美奈神が書きたい放題書くところ
勇者妻の後日談+自分の感想です。
読破された方向けですので、読破された方、読破する気がない方のみ、続きを読むをクリックしてください。
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目の前にそびえ立つ40階の塔。
初めてデモンズに上陸したときと同じような感動を覚える。
今私は、伝説の場所にいる。
伝説の剣の眠る場所。
剣塚。
ふと見上げると、ほの黒い霧が立ち込めていた。
例年よりも雨の日が多く、いつもよりも剣塚への到着が遅れたせいで、魔王が完全体へと近づいているしまっているらしい。
神をも討ち滅ぼす魔王がその力を取り戻しつつある事実に、若干の恐怖を覚えるが、それ以上の何かが剣塚へ入ることを躊躇わせない。
「行こうか、ユリア」
私のパートナーも心配ないようだ。恐怖どころか、まるで大好物を目の前にした子供のような顔をしている。
「勇者の剣を捕捉したら早い者勝ちだから、忘れないでね」
私はニヤリと笑う。
「その条件でOKだよ」
ヒイロもほほ笑む。
「妨害もアリだけど、ヒイロは愛する私にひどいことしないって信じてるっ」
「ユリアは容赦なくひどいことしそうだけどね」
毒舌は相変わらずだけど、もう慣れてしまってむしろ心地良い。
あ、マゾじゃないわよ?
「さて、じゃあ行きますかっ」
そして二人は声を合わせて、伝説の剣が眠る塔へ足を踏み入れた。
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うちの看板作品であり、自分の作風が色濃く出ている思い入れが一番強い作品。
そんな作品が、読者様からの感想が一番多く、レビューなどにも取り上げられているのは、嬉しい事実です。
しかし今になって読み返してみると、倒置法がやたら多かったり、言葉の繰り返しがやたら多かったりと結構読みにくい印象を受けました(現在ある程度修正済みです)。
リズムや読み易さを重視していたはずなのにこれかよという印象を持ちつつ、これが良かったのか? と、ケータイ小説が頭に浮かびつつ、もしかしたら自分は成長できているかもと思うことができました。
文章力はともかくとして、話のつくり的には、拙作中、最高に自分好みに近い仕上りになっていると思います。
それがベストな作品かと言われれば別で、実は完成度はそれほど高くないんじゃないかと読み返して思いました。
さて、この作品。
勇者が誰になるかが作中では描かれていないのですが、それを補完する続編構想がありました。
ユリアとヒイロを別視点から描くもので、ストーリーから結末までしっかりと決まっており、書こうと思えばいつでも書ける状態になっていたのですが、書きませんでした。
あまりにも自分自身がこの作品を気に入ってしまっていたので、書いても蛇足にしかなりえないんだろうなと思ったんです。
ただ、作品を読破した人の何人かにこれの概要を話したのですが、好感触なお返事をいただいております。
9年近く経った今。挑戦してみてもいいのかもしれませんね。
ホントにやるかどうかはわかりませんが。