんと、遅くまでご苦労様ね」
 大人の女の声。顧問の声だろう。
「はい、それでは先生。さようなら」
 明るくて元気な声。間違いない、恵子だ。
 二つに別れる影。俺は小さい方の影だけを目で追う。
 少し早めの足取りで家に向かっているようだ。
 俺は静かに木から飛び降り、ゆっくりと、それでいて足早に恵子に歩み寄った。
「恵子ちゃん」
 ポンっと肩を叩き声をかけると、ビクリと体全体が跳ね上がった。
「きゃっ……」
 悲鳴を上げそうな雰囲気だったので慌てて口を塞ぐ。
「俺だよ俺」
 静かに声をかけて恵子の顔を覗き込む。
 俺の顔を確認すると、ホッと安堵の息を漏らす恵子。ゆっくりと塞いでいた手を放す。
「び、びっくりした。どうしたんですか? 寝てなくていいんですか?」
 よほど驚いたようで、胸を抑えながら絞り出すようにして声を出している。 
「うん。もう大丈夫だよ」
「でも、どうして……」
「ほら、帰りが遅いって言ってただろ? 心配になってさ」
「え?」
 恵子の顔が赤く染まる。
「う、うれしいです。恭介さん……私」
 ……間違いない。
 恵子は俺に好意を持っている。
「あのさ、恵子ちゃん」
 いきなり襲わないでこんなクサイ芝居をしたのは恵子の気持ちを確かめるためだ。
 それだけじゃない。喜ばしておいてどん底に落とす。
「な、なんですか恭介さん」

 バチィッ!
  
 恵子が振り返えるその前に首すじにスタンガンを当てる。
「!?」
 恵子の焦点がブレ、大きな目が真っ白になる。
「おっと」
 俺は恵子が倒れてしまわないように支えた。
 スタンガンを使ったのは傷つけずに眠らせるため。
「ホント、かわいいね。恵子ちゃん」
 かわいい寝顔を見た俺は、思わず頬をペロリと舐めた。
 すべすべで柔らかく、少女独特の香りがした。
 頭がクラクラしてこの場で恵子を犯したくなる。
 だが、我慢だ。最高の味を味わうためには我慢が必要なのだ。
 俺は自分にそう言い聞かせ、気絶した恵子を抱える。そして『恵子を壊す場所』へと走った。



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