【幸せな夜、お寝坊な朝】 P5 涼X拓! 涼子姉ちゃん、6000Hitアリガトウです!

「何の話だ?」
 そこに涼介が戻ってきた。流石に、拓海の好みそうなモノばかり、キレイに皿に盛りつけてきている。この短時間に見事なモノだった。
「あっ…す、すいません。有り難うございますっ…。」
 音もなくその皿を自分の前に置かれて、拓海は慌てて礼を述べた。
「いや。気にしなくていい。…ほら、食べろよ。冷めるぞ?」
 ニコリと微笑んで、涼介は拓海へ食べるように促した。
「はいっ。頂きます。」
 別段気にした風でなく涼介が笑ってくれたので、拓海は嬉しそうな笑顔を返して有り難く頂くことにした。実は、結構お腹が空いていたのである。

「アニキ!聞いてくれよ!こいつ、碓氷でバトルしたんだってよ!…ったく、そういう面白い情報は廻せよなぁー!、絶対見に行ったのに!」
「本当なのか?藤原?」
 涼介に尋ねられて、口に食べ物を入れている拓海はコクコクと頷くことで返事をした。
「そうか…。それは見逃して残念だったな。」
 苦笑して言った涼介の言葉に、賛同した数多くの者は頷いた。だが当の拓海は『はい?』という風に首を傾げている。何故残念なのか、そこが解っていないのだ。

「藤原はどのくらい他の峠を走ってんだ?秋名でも余り見かけないけど…」
 よう!と手を挙げて挨拶して中里が声をかけてきた。隣には慎吾が居る。仲悪いと言いつつ、何故一緒にいるのだろうか?
「中里さん…こんばんは。…っと。」
 中里に挨拶して、隣に居る慎吾に気付いた拓海はムッとした顔でじーっと慎吾を見た。
「…オイオイ、そんなコワイ顔するなよ、あんときゃ悪かった。謝るから、勘弁してくれ。」
 拓海に睨まれて、困った慎吾は詫びを入れた。意外と素直なその態度に拓海もアレ?っと戸惑ってしまう。
「拓海…もう、許してやれよ。コイツ、ちゃんと俺にも謝ったし、お前のことも褒めてたんだぜ?スゴイ奴だって。…な?勘弁してやれよ。」
 池谷はそう言って拓海の頭にポンと手を置いた。
「何よ、慎吾。あんた、拓海くんに絡んだのー?バッカねー、勝てるワケないじゃん。ケチョンケチョンにやられたんでしょ?」
「ウルセーよ、沙雪!お前、関係ねぇだろーが。」
「拓海くん、コイツ、いけ好かないトコあるけど、根は悪くないいんだよ。許してやってよ、ね?」
 沙雪にまでそう言われて、拓海はもう1度、慎吾をちろりと見た。
「うっ…悪かったよ。…もうしねぇって……」
 真っ直ぐ当てられる視線が居心地悪くて、慎吾はつい目を逸らしてしまった。だが、拓海にはどうやら伝わったらしい。
「……まぁ、…もう、済んだことだし。いいっすけど。」
 とりあえず許しを貰えて、慎吾はハァーと肩の力を抜いた。

「……で、どうなんだ?藤原。」
 どうやら一段落ついたな…と見越して、中里がもう1度尋ねた。拓海のことが知りたくてしょうがないのだ。何せ、こまめに秋名に顔を出してるのに会えた例しは1度も無い。
「え…碓氷と妙義とー…うーん、そうっすねー…4、5回くらいかなぁ?樹?」
 指折り数えて樹に問いかけつつ、拓海はそう答えた。
「えーっ!ご、5回?……たったそんだけなのぉー?」
「…もしかして、私達と走ったのが初めて?」
沙雪と真子が驚いた顔でそう尋ねた。
「はあ、まあ。俺、走り屋じゃなかったし…別に用もないのに余所の峠なんか行かないし……。」
キョトンとしてそう言った拓海に全員開いた口が塞がらなかったが、涼介は口を挟んだ。
「走り屋じゃなかった…ていうのは?過去形ってコトはこれからなるってコトか?」
 拓海を新チームに誘ったものの、涼介はまだ明確な返事は貰っていない。
だから、今の一言は自分の誘いに乗るということだろうか?と期待していた。
「え?…あ、あの、最近、走るの面白いし…やってみようかと……」
「それは、俺の誘いを受けてくれると思ってもいいのか?」
 今度はズバリと聞いてみた。聞かなくても、ここまでくればもう確信だが公表する事が今日の目的の1つでもある。
「はい。…あの、俺、ホント何も知らないんすけど…ヨロシクお願いします。」
「こちらこそヨロシク。春が楽しみだな、藤原。」
 ペコリと頭を下げた拓海に涼介は笑って返事を返した。啓介も満足そうな笑顔である。
(注:この話は勝手に作ってます!後で原作と合わなくても気にしないようにヨロシクですぅ〜(爆)←いつもやんかー)

「おいおい、一体何の話だ?」
 一部のレッドサンズの面々も何やら満足そうだが、他の峠の者たちはサッパリだ。
「春から…コイツと俺達で新チーム作んだよ。…県外遠征用のな。」
 ニヤリと笑ってそう言った啓介に、どよっと大きな騒めきが起きた。
「何だとー!何時の間にそんなオイシイ話になってんだよー!」
「ドコだ?ドコとやんだ?」
 次々と寄せられる質問に涼介は苦笑した。思っていた通りだが、やはり拓海への皆の興味は凄まじい。
「おいおい、ドコも何も、今日ドライバーを手に入れたトコロだぜ?…まあ、そのうち情報は廻すさ。楽しみにしててくれ。」
 楽しげに涼介がそう言った。

「よーっし!面白くなってきやがったぜ!あ、そうだ!おい、藤原!さっきのアイツはドコの奴だっけ?」
 待ちきれないというように目を輝かして、先ほどからの疑問を口にした啓介に、拓海はつい笑ってしまった。こういう時の啓介は何だか子供のように楽しそうで、拓海はけっこう気に入っている。
「渉さん?渉さんは埼玉ですよ?…あ、そう言えば、渉さんから啓介さんに伝言あったんだっけ…。」
 ぽんっと手を打った拓海に啓介は不思議そうな顔をした。
「俺に?…何だよ?それ…」
 拓海はすぅっと息を吸って啓介にピタッと視線を当てながら、びしっと指さした。
「『次は決着つけるからな、覚悟してろよ!』…だそうです。」
「…ふん、上等じゃねぇか!」
 ニヤリと啓介は笑った。そのセリフに目にモノ見せてやんぜ…と思ったのはいいとして、啓介は突き出された拓海の指をちょいとつついた。
「…あのさ、伝言はいーんだけど、お前、何だよ?このオーバーアクションは…」
 ちょっといつもの拓海らしくないノリだ。
「え?…だって、渉さんがカッコつけて伝えろって…。」
 実はこれは拓海の思い違いだ。渉はFDに乗ってるカッコイイ兄ちゃんに伝えろと言ったのだ。
「……これ、カッコつけてたのか…。お前って変なトコ、素直だよなー。やっぱ、面白しれぇー」
 クックッと喉の奥で笑われて、拓海はどーいう意味だよっと眉を顰めた。だが、隣を見ると樹が、その反対隣を見ると池谷がフンフンと頷いており、今度はむうっと膨れてしまう。そして、ちろりと上目遣いで正面にいる涼介の顔を盗み見た。

 拓海と目が合うと、涼介は瞳を和ませて微笑んだ。それはいつもの涼介の微笑みで、結局涼介がどう思ってるかは拓海には分からなかったけど。ちょっと拗ねた顔をする拓海に、涼介が笑みを深めると、拓海もつられたように笑顔になった。今日の拓海は、いつもよりコロコロと表情を変えて、いつもより饒舌だ。

・・・予定通りの夜だが、ちょっと誤算もあったかな?
 涼介と同じ意味で拓海の事を気に入る奴が出ても可笑しくないくらい、今日の拓海は可愛い気がする。余計な敵を増やしたか…と、涼介は小さく苦笑した。
・・・ま、誰にも渡す気はナイからいいけどな。

───と、まぁ、結局そういう事なので、やはり今日は予定通りだ。
誰も彼もが満足した、クリスマスの夜だった。

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