【Sweet Sweet Pain】 P6 (涼X拓) …何となくでたらめな英文字←アホか
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───3日後
はぁはぁと、荒い息を吐きながら、拓海は人の間を縫うようにして駆けていた。
涼介との約束の時間に、かなり遅れてしまった。
・・・あ、後・・ちょっと・・・。
見えてきたあの角を曲がればスグのところ。きっと涼介はもう来ているだろう。
拓海はラストスパートとばかりにスピードを上げた。前もロクに見ずに走るコトに専念する。
「わぁっ!」
案の定、曲がった途端に誰かにぶつかってしまい、拓海は反動で後ろに転がりそうになる。どう考えても後頭部が地面と直撃というカンジだ。
───やばッ!
ギュッと目を瞑って襲い来るだろう衝撃に備えた拓海だったが、ふわりと体が浮くようなカンジで誰かに支えられた。
───え?
と、拓海が思ったのと同時に、柔らかい声が降ってくる。
「大丈夫か?藤原?」
聞き慣れた声に、拓海はパチッと目を開ける。支えられた体もそのままに、驚いたように目の前にある涼介の顔を見つめた。
「…藤原?どうした?何処か…」
痛くしたか?と聞こうとした涼介の声に、拓海はハッと我に返った。往来で体を支えられたままボーッと涼介の顔を見つめている自分に気づき、真っ赤になって慌てて涼介の腕から退いてしまう。
「いえっ、大丈夫です。あの、俺っ…すいませんっ…」
ぶつかったことも遅れたことも謝らなきゃ・・・。あ、支えてもらった礼も言わなきゃ・・・と思うのに、達者でない舌が動いてくれなくて、上手く言葉が出てこない。
目の前で焦っている拓海にクスッと微笑って、涼介はポンポンと軽くその頭を叩いてやった。
それを合図に落ち着きを取り戻した拓海は、漸く真っ直ぐに顔を上げた。
「…やっと俺の方、見てくれたな。」
そう言ってフワリと優しげな笑みを浮かべた涼介に、拓海はまた少し頬を染めた。もう大分慣れたを思っていたのだが、やはり間近でこんな表情をされるとこうなってしまうのだ。
「ゴメンなさい、俺…思いっきりぶつかっちゃって…。あの、痛かったですか?」
「いや、大丈夫だ。…お前こそ大丈夫か?あんなに全力疾走しなくてもよかったんだぞ?」
「俺もヘーキです。涼介さんが支えてくれたし。有り難うございました。」
ニコッと笑って礼を言った拓海に、涼介も笑みを返した。そして、止めてある車の方へと拓海を導いていく。
「じゃあ、そろそろ行こうか。」
「はい。・・・あ、時間!どうしよう。俺、遅れたから・・・」
涼介に食事の誘われた時は、店に予約を入れてある場合が多い。FCのナビに座りながら、心配そうに眉を下げる拓海に涼介は安心させるように微笑んだ。
「時間は大丈夫だ。気軽にしてていいから。」
「そうですか?…よかった。」
ホッと安心したように、胸を撫で下ろす拓海に笑って、涼介は車を走らせた。
───そして数十分後。
「涼介さん・・・」
ドーンと目の前にある建物に、拓海は呆然とした。
・・・ドコが気軽にしてていいんだろう?・・・涼介さんの嘘つき。
拓海がそう思ってしまったのも無理はない。何せ、今目の前にあるのは、拓海など足を踏み入れたこともないような大きな高級ホテルなのである。
「・・・こんなトコの店・・・なんですか?」
心配そうに、拓海は涼介を見上げた。なんせ、涼介はともかく、拓海などトレーナーにGパンである。とても、ホテル内のレストランやらで食事する格好ではない。
「大丈夫。店じゃないから。ほら、おいで。」
はぁ?っと首を捻って戸惑う拓海をやや強引に連れ込むと、涼介は拓海をロビーに待たせてフロントへ向かった。
拓海は涼介の背を見送りつつ、キョロキョロと周りを見回す。場違いな自分に、ちょっと…いや、かなり、逃げ出したい気分になってしまった。
そんな拓海に気づいて、フロントでの手配を済ませた涼介はチャラッと目の前に鍵をかざした。
「え?」
「・・・気軽にしてろって言っただろう?今日は部屋食だから大丈夫。」
「え?」
「畏まったレストランとか苦手だろう?だからこっちの方がいいかと思って。ここの料理はナカナカだから、期待していいぞ。」
そう言って涼介は朗らかに笑いつつ、拓海の背に腕を廻してエレベーターへと連れ込んだ。
「ええっ!!…で、でも、…ソレってスゴく高いんじゃ……」
ウィーンとかすかな機械音を立てながら、エレベーターが上昇する。拓海は尚も心配そうに眉を顰めた。
「気にするな。親が貰った招待券を貰っただけだから。忙しくて来れないらしい。」
「それなら、啓介さんとでも来た方が良かったんじゃ?……家族なんだし…。」
「───冗談は止めてくれ。啓介とホテルで食事なんて、考えたくないな。それとも…藤原は俺とこういうトコで食事はしたくない?俺は誰の邪魔も入らない所で、お前とゆっくり食事を楽しみたいんだけどな?」
グイッと拓海に詰め寄って、涼介は至近距離から拓海を見つめた。深い瞳で、拓海の瞳を探るように見つめる。
「そんな!……俺だって涼介さんと食事したいです!」
慌てて、拓海は涼介の言葉を否定した。涼介と食事をするのが嫌だなんて、思ったことなど1度もない。
「よかった。じゃあ、何も問題ない……だろう?」
嬉しそうに微笑しながら聞き返されて、拓海はコトリと首を傾げた。
「うーん、そっか。」
アレ…?と思いつつも拓海が納得した時に、目的の階に到着した。涼介は上手く誤魔化された拓海にクスッと笑って、そのまま部屋へと導いた。
───導かれた扉の先にある未来に、拓海はまだ、何も気づいてはいない。
扉を開ける前に微笑いかけると、拓海も照れくさそうに微笑み返してきた。
───疑いのない、信頼と愛情に溢れた笑顔。
その無邪気さを…引き裂いてやりたい。
舌なめずりをするように、彼を求める自分の一部に、気付いてもいない。
その無邪気さが…愛しいけれど許せない。もう、許せないのだ。
自分の中にある昏い感情を、涼介は真っ向から受け止めた。涼介にとって、これは危険な賭だ。最悪、拓海を失うことになるかもしれない。
でも、もう、引き返すつもりは、欠片もなかった。
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