【泣きたい夜に抱きしめて】 P8 (啓X拓)

「け…すけさん?」
「大丈夫か?ちょい苦しかったんじゃねぇ?」
 動きを止めてしまった啓介に、拓海は不思議そうに首を傾げた。何だかねだっているようにも見えるその仕草に啓介のモノがまたズクリと成長を遂げる。
「あっ……っふ!」
 それを体内でダイレクトに感じて、拓海は思わず声を上げてしまった。甘さを含む自分の声に拓海はかーっと真っ赤になって、腕を交差させてその顔を隠すようにしてしまう。

「大丈夫…みてーだな?感じたんだろ、今?」
 声に笑いを含ませながら、啓介は交差した拓海の腕に口付けるとグイッと強引にその腕を開かせて指を絡めた。
「啓介さんっ!!そーいうコト言わな…っ…ん…」
 文句を言ってくる唇を啓介は自分のそれで塞いだ。そのまま、激しく舌を絡めてディープキスに持ち込むと、絡めている拓海の指から少しずつ力が抜けていく。

 思う様、口腔を探って唇を離し、啓介は最後にふっくらとした下唇を軽く甘噛した。
「…ぁん……けーすけさっ……」
拓海はもうすっかりキスに酔ったようになって、離れていく唇を追うようにすこし舌を覗かせて啓介を呼ぶ。
啓介はその姿に嬉しそうに笑って、今度は何度も優しいキスを落としてやった。
「ん…ふぅ……」
拓海が満足したように溜息をつくと、絡めていた指を離してその腰を強く抱き締めた。
・・・優しくしてやれんのもここまで・・・だな。

 気付かないウチにセーブできない状態になっている自分に苦笑しながら、啓介は拓海の足をもう1度抱え直した。
そして拓海がその状態に気付く前に、腰を激しく打ち付け始める。
「ああっ!…や、…っいたっ!…あぅ」
先程まで、夢見るように啓介の腕の中でとろけていた拓海は、急な動きに何が起こったのか解らない。ただ、イキナリ訪れた痛みに悲鳴を上げた。

「悪ぃ…拓海。俺、酷くしちまうかもしれねぇ・・・」
 ホントは最後まで優しくしたかったのに…という言葉は隠して、啓介は苦い声でそう言った。その声に、拓海は現実に立ち戻る。どこか霞んでいた拓海の瞳が、ハッキリとした色を湛えて啓介を見た。
「何か……溺れちまいそーだ。」
 額に汗をかいて何かを渇望しているような表情で言う啓介に、拓海は微笑んだ。そして、自分から腕を伸ばして啓介の頭を抱き寄せる。
「…いいっすよ?溺れても……。」
俺、平気だから…と囁いて、拓海はギュッと啓介の首を抱き締めた。
この体制でそれをするのは辛いハズなのに。

───今、この時だけは、自分に溺れて全て忘れてしまえばいい。
 そう思いながら、拓海は啓介を抱きしめた。
今の啓介には、慰めの言葉よりも、ただ、温もりが必要なのだ。
それならば、自分でも啓介にあげられる。いつも、彼からもらっているモノを返せばいいだけなのだから。

「・・・優しーな、お前。」
 じんわりと伝わってくる拓海の温もりとその気持ちに、啓介は不思議な気分になった。
 すごく悲しくて寂しくなっている時に家の灯りを見た時のように、嬉しいのに切なくて泣きたくなるような………そんな気持ちだ。
 何も訊かず、ただ自分を受け入れようとしてくれる拓海を軽く抱き返して、啓介は苦笑した。
そして、またグッと拓海の中に押し入ると、その後は名前だけを何度も呼んで拓海の中へと溺れていったのである。

・・・あーあ。俺ってしょーがねぇ。

 結局、優しくなりきれずに、最後は振り回すように抱いてしまった。
ぐったりと意識を失っている拓海の顔色がいつもより白い気がして、啓介は深く溜息をつく。

・・・息使いは辛そうじゃねーし・・・大丈夫だとは思うけど・・・

 啓介が右手を拓海の口元にかざして様子を伺っていると、拓海がゆっくりと瞼を開けた。
どうやら、眠りは浅かったらしい。拓海はすぐに焦点を合わせて啓介の姿を捕らえてきた。
「拓海…わる…っ!」
 きつく愛してしまった事を謝ろうと啓介が口を開くと、今度は拓海が口づけで啓介の言葉を遮ってしまう。
拓海の場合は、触れるだけの羽のようなキスだ。
でも、啓介を黙らせる威力は他の何をも圧倒するシロモノなのである。

 すぐに離れて、拓海はじっと啓介を見つめた。
「謝んないで下さいよ…」
むすっと拗ねたようにそう言ってくる。
「た…拓海?」
 機嫌を損ねたか?と焦る啓介に拓海はギュッと抱きついた。腕には全然力が入らないけど、それでもいい。
「後悔されてるみたいで…イヤなんです。」
 顔を見せずにボソッと呟く拓海に、啓介はそれもそうか、と思う。
そして、『ゴメン』と今度は自分の失言を詫びて、啓介は抱きつく拓海を強引に離した。
「!」
 驚く拓海の身体を、今度は啓介が抱き締める。
まるで、腕の中に隠してしまうかの様に、深く深く・・・。
「拓海がくっついてくれるっつーのも悪かねぇけど、やっぱ俺は抱きつかれるより、こうする方が性に合うぜ。」
 そう言って、啓介はニカッと笑って拓海に顔を寄せてくる。
拓海もクスッと小さく笑って、降りてくる唇に合わせてそっとその瞳を閉じた。

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