【Sweet Sweet Pain】 P13 (涼X拓) …何となくでたらめな英文字←アホか
「・・・そうやって、諦めるんですか?」
「・・・」
諦められるはずなどないと解っていて、何故拓海はこんな風に言うのだろうか?
涼介には、拓海の言わんとするコトが解らなかった。
「…でも…涼介さんが諦めても……俺は、涼介さんを諦めません。」
拓海はそう言って、またギュッと涼介を抱きしめた。
「拓海…いったい…」
一体、何を言っているんだ?と思いながら、涼介は強烈に知りたいと思った。拓海の気持ちを。本当の気持ちを。
「やっと…名前、呼んでくれた。」
再び拓海の名を呼んだ涼介を抱きしめていた腕を解いて、拓海は涼介の眼前でフワリと微笑んだ。
その微笑みに惹きつけられるように、涼介は唇を寄せる。ゆっくりと、拓海もそのキスを受け止めた。
触れるだけの口づけとも、奪うだけの口づけとも違う。多分、2人で初めて交わす種類の口づけだ。───吐息を交換するような・・・そんなキス。
「涼介さん、解ってない。俺だって普通の男なんだから、こーいうの興味ありますよ。涼介さんに触れたいと、思ってた。」
「じゃあ、何故抱かせなかった?俺は誘っただろう?…何度も。」
気づかなかったなんて言わせないという思いも露わに、涼介は拓海に尋ねた。
「それは……やっぱ、自信…ないし…」
「拓海?」
思いも寄らぬ返答に、涼介は拓海の頬を包んでその顔を覗き込んだ。拓海はかぁっと真っ赤になって、それでも涼介と視線を交わす。
「だって…涼介さんは格好良くて、頭も良くて、何でも出来て…とにかくスゴイけど、俺はそーじゃないし。…それに…」
言いにくそうに拓海は顔を伏せて、涼介の胸の中に埋めてしまった。
「それに…こーいうのは、…やっぱ女の人の方がイイだろうから…。もういいやって思われたら、俺、どーしようって……」
「……それだけ?そんな事が理由?」
「そんなことって!…涼介さんには、解んないっすよ!」
これだけ言っても解ってくれない涼介に多少腹をたてて、拓海はぷいっとそっぽ向いた。その顔を、涼介は両手で頬を包んでもう1度自分と向き合わさせる。真剣な瞳で、探るように拓海を見つめる涼介の目に、拓海はハッとした。
「それだけ?さっき怯えてた。俺の腕に中で、あんなに震えてただろう?ホントは恐いんじゃないのか?俺に触れられるのが……嫌なんじゃないのか?」
「さっ…さっきのは涼介さんが悪いです!!むっちゃ恐かったっすよ、マジで。」
その言葉に、涼介は否定の言葉もない。そりゃ、そーである。
「……じゃあ…」
やっぱり結局ダメなんじゃないかっ…と、涼介は天国と地獄を何度も往復しているような気分になった。
複雑な顔で黙り込み、何やら考え込みはじめた涼介に、拓海はコトリと首を傾げた。
「涼介さん……まだ・・・その、俺と…?」
「抱きたい。」
拓海の問いかけに間髪入れずに答えて、涼介は拓海をぎゅっと抱きしめた。
急に強い力で上から抱きしめられて、拓海はもぞもぞと苦しそうに上に伸び上がる。でも涼介は力を緩めなかった。離すものかと、いうように。
「……じゃあ……2つ、約束してくれますか?」
「何?拓海…俺はどうすればいい?約束すれば、もう恐くない?」
「うっ……んと、恐くないと…思うんすけど…」
押し迫るような涼介の迫力に、拓海は戸惑いながら答えた。こんなに余裕のない涼介の姿は初めてで、驚いているだけなのだが・・・。
「何?言ってくれ…拓海。」
涼介は請うように拓海を見つめた。その瞳に、拓海は戸惑う。
自分の言う約束はそんなに大層なモノではない。拓海はほんの口約束程度のつもりなのだが涼介はすごく真剣で、悪い事言ったかな?と戸惑わずには居られない。
だが、しかし、拓海から言い出した事であるから、言わないワケにもいかなくて・・・。
「その……キライに…ならない…ですか?俺の事。」
「は?」
「だから!…しても、キライにならないって…約束…ダメ…ですか?こーいうの。ズルイかなぁ、やっぱり。」
照れくさそうにそう言って、最後には唇を尖らせてしまった拓海に、涼介は脱力した。
「拓海・・・それは、言われるまでもない事だ。」
余りにも信用ないのは、信じて貰えない自分が悪いのだろうか?
でも拓海もちょっとヒドイ!と涼介は思ってしまった。もちろん、絶対言わないけれど。言ったら折角のチャンスが台無しだ。
涼介はちゅっと1回、拓海にキスをした。そして、微笑む。心から、嬉しくて。
拓海の約束は自分の方がしてほしいくらいの約束なのだから・・・。
「約束する。絶対、大丈夫。俺は拓海が好きなんだ。誰よりも…」
愛してるよと囁いて、涼介は拓海を抱きしめた。
「・・・もう1つは?拓海?」
そのまま耳元で、涼介は問いかけた。拓海が持ち出す約束は2つ。あと1つは何なのか?今ならきっと何でも出来ると、涼介は思った。
こしょこしょと、恥ずかしそうに、拓海は涼介の耳元で『もう1つの約束』を囁いた。驚いて顔を合わせた涼介に、「ダメですか?そーいうの?」と首を傾げる。
この時、初めて、涼介は気づいた。さっき拓海が震えて泣いた、本当の理由に。
───失態だった。当たり前の事なのに。
「すまなかった、拓海。俺が悪かった。……約束するよ。絶対、約束するから。」
さっきはどんなに恐かっただろう?
拓海の気持ちを思うと、自分の馬鹿さ加減に腹がたった。そして、それでも今、自分の腕の中にいてくれる拓海が、堪らないほど愛おしいと思う。
抱きしめた躰を、涼介はゆっくりと横たえた。
「どっちも約束する。だから、拓海も1つ、約束してくれ。」
そう言って、誓いのキスのように眉間に口づけた涼介に、拓海は瞳を瞬いた。
「俺は全然スゴくなんかないし、拓海も何も出来ない人間じゃない。だからもう、そんな風には言わないでくれ。他の誰に言われても気にならないけど、拓海に違うと言われると俺は傷つく。すごく辛いんだ。」
「涼介さん…」
「俺達は対等だ。そうだろう?」
涼介の言葉に一瞬呆けて、拓海は嬉しそうに笑った。
涼介もその顔に微笑んだ。
「・・・俺も、約束します。」
拓海の返事のすぐ後に、2人の唇が柔らかく重なった。
そして、その他の全てが重なるまでに、そう時間はかからなかった。
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