No.490の記事

世界の終わりの場所へ 〜北海道旅行記 3日目〜

 今日は最大の楽しみであるクルージングの日。いよいよ知床岬をこの目に焼き付けることができるのです。先日の天気予報では晴れでしたが、なぜかどんよりと曇り。というか、秋晴れが続くとか言ってたのになんですかコレ。女心と秋の空?
 勘弁してください。

 まぁ雨は降らないとのことなのでそれだけが救い。
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 さて先日、ホテルからウトロ温泉の拠点であるバスターミナルまでの定期シャトルバスがあるという情報をGETしたので、それを利用するつもりだったのですが、準備に戸惑い1分オーバー。
 まぁ歩けない距離じゃないから歩こうと決意し、歩き始めて数分。
 少し遅れたバスがやってまりました。
 お約束〜。

 いやぁ〜地団駄を踏んだのは久しぶりでしたよ。

 まぁ気を取り直して、いよいよクルージングです。
 乗船は予約順になるようで、予約順に並ばされました。
 でね。今度こそ本当に来ましたよ。
 私のあとに予約したのは女性。しかもシングルです。
 さて、どうしたもんか、声をかけるべきか、いやでも、なんて悩んでいるうちにもう乗船。
 というか無理ですよ。シャイで奥手でちょっぴりイナセな美奈神にナンパ行為なんて無理です。何かきっかけとかないとできるわけ無いんですってばよっ!

「わわっ!」

 そんな美奈神の背中に衝撃。

「ご、ごめんなさい」

 どうやら女性が乗船時にバランスを崩したようです。

「あ、いいえ。お気になさらず」

 極力フレンドリーな笑顔。
 ……なんせコレはアレですから!
 願ってもないきっかけですからね!
 そりゃ顔の筋肉がひきつるぐらいの笑顔を浮かべもします。
 乗船後もなんとなく足元がおぼつかない女性。

「大丈夫ですか?」

「た、たぶん」

 声をかけるとさっきの恥ずかしさを思い出したのか、照れ笑いを浮かべます。
 なんだなんだ、ちょっとかわいいぞ。
 そのあとはなんとなく近くに座り、クルーザーから眺める知床の景色に二人して見とれ、感動を共有している気分になりました。
 感動の共有っていいものですね。感動独り占めもいいですが、「すごい!綺麗ですね」「本当!」とか、「クマ? どこ? どこですか?」「たぶんあそこ! ホラ動いた!」なんていうやりとりができますから。
 クルージングが終わる頃には意気投合し、昼食も一緒に食べました。なんでも彼女は、旭川の方に住んでいて、懸賞で当てて来たそうです。本当は友人と二人で行く予定だったのに、急な仕事でキャンセルされたとか。
 彼女が泊まっているホテルは、懸賞の商品になるだけあって、私の泊まるところよりも一回り以上デカいリッパなホテルでしたよチクショウ。
 明日も滞在するようなので、勇気を出して一緒に回らないかと誘って見ると、了承してもらえました。
 しかも彼女。車を持っているらしいので非常に心強い。明日が楽しみでなりません!


……んなわきゃない。

 このウソ出会い。バレバレでも毎日入れていこうと思ってます(笑)。
 まぁ予約順で女性が後ろにいたことろまでは本当ですが、それ以降は大嘘です。乗船してからは、もう一人でもテンション上がりまくり。クルーザーの二階で往路(1時間半)はずっと立った状態で風を受けまくっていました。
 海! 風! もうね!  すごいのよ!
 絶壁が! 岩肌が! すごいのよ!
 その中でも特に気になった岩があったのでご紹介します。

こけし岩


 こけしのように見える岩なのですが、こいつの頭の部分。乗っているだけなんだそうです。乗ってるだけなんですよ?
 なんという不安定さ。いつ首がもげてもおかしくないデンジャラスなところが痺れる。
 アレですね。
 きっと頭の部分がコックピットになり、動きだすに違いないのです。

 途中で熊の姿を2回ほど見ることもできました。かなり俊敏な動きをしていたのが印象的でした。襲われたらひとたまりもないでしょうね。

 で、いよいよ知床岬に到着。上陸はしませんでしたが、なんだかものすごく神秘的でした。

 アイヌ後で知床は世界の終わりを意味するそうです。


「エンドオブワールドォ!」


 などと絶叫しそうになるくらいの感動。
 残念だったのは曇っていたので、北方領土の島々が見れなかったことです。天気が良ければ見られるそうですが、こればかりは仕方がありません。
 帰りはさすがに体が冷えてきたので、キャビンの中から鑑賞することにしました。
 てかね。寒いんですよ? 船上って。
 寒いとは聞いていましたが、ここまでとは正直思いませんでした。
 なお、キャビンには途中で気分が悪くなった人たちの「気持ち悪いオーラ」が充満していたので、早々に脱出して寒さをこらえつつ、景色を楽しむことに集中する事にしました。

 クルージングも終わり、腹が減ってきました。せっかく港にいるということで、生きたカニをその場で茹でてもらい、食うという贅沢を実行!
 しかもいくら丼つき!

 いくら丼は、感動するほどウマイって感じじゃなかったです……。
 期待しすぎたせいかも。
 で、とうとうカニです。
 タラバは7,000円で手が届かなかったので、3,000円クラスの毛ガニをチョイス。
 まずは刺身です。


 ……味はこんなもんかという感じ。
 生で食うならタラバの方がおいしいようですね。
 続いて茹でガニ。

 うん!やっぱり毛ガニはゆでたほうがウマイです!
 それに味噌。ウメェ。
 毛ガニの旬は冬ですが、それでも充分なウマさ。
 イクラ丼+カニ1匹という豪華なご馳走のあとは、近くのペレケ川公園なるところを散策し、鮭の観察をしていました。
 いやね、すごいんですよ? もう、たくさんいるんです。しかもこの季節だからアレですよ。昇ってるわけです!
 しかも川は浅いので、その気になれば掴み取りだってできます。
 ……やったら捕まりますが。
 で、激流に逆らって泳ぐ姿を見たかったのですが、岩陰でずっと休んでいる姿しか見れなかったのが残念。
 近くで見ていたせいかもしれませんが。

 さて、散策もそこそこに近所のスーパーでちょっと高い地酒を購入。ランドリーで洗濯をしつつ、チビチビやりながらゆったりとした時間を過ごしていますが、ハプニング勃発。

 コインを入れても乾燥機が動きません。
 フロントに連絡すると回しときますとのこと。で、30分後。確かに回っていたようですが、あまり乾いていなかったので、もう30分回そうとコイン投入。

 ハイ。動きません。

 またフロントに連絡すると、回しておきますとのこと。
 で、30分後。
 乾燥機の様子を見ると、残り時間が60分になっていました。

 ……………………。

 えーと?
 2回も動作しなかったので、大サービスしてくれたのでしょうか。
 好意はありがたく受け取ることにして放っておくことにします。

 そんなこんなで夕食の時間に。

 今日も大したことないんだろうなと思いカメラを持っていかなかったわけですが、今晩の夕食には私を驚かせる存在が。

 カニまるまる1匹。

 ……しかも毛ガニ。

 えーと(笑)。

 知ってれば昼に食べませんでしたがな。

 まぁ平らげましたケドー。
 二匹の毛ガニを腹に収めつつ、ちびりちびりと地酒。地方ならではの、微妙なTV番組を眺めながらゆったり過ごす。
 そして、今日あったことを書き留めるその時間は、普段の生活からは考えられないぐらい優しい時間でした。

 旅に出て本当によかった。

 そんな感じで知床三日目の夜も更けていくのでありました。

※蟹の数え方は1杯、2杯が正しいような気がしますが、別に1匹、2匹でもいいようです。