【愛しさと切なさと】 P3 (啓X拓)  すっごく書きたいシーンがあるのさ。…ふふふ


 (SCENE2 偽物の恋)

 最近、啓介のイライラは募るばかりであった。
顔を合わす機会の少ない以前はそうでもなかったのだが、ProjectDも準備期間に入り、最近では頻繁に拓海と顔を合わす。
 逢えるのが嬉しくないわけでは、もちろんないし、啓介だって彼と一緒に走りたいと思っている。だが、それだけではいられないのだ。

 拓海は、啓介の兄でありチームリーダーでもある涼介に対して、緊張は取れないものの朗らかな笑顔を見せる。信頼に満ちた瞳で見上げるその姿を見ると、啓介は無償にイライラするのだ。
 対して、啓介には、山猫みたいに毛を逆立てているように思える。すぐからかいや挑発の言葉を述べてしまう啓介にも原因はあるのだが・・・。
 拓海が負けまいと背伸びしているのが解る。挑戦的な瞳でじっと見つめてくる。

そんなでも、好きなのだ。彼を。…自分でも不思議なほどマイってしまっている。

 啓介は自分の気持ちが、もうかなり崖っぷちまで来ていることを自覚していた。

「・・・やっべぇって。コレ…。」
 拓海と似た雰囲気の女と気まぐれにつきあい、何とか自分をごまかしてみようと試みても、結果は芳しくない。
「啓介。……遊ぶな、なんて野暮を言う気はないが…女でこじれるような真似すんなよ?」
「うるせーなぁ。そんなダセェ真似しねーよ。ガキじゃねーんだから。」
「・・・まぁ、どうでもいいが。」
 ガキじゃないの一言に苦笑しながら歩を進めて、涼介はふと足を止めて啓介を振り向いた。
「・・・でも、お前、イミテーションで満足なのか?」
 流石に男に惚れたなんて言いにくくて、啓介は涼介には何も相談していないのだが、フッとシニカルに笑いながら言う兄は、きっと何もかもお見通しなのだろう。
「・・・・な、…何言ってんだよ。意味わっかんねーぜ?」
 目を逸らしての返答には、きっと説得力なんて全然無い。

『イミテーション』
 その言葉にドキリとした。
確かにそうだ。行きずりに手に入れたそれは、どれも本当に自分が求めているモノではない。
 似て非なる者と解っていて、それでも傍に置く。その行為は、結局、全く違うのだということを、自分が求めているのは彼だけなのだと、嫌になるほどに思い知るだけ。
その繰り返しに、啓介のやりきれなさは増すばかりだった。
 それを、きっと聡い兄には見透かされているのだろう。

 啓介はギリリと唇を噛んで、涼介から顔を逸らせた。
「俺・・・そんなに態度に出てるかな?アニキ」
「…まぁな。もっとも、アイツがどこまで気付いてるかは知らないが・・・変だとは思ってるだろうな。」
 時々、心配そうに啓介を見ている拓海を思い出して、涼介は小さな笑みを浮かべた。
(・・・こいつら、どっちもどっちだな。ちょっと話すればすむ事だろうに。)
 なんて不器用な2人だろう。でも、涼介にとっては、どちらも可愛い存在である。

 黙り込んでしまった啓介に、涼介は溜息をつくと
「啓介。…あいつもお前もウチの大事なドライバーだ。それだけは忘れるな」
と言い残して、啓介の部屋を後にした。

★☆★☆★

そんなある日の夜のこと。

ガサッ

 車を止めての長い待ち時間に、ちょっと休憩しようと自販機へ向かった拓海は、その近くの壁際に立つカップルにふと目をやって、その瞳を大きく瞠った。
「──────ッ!!!!!」

 驚きで、声が出なかった。
そぼカップルの片割れは、自分の良く知る人物。もう一人のDのドライバー。
何よりも、今、自分の心に不安の影を落としている張本人。高橋啓介だったのだから。

 彼らがただそこに居ただけなら、こんなに驚きはしなかっただろう。でも、彼らは口づけを交わしていたのだ。
別に、啓介に彼女が居ても、不思議なわけじゃない。男の自分から見ても、文句無しも男前だ。
 でも、まさかこの場所で、こんな彼の姿を見ることになるなんて・・・。

 拓海は、言葉もなく、呆然としたまま、2人をただ見ていた。全身が石にでもなったように固まってしまって、立ち去ることも出来なかった。

 そんな拓海の目の前で、2人はゆっくりと口づけを解いた。その瞬間、拓海はズッと一歩、下がってしまい、微かな音に啓介が反射的に顔を上げた。
 何気なく上げた視線の先に、1番見られたくない相手を見つけて、啓介の顔も驚愕に彩られる。
(───ッ藤原!何故、こんなトコに…)
 こんなトコも何も、ココは峠だ。ドライバーである拓海が居ることに、何の不思議もありはしない。
 啓介はすぐに驚きの表情を、普段の不敵な表情に戻して、キツイ瞳を真っ直ぐに拓海に向けた。

「・・・お前なぁ、こーいう時は遠慮しねぇ?普通。」
「───ッ!…あ、あのッ、す…すいませんっ!」
 啓介に声を掛けられて初めて、己の間抜けぶりに気づいた拓海は、カァッと、それこそ夜目にも分かる程に頬を染めた。
 急いで立ち去ろうとした拓海の手を素早く動いた啓介が捕らえる。ククッと可笑しそうな笑い声が、動転している拓海の耳にも届いた。


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