【Sweet Sweet Pain】 P9 (涼X拓) …何となくでたらめな英文字←アホか


 涼介から差し出される数々のカクテルを拓海は疑いもせずに口にした。

走り以外の事なら拓海は本当に平凡で、酒や煙草にもそれなりに興味はある。ふと垣間見る大人の世界に好奇心を持つなという方が無理だろう。ましてやその案内人が他ならぬ涼介ならば尚更である。

 差し出されるカクテルの鮮やかな色や口当たりの良さに誤魔化され、軽いから大丈夫という涼介の言葉に拓海は騙され続けた。
アルコールはほとんど無いから…というのは大嘘で、涼介が運ぶグラスの中身は拓海が気づかないうちに段々とアルコール度の高いモノへと移っていたのだ。

・・・・アレ?

 心の中で自分に疑問符を放った途端、クラリときた頭を拓海は必死に振った。
「どうした?…眠くなったのか?そのくらいで?」
 からかうようにそう言ってフッと微笑った涼介に、拓海はムッとした。まだ平気だと意地を張って、持っていたグラスの中身を一気に開ける。
「ムリするなよ。」
 言われたら拓海がムキになるのを承知で、わざと笑いながら涼介は言った。その言葉に、拓海は煽られる。───たやすく、涼介の罠にはまってしまう。
「無理なんてしてないっす!」
 売り言葉に買い言葉。
少し酔いかけてる自分に気づいていたけど、拓海はもう引くことは出来なかった。

 それから2杯目のグラスの途中で、拓海の身体がフラッと傾いた。
予想していた涼介は傾ぐ体を難なく支え、拓海の手に握られたグラスをその手ごと自分の口元に運ぶと、中に残っている液体を飲み干した。

───いつもよりずっと甘い、その味に酔いたくなる。
 拓海が意識を失ったこの瞬間、ついに涼介はかぶっていた仮面を取りさった。

★☆★☆★

 すぅっと小さな寝息をたてる拓海の身体を抱き上げて、涼介はベッドへと運んだ。キングサイズの大きなベッドに、そっと拓海を横たえる。
無意識に丸くなろうとする拓海の動きを遮って、涼介は上からじっと、眠る拓海の顔を覗き込んだ。

 ほんの少し開いた口が、あどけなくて可愛い。
身の内の衝動が命じるままにそっと近づいて、涼介は小さなキスでその唇を塞いだ。
「んっ……っ…」
 小さな声を上げた拓海の唇は、見た目通り柔らかくて、すぐに離したくなくなってしまう。涼介は口づけたままそっと微笑んだ。
───その微笑は、凄絶なまでに美しい。まるで、野生の獣のように。

 そのまま覆い被さろうとした拓海の体から、酒の芳香に混じって、やけに甘い香りが香ってくる。
 涼介は、何だろう?と少し考え、すぐに気がついた。
さっき拓海が抱きしめていた、あの薔薇の香りである。香りのキツイ種類だったから、拓海の髪や服にソレが移ってしまったのだろう。

 クスッと涼介は小さく笑って、拓海から離れていく。そして、ゆっくりと先ほどまでグラスを傾けていた場所に向かうと、置いたままにしてあった薔薇の束を鷲掴みにした。
 先程の拓海と同じように薔薇に顔を埋めて一瞬だけその香りを楽しむと、涼介はソレを片手に拓海が眠るベッドへと戻っていった。
 キレイに飾られたリボンを外し、涼介は1本1本、拓海の周りに薔薇を置いた。
花に埋もれて眠る拓海を、ほんの少し見たいと思った。ただ、それだけ。
 そして思いのほかキレイに仕上がったソレに、涼介は自分の作品に満足する芸術家のように微笑んで、1輪を拓海の鼻のすぐ下に翳した。

 薔薇の強い芳香に鼻孔をくすぐられて、拓海はフッと目覚めてしまう。
「ん…な、何?」
 ぼや〜っとした顔で、ノンキにそう言う拓海に笑みをはいて、涼介は用無しになったその薔薇をポイッと床に放ってしまった。

「意識が無いと…つまらないからな。」
 突然聞こえた脈絡のない涼介の言葉に、拓海はコトリと首を傾げた。
「涼介さ……?」
 ぽや〜と霞む目を必死に開いて、拓海は涼介に声をかけた。
拓海の声には、一体、何がつまらないのか?と尋ねる響きがあった。
 だが、その声には何も答えず、涼介は拓海の唇をキスで塞いだ。
「んっ!…ぁ、や、何すっ……んんっ!!」
 イキナリの事に驚いて顔を背けた拓海を許さず、涼介はその顎を両手で捕らえ固定すると、また唇を塞いだ。
 それは、奪うという表現がぴったりくる程、一方的で激しいキス。
 無遠慮に口の中を蠢く涼介の舌に、拓海は応える事も拒む事も出来ずただ驚いていた。
 今まで1度だってこんなキスをしたコトないのはもちろん、こんなキスがあることすら拓海は知らなかった。涼介とのキスはいつでも甘く優しい、そんな触れ合いだったから。

───ッ、な、何だヨ、これっ!!
 驚いて目を見開いても、涼介の顔は余りに近すぎて、その表情は判らない。
呼吸さえも奪われて、拓海は苦しげに眉を寄せると与えられる唾液を飲み込んだ。
 コクッと音を立てて飲み干して、やっと唇が解放される。
「ぁ…はっ……ふぅぅ…っ」
 拓海は大きく息を継いだ。そして、改めて自分の現状を理解しようとした。

───高い天井。明らかに洋室で、自分の部屋とは全然違う。
自分が寝ている場所の柔らかな感触も、知らないもの。

・・・ああ、そうだ。涼介さんと・・・
さっきまで、ほろ酔い気分で飲んでいたことに拓海は漸く思い当たった。

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