【幸せな夜、お寝坊な朝】 P8 涼X拓! 涼子姉ちゃん、6000Hitアリガトウです!

「…そういうワケじゃ、ないですけど…こんなん、貰えませんよ。俺…」
 困った顔をした拓海に、涼介も眉を曇らせる。
「どうして?気に入らないワケじゃないんだろ?」
涼介に悲しげな顔をされて、拓海はうっ…と言葉に詰まった。
「……だって…高価いんでしょう?コレ?…そんなん、貰えないっすよ。俺、何も返せないし。今日だって何も持ってきていないし…」
パーティーには何も持ってこなくていいと聞かされていたので、バカ正直に何も持たずに来たのだ。
「そんな事、気にしなくていいさ。俺は拓海に貰ってほしいだけだから。」
「…そんな事じゃないです!大事な事ですよ?…やっぱりそういうの、イヤですよ。…俺、涼介さんとは…生意気かもしれないけど、対等でいたい。」
 拗ねたように、拓海は唇を噛んでフイッと横を向いた。
別に、涼介が金にモノを言わしてると思ってるわけではないけれど、何かしてあげたいのに、何もできない自分が悔しかった。
 拓海が喜ぶモノと思いこんでいた涼介は、その拓海の返事に苦笑した。

───ほんの少し、気持ちがすれ違っている。
お互いを想う気持ちはきっと同じはずなのに。

「ゴメン。別に拓海をバカにしてるんじゃないんだ。だから、そんな風に怒らないでくれ。」
「怒ってなんか、いないけど・・・」
 困った顔で言う涼介を、拓海は見上げた。いつもボーッとドコか遠くを見ている視線は今はキツク吊り上げられて、涼介を見つめている。でも、どこか潤んでるようにも見えるその瞳に、涼介は苦笑した。
「ホントにゴメン。でも、見返りが欲しくてやってるわけじゃないんだ。俺があげたいって思っただけだから、気にしないでくれ。それに、拓海からはいつも山ほど、大切なモノ貰ってるんだ。拓海は気づいてないけど…。」
「気になります!とにかく、こんなん貰えないです。」
 相変わらず拓海は頑固者である。こういう拓海の気の強い一面も涼介の愛するトコロではあるのだが・・・・。
「それは困る。これは拓海の為に用意したんだから。」
 俺は1つ同じモノを持っているし…と、涼介も珍しく譲らなかった。
「…じゃ、啓介さんにでも…」
「拓海…。俺が拓海の為に用意したモノをアイツが使うと思うか?…それに、啓介は身につけるモノの趣味にはアレでも結構煩いんだ。俺が用意したものなんて、まず間違いなく身につけないよ。」
 涼介のその言葉に、今度は拓海が困った顔をした。
嬉しくないワケじゃないけど、やっぱり物を貰ったりするのは何か違う気がする。

「拓海の気持ちを無視して、もうこんな真似はしないから。…今回は受け取ってくれないか?」
 拓海は既に渉からのプレゼントを受け取っている。拓海はクリスマスプレゼントだとは思っていないようだけど。
───だから、余計、涼介は意地になっていた。
 心が狭いと言われようと、面白くない物は面白くない。渉の物はよくて自分のは受け取れないなんて言われると、ハッキリ言って何しでかすか自分でも解らなかった。
涼介は、ホントはいつだって拓海を独占していたいのだ。

 涼介の言葉に、拓海も迷っているようだ。困ったような顔で、スリスリと手で涼介が贈ったマフラーを何度もさすっていた。後1押しというところである。
「どうしても、納得できない?……じゃあ、拓海に代わりの物を貰おう。」
「え?」
 涼介の言葉に、拓海は驚いて顔を上げた。代わりの物と言われても、拓海は何も持っていないし、何を上げればよいのか解らない。ますます困った顔をした拓海に、涼介は苦笑した。

「別に…物をくれって言うんじゃないよ。…そうだな、1つだけ、お願いを聞いて貰えないか?拓海が俺のためにしてくれる事なら何でも嬉しいけど、今は凄く欲しいモノがあるんだ。」
「物じゃないけど、欲しいモノ?」
 何のことだか、拓海にはさっぱり解らない。
「そう。……拓海の時間だ。今日は、ホントはこのまま送るつもりだったけど、こんな気分のまま帰したくないな。…オールナイトの映画でも何でもいいから、今夜は俺と居てくれないか?」
 これは拓海にとっては無理難題だろう。明日の配達をサボれと言っているのだ。
でも拓海だって自分を困らせたから、ほんの少し意趣返し。拓海がダメだと言えば、あっさり引くつもりだった。

 拓海は又むうっと唇を尖らせた。
「そんなん…全然代わりにならないじゃないっすか。」
「そんなことないさ。…それは拓海じゃなくて俺が決めることだ。…ダメか?」
 もう1度訊いた涼介の胸に、拓海はいきなり飛び込んだ。
「た、拓海?」
 ちゃっかり受け止めながら、涼介は胸に埋められた拓海の顔を見下ろした。顔は見えなかったけど、見えた耳は真っ赤に染まっている。
「…ホントに、全然代わりになんかならないっすよ。…だって、今日は初めから…そのつもりだったんだから…。」
「え?」
 真っ赤な顔を上げて、拓海は涼介を見上げた。キッと睨んだ瞳はきっと照れ隠しだ。
「〜涼介さん、今日は一緒に居ようって。…パーティーするって言う前から約束してたじゃないっすか!」
 確かに、初めは2人きりで過ごそうと言っていた。でもパーティーを決めた時に反古になったと涼介は思っていた。
つまり、涼介にとっては、これは思ってもみなかったクリスマスプレゼントなのである。
「…拓海。ホントに今日は帰らなくていいのか?…親父さんにも言ってある?」
 ぎゅっと自分の頬をつねって確かめたいと思っていたら、拓海がつねってきた。もちろん軽く…だけれど。
「……そんなん、何度も訊かないで下さいっ。…もう!」
 真っ赤な顔して、拓海は怒ったように言った。でも照れてるだけなのは涼介にも解っていた。

「拓海……抱きしめてイイか?」
 実はまだ店先に居るのだけれど、店のカーテンはもう閉められている。駐車場も誰もいない。2人を見てるのは皓々と輝く月と、拓海の横で可愛い光を放っているクリスマスツリーくらいである。
 涼介の嬉しそうな笑顔に拓海は言葉を詰まらせた。ややあって、何とか返事を返す。
「……い、イイですけど、…って…うわ…」
ココでですか?と聞かれる前に、涼介は拓海をぎゅっと抱きしめた。

 そして、調子にのった涼介は、一言拓海の耳元で囁いた。
「明日はマフラーで隠せばいいし、今日は痕、つけてもいい?」
 その言葉をぐるぐると頭で吟味して、拓海はそれこそ沸騰しそうな程真っ赤になった。今度は素直に「イイです」とは言えなかったけれども、拓海はコクリと小さく頷いた。

───そして、これからが2人だけのクリスマスの夜である。
(ピピーッ!『ココは表のお部屋だぞ』カードを兄に突きつけました。(笑)
 と言うことで、皆様、この後は自分で考えてね(^-^)よろしく〜!)

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