【Sweet Sweet Pain】 P5 (涼X拓) …何となくでたらめな英文字←アホか

<<SCENE 4 危険な賭 >>

 涼介は、今まで自信を失ったことなどなかった。

 何をやるにしても、いつだって自分のやりたい事をやりたいようにしてきたし、その為の努力を惜しんだこともない。何時だって、後悔のないように人生を謳歌してきた。
 ・・・でも、ここに来て初めて、涼介は自分を見失いつつあった。
───自分の犯したミスに・・・気付いてしまった。

・・・俺は・・・大バカか?

 あの後、拓海と会って何を話して、1日をどう過ごしたのか?
涼介はハッキリと覚えていなかった。それほどに、胸の内にある感情を抑えることに精一杯で・・・。

 カラン…とグラスを鳴らして、涼介は揺れる琥珀色の液体を見つめた。すると、頭の中に、よく似た色の見慣れた柔らかい髪がフワリと舞う光景が浮かぶ。涼介はグッと残っていた液体を飲み干した。氷だけになってしまったグラスに、またコポコポと液体を満たそうとする。だが、途中で途切れてしまった瓶に少し眉を顰めて、涼介はソレをやや乱暴に机の上に置いた。
 涼介にしてはめずらしい。・・・少しペースの速い飲み方だった。これでは、味も香りも楽しむどころではないだろう。

・・・さっさと・・・捕まえとくべきだったな。

 拓海にとっての自分は恋人というよりも、何か別のモノのようだと苦笑するコトも時々あった。・・・一応、いろいろアプローチもしてきたつもりだが、見事に全部、カワされてしまったのである。
───無垢な拓海の瞳は、それだけでもう、凶器のようだった。

 啓介にとっての自分は『頼りがいのあるアニキ』でいい。外野にとっての自分は『スゴイ人』でも『出来過ぎでイヤな奴』でも何でもいい。でも、拓海にとっての自分は…。
 拓海だけは、特別だから。そんな風に思って欲しくない。スゴイ人だけで、終わりたくない。

「…『待ってやる』なんて・・・言うんじゃなかった。」
 失敗した。カッコばかりつけて、やせ我慢ばかりで。───出来るわけないのに、自分には出来ると過信していた。
それは、自分が拓海を想うように、拓海も自分を想ってくれると、自信があったから。誰よりも自分は特別だと、何故かそんな自信があったから。だから、ゆっくり歩むのもいいと、悠々とノンキに構えていたのだ。
 今では『あの自信は何処から来たモノなんだ、俺!』と、自分で突っ込み入れたいくらいだが・・・。

 本当は結構、自分勝手で我が儘な自分を、涼介は知っていた。自分には絶対、拓海を手放すことなんて出来ない。でも、このままじゃ、きっとダメになる。
・・・俺はきっと、ダメにしてしまう。

 脳裏に浮かんだ、日だまりによく似合う、拓海の微笑み。親しくなるまで、滅多にお目にかかれないその表情を初めて目にした時の感動を、涼介は今も覚えている。
振り返る瞬間にフワリと舞う前髪も、真っ直ぐに自分を見る大きめの瞳も、照れ屋ですぐ俯いてしまう所も、怒った時や拗ねた時の表情も、拓海の全部がとても愛おしい。
 大切にしたいと思ったから、自分自身を誤魔化し続けた。でも、ここに来て、誤魔化し続ける自信がなくなってしまったのだ。

 いつもなら拓海の事を想う時、愛しさに綻ぶ涼介の口元は、今はぎゅっと引き締まったままで、涼介は何かを堪えるように眉を顰めた。手にあるグラスからピシッと、氷の割れる音が響く。
 拓海を愛しいと、大切だと思う気持ちに変わりはない。何ひとつ、ない。
けれども、確かなモノがほしいのだ。もっとずっと確かなモノ。拓海の信頼を裏切り傷つけてでも、それを手に入れたいと願う自分を、涼介は愚かだと思った。

・・・俺がこんな感情を持ってるなんて、知りもしないだろう?拓海…

 グラスの中身をクルッと廻して、涼介はまた琥珀色の液体を喉に流し込んだ。熱く喉を焼くアルコールが、まるで自分自身の気持ちのようだった。この熱さをぶつけてしまったら、自分を信頼するあの瞳はどう変わってしまうのだろう?ぬるま湯のような自分しか知らない彼は、どうなるのだろう?そして、…自分たち2人の関係は・・・?
 分からない事だらけで、涼介は笑ってしまった。情けない、これが本当の自分なのかと。

このままでは居られない───それだけが、今の涼介に解っている事だった。

「・・・なるようになる・・・か。・・・便利な言葉だな。」
 極めて涼介に似つかわしくない言葉を吐き、肩に込めていた力を抜くと、眼を閉じて残っていた全ての酒を飲み干した。静かにグラスを机に置くと、涼介は閉じていた瞼をゆっくりと開いて、微笑を浮かべた。その瞳に、何かの決意を宿しながら。

「・・・そう言えば、拓海は洋酒が苦手だった・・・かな?」
(注:この話ではそーいうコトにしといて下さい〜)
 静かに呟かれたその言葉は、誰に届くこともなかった。

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