【愛しさと切なさと】 P4 (啓X拓) すっごく書きたいシーンがあるのさ。…ふふふ
「ちょっとねぇ!何してんのよ?早くイイトコ行きましょうよ〜」
さっきまで自分の目の前にいた極上の男が、突然離れて、一人の青年に腕を掴んでいる姿を目にして、先程啓介と口づけていた女が声を掛けた。
相手は、男。多分、同じチームの人間だろう。何も警戒する必要はないハズだ。
そう、頭では理解していても、女は内心で焦っていた。女の勘というヤツだ。
理屈なんかじゃなく、本能で感じたのだ。男の意識に中に、既に自分の存在が無くなってしまっている事を。突然現れた年若い青年に、一瞬で奪われたのだと。
それは、女のプライドをかけても、認めるわけにはいかない事だった。
「うるせぇ!気が変わったんだよ。勝手にドコでも行けよ。」
何とか男の気も自分に戻そうとした女の一言に、啓介はそっけない一言を返した。
あからさまに、もうお前には用はないんだという態度で。
いっそ冷たい程のセリフに、当然のことながら激怒した。
「なッ!…な、なによぉ、それぇ!ココまでしといて、ふざけんじゃナイわよっ!あんたみたいなの、こっちだってお断りなんだからッ!!!」
甲高い声で叫ぶと、その女は乱入した拓海を絞め殺さんばかりの勢いで睨んでから、もの凄い勢いでその横を荒々しく通り過ぎていった。
「フン。……台風一過てトコか?藤原。」
まだ、ぼうっとしている拓海にニヤリと笑って言うと、啓介は煙草に火を付けた。
まるで、今の一連の出来事に、自分は無関係だと言わんばかりに、何時も通りの仕種で。
「・・・すいません、俺……邪魔しちまって……あ、あの…。」
オロオロと狼狽えながら、拓海は所在なげに佇んでいた。
やりたくないけれど、どう考えても邪魔をしたのは自分なのだから、彼女を追って謝罪すべきなのだろうか?という拓海の迷いを見透かしたように、啓介はもう1度フンッと鼻を鳴らした。
「別にいいさ。女はアイツだけじゃねーし。…大体、俺、あの女の名前も知らねーっての。」
「・・・・・」
啓介の言葉に、拓海はじぃっとモノ言いたげな視線を向けた。その瞳には、明らかに非難の色が浮かんでいる。
「何だよ。」
「何がっすか?」
「『何か』があんのはお前の方だろ?言いたいコトあんだろーが・・・。言えよ。んな目で睨んでないでさぁ。」
「・・・すか?」
「え?」
拓海の声は小さくて、聞き取れなかった啓介はもう1度促した。
「名前も知らない・・・なんて……、啓介さんにとって…キスって、そんな簡単なモンなんスか?…そりゃあ」、邪魔しちゃったのは俺だけど・・・でも、あんなのヒドイと思います、俺。」
彼女が立ち去った方向に、拓海は切なそうな視線を放った。
「簡単だろ?キスなんて。」
ややささくれだっていた啓介にとって、この言葉がもたらした影響は大きかった。
軽いセリフには似合わないキツイ表情で、啓介は告げた。喉の奥から絞り出した声のように、深い声音だった。
妬いて邪魔してくれたのなら、良かったのに。それなら万々歳だったのに。
・・・でも、拓海の言葉は、どう聞いても自分を責める言葉。見知らぬ女を、庇うものだった。
苛立つ気持ちは、啓介が今まで、精一杯の力で自分の中に押し込めようとしていた感情を、あっという間に引き出してしまった。
それも、とても凶暴なほどの、勢いで。
ガチンッと、自分の中にあった箍が外れた音を、啓介は聞いたような気がした。
そんな音が聞こえるはずなどないのに、確かに音として認識したような気がした。
───そして、その音が、合図になった。
「───痛ッ!…なっ……やッ!啓介さん!な…に……んッ!!!」
ダンッと、目の前の男が1歩を踏み出した時、拓海は反射的に1歩下がった。
なのに、男との距離は大きく縮まり、気が付いたらその腕に拓海は捕らえられていた。
乱暴に、折れそうなほどの強さで腕を掴み上げられた拓海は、その腕の主を睨みつけようとした。だが、思わぬほど近くに啓介の顔を見つけ、拓海の視線は勢いを失った。
余りにも、真剣な…いや、恐ろしいほど鋭い、啓介の瞳。本能的に、危険だと感じた。
拓海は腕を突っ張って、啓介から距離を取ろうとした。だが、啓介の腕の力は、今まで拓海が知っていた彼のものではなく、どうしたのか?と尋ねようとしたところで、啓介の唇にソレを止められてしまったのだ。
「───ンッ!!!!!」
驚愕に、拓海は瞳を瞠った。今、起きていることが、とても信じられない。
あまりに近すぎて、啓介の輪郭がぼやけて見える。
(キス・・・・されてる?!)
そんなバカなこと、あるハズがない。だって、自分と啓介は、そんな関係じゃない。ダブルエースとして同じチームで走る、誰よりも手強いライバル。
こんな行為の、対象であるはずなどないのに…。
「───ふ……ん、ンぅッ…ヤだ……ッ!」
息苦しさに、背を反って離して、拓海は抵抗を再開した。だが、拓海の力では、啓介の腕を放すことなど出来はしない。
逆に、ふと洩らした抗議のために開いた口を割って、啓介の下が縦横無尽に拓海の口腔を暴れ回った。まさぐるなんて可愛いものではなく、まさに『暴れる』と言うに相応しい、荒っぽい口づけだった。
拓海の抵抗する力がなくなり、酸素不足の為か、はたまた怒り故か、ブルブルと細い肢体が震えるまで、啓介は拓海を離さなかった。
そうして、ようやく解放された時、拓海はもう立っても居られず、啓介の前でペタンと座り込んでしまった。
「・・・な?簡単だろう?…キスなんてのは、さ。」
啓介はしばらく黙って拓海を見ていたが、やがて、そんな一言を残して、手も貸さずに立ち去っていった。
しばらくして、拓海はノロノロと自力で立ち上がった。そして、まだ痺れているように感じられる唇を、右手の甲でゴシゴシと拭う。
そのままギュッと唇を噛みしめて、胸の中にある重苦しい気持ちを堪えた。
強引な口づけから感じられたのは、啓介の強い苛立ち。
───怒らせた?
・・・そりゃ、そうだ。いいところを邪魔してしまったのだから。
「でも・・・だって。あんなトコでしてっからだろう?啓介さんが悪いんじゃねーかッ!」
文句を言いながら、拓海は固く目を瞑った。
本当は違う。そうじゃない。重苦しいのは、啓介が怒っているせいじゃない。
解っている。・・・解ってしまった。
───イヤだったのだ。
自分がキスされたことではなく、啓介が見知らぬ女と口づけていた事が、ショック
で・・・すごくイヤだったのだ。そんなこと言う権利なんて自分にはないのに。
「ちくしょう……何なんだよ、コレ…」
Tシャツの胸元を、ギュッと握って、拓海は一筋の涙をこぼしていた。
<<NEXT SCENE 3 涼介の作戦 >>
・・・いや、ゴメンなさい。2001年最後に、私、喧嘩売ってます?
一応、啓X拓なんです。・・・し、信じてくださいませーッ!(>_<)
<< BACK NEXT
>>
|