【『切ない』ということ】 P10 (涼X拓)
その頃、涼介の部屋に移動してきた拓海は・・・というと、ベッドに座らされて、カチコチに固まっていた。
その様に、隣に座った涼介は、クックッと楽しげに笑う。
拓海はまた、ギロリと恨めしげに涼介を睨んだ。
「〜〜笑うなんて、ヒドイです!涼介さん・・・オレだって・・その、真剣なのに〜」
「ゴメンゴメン・・・。でも、あんまり固まってるものだから。」
・・・目に涙まで溜めて笑ってるよ、この人・・・やっぱり意地悪だ。
「もー、知りません。」
ぷいっと拓海は顔を逸らした。
そんな拓海を涼介は抱き寄せた。
「からかってるワケじゃないんだ。」
慰めるように……というより、あやすように、拓海の耳元へキスをすると、ギュッと胸元にその頭を抱き寄せる。
「り・・涼介さん?!」
「聞こえるだろ?」
何が?と思ったけど、すぐに分かった。耳のすぐ側で聞こえたからだ。
───すごく速い、心臓の鼓動。
「実は俺も緊張してるんだ。」
小さく笑みながら、涼介はそう言った。
自分と同じくらい速く刻まれるその鼓動を、拓海は涼介の胸に頭を付けながら、しばらく目を瞑って聞いていた。
ずれていた2人の鼓動が、少しずつ近づいて、やがて同じリズムを刻むまで。
涼介は、大人しくなった拓海の好きにさせていた。
そっと、柔らかい拓海の髪を指先で弄びながら。
しばらくして、クスリと拓海が小さな声をたてて笑った。
涼介を見上げて、
「同じですね。」
そう言って鮮やかに、拓海は笑った。
涼介は何も答えずに、口元に笑みを浮かべると、拓海の頬を両手で包んだ。
「拓海・・・キスしてイイか?」
涼介のその問いに、頬を染めながら拓海は小さく頷いた。
初めは、前髪に。触れるように軽くキス。
そして、次は頬。今度は少しだけしっとりと。
そこで1度見つめ合って・・・2人はどちらからともなくゆっくりと唇を重ねた。
「・・・んっ・・・」
触れ合う唇は、柔らかくて温かくて、涼介は貪るように口づけを深めていく。
酸素を求めて、拓海が苦しげに呻くまで。
そっと唇を少し離すと、拓海が肩に込めていた力を抜いて大きく息をする。
その間も、涼介は口角に何度も小さなキスを落とした。
まるで口づけに酔ったように、ポーっとなった拓海に、涼介は微笑んだ。
そして、耳元に口を寄せて、
「拓海・・・キスの先も・・イイ?」
今、こんな事を尋くのはかなりズルイ。大人ならではの狡さである。
そんな事は涼介だって解っていたけれど、もう逃がさないと決めたから。
拓海はしばらく何を言われたか解らなかった。この辺り、とても拓海らしい。
だが、理解した途端、ユデダコみたいに赤くなった。
オロオロと、左右に視線を彷徨わせる。
「拓海?」
そんな拓海の頬を、もう1度、涼介は両手で包み込んだ。
「あの・・・オレ・・・その」
「・・・ダメか?」
言いながら、涼介は拓海にキスを仕掛けて、その勢いのまま拓海を押し倒してしまう。
「あっ・・・ん・・」
意識を奪われそうな、激しいキス。拓海は顔を振ってそれを逃れた。
「・・・何か、もうその体制みたいなんですケド・・・」
拓海のそのセリフに、涼介はフッと笑った。
「イヤか?・・・今ならまだ止められるけど?・・・」
・・・つまり、コレが最後通達。それくらいは拓海にも解った。
じっと拓海は上目遣いに涼介を見上げた。
「・・・涼介さんは良いんですか?」
「え?」
「・・・だから、その・・・オレでいいんですか?オレ・・女の子じゃないし、その・・・体だって柔らかくないし・・・」
つまんないかも・・・と続ける拓海の口を、涼介はキスで塞いだ。
すぐに唇を解放して、涼介はもう1度拓海の目を覗き込む。
「抱いてもイイか?」
今度はハッキリそう言った。
拓海は真っ赤になった顔のまま俯くと、コクンと小さく頷いて、
「・・・せめて、電気は消して下さい。」
小さな声でそう呟いた。
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