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文章まにあ


★ 男と女の事件簿 ★

 

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料理 前編

 

 

 「ねぇ、けいすけってさ、ウチに来たことまだ無いよね」
 「まだ付き合って3日目だしね。一人暮らしだったっけ?」
 「うん。だからさ、きょうこれから来なよ。明日休みだし」
 「そうだね、いいかも。じゃあ、飯とかどうする? 食って帰る? 買って帰る?」
 「ふふ、作ってあげる。ほら、初めてウチに来てくれた記念で」
 「本当に? って、料理できんの? なんかそういう雰囲気してないから」
 「うわ、失礼ぶっこいてる! 簡単な料理くらい作れるよ!!」
 「簡単な料理って何作れるの?」
 「それは…、スーパー行って売り物見ながら決める。何か嫌いなものとかある?」
 「嫌いなものは挙げたらキリがないほどあるよ。じゃあ、駅に着いたら買い物して帰ろう」



 「このスーパーでいつも買い物してるんだ。ここから家は近いの?」
 「買い物はたまにね。あんまり自炊しないし。家は近いよ」
 「ふ〜ん」
 「それよりさ、何がいい? 好きなものとか何?」
 「う〜ん、そうだなぁ…。久しぶりに赤いウィンナーとか食べたいかも」
 「赤いウィンナー? それどうすんの?」
 「どうすんのって、そのまま塩・こしょうで炒めたり、キャベツと炒めたり…」
 「あ、それなら私にも出来そう」
 「……。料理苦手だったら無理しなくてもいいよ。弁当とかだって売ってるし」
 「あ、また馬鹿にした。全然大丈夫だって、家庭科の成績良かったし」
 「分かった分かった、怒るなよ。じゃあ、赤いウィンナーとキャベツ炒めは決定ね」
 「うん。あとは?」
 「豆腐と油揚げとネギのみそ汁」
 「うんうん」
 「あと、卵焼き作ってごはん炊けばオレの中では完璧。おかわり3杯はいけるね」
 「でもさ、おかずがそれだけって淋しくない? なんかもうちょっと欲しいでしょ?」
 「じゃあ、そうだな、魚でも焼いて食おうか」
 「うん、そうしよう」



 「それじゃあ、まずはキャベツを買って…どこだろ?」
 「野菜はこっちこっち」
 「あ、あったあった。えっとキャベツは…あった」
 「……あのぅ、ちょっといいですか?」
 「えっ? なに?」
 「それ、レタス」
 「えっ? そうなの?」
 「……こっちがキャベツだから」
 「ま、まあいいじゃんいいじゃん。どっちも似てるし、ね☆」
 「…よくないけど、ま、いいよ」
 「えっと、……赤いウィンナーはこれでいいんだよね?」
 「今度は正解」
 「うわ、けいすけって性格悪いね」
 「はいはい。じゃあ、豆腐と油揚げとネギも買ってと」
 「あ、そうだ!」
 「どうしたの?」
 「お米ってウチにないよ。それも買ってかないと」
 「……」
 「ほらほら、ここに売ってる。あ、お米って結構色んな種類あるんだね」
 「…まぁ、日本人の主食だし、品種改良とかもかなりしてるしね」
 「ふぅん、そうなんだ。あ、ほら、これ安いよ、5kg 800円だって、ほかは2000円とかなのに」
 「…いやそれ、外国米だし…」
 「えっ? 外国にもお米ってあるの?」
 「…いやほら、ドリアとかあるでしょ」
 「あ、そだね。じゃあ、これで決まりね」
 「…いや、外国米ってさ、普通に炊くとおいしくないんだよね」
 「そうなの?」
 「オレはそう。それにさ、あんまり自炊しないなら5kgも買う必要ないし」
 「なんで? お米なんて腐らないでしょ」
 「…とりあえず、そのコシヒカリの2kgのでいいと思うよ」
 「うん、分かった、そうするね」
 「…それからさ、さすがに炊飯器はあるんだよね?」
 「あ〜、また馬鹿にした。あります、ありますよ〜だ。…使ったことないけどね☆」
 「……」
 「あ、そうだ、まだ魚買ってないよ。…あ、あったあった」
 「きょうはアジが特売みたいだね」
 「えっ? どれが?」
 「ほら、あそこに札刺さってるでしょ、『本日アジ特売』って」
 「でもさ、あれ、アジじゃないでしょ」
 「…いや、どこからどうみてもアジだよ、あれ」
 「だって、アジってもっと平べったいじゃん」
 「……たぶんそれ、アジの開き」



 身と皮しかない魚なんていないだろ…




つづく→

 

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けぇずまにあ