【勝敗の行方】 P5 (兄弟×拓)→なつきVS高橋兄弟…別名、ちむのリベンジ(笑)
                      1700+1800Hit 雲丹さんリクエスト分

(SCENE 3 真実のライバル)

 ぐっとなつきは右拳を握りしめた。
・・・このまま、引き下がるわけにはいかないわ!よーっし!
「ねえ、拓海くん?」
目線と角度を完璧に調節して、なつきは猫なで声で拓海に声を掛けた。
「?何だよ、いきなり……気持ち悪いなぁ。」
しかし、拓海には通じない。逆にいつもと違う声に警戒されてしまったようだ。

・・・拓ちゃんって結構キツイ・・・あの子、可哀想に。
でも、受難はこれからだと思うよ。ホントに……
 なつきに気づかれないように、緒美は小さく溜息を付いた。
───判ってしまったのだ。
何故、涼介が今日のチケット持って来てくれと言ってきたのかが…。
 いつもならこんな子供っぽい遊びにつき合う2人ではない。
なのに、どうしたことか、今回は拓海も誘って遊びに行かないかないか?などと声をかけてきたので『おかしい』と思っていたのだ。
 恐らく、どこからか彼女の情報を仕入れていたのであろう。
拓海にアタックしている女の子が居る事だけでなく、今日彼女がココに来る事まで。
その迅速な情報収集能力は、医者ではなく探偵とかの方が向いているのでは?と、本気で思ってしまう程だが、まさかココまでとは……。
 緒美はまたふぅっと溜息をついて、ちらっと2人の方へと視線を向けた。

「ね?お願い、なつきも一緒していいでしょ?ね?ね?」
「・・・困ったなー。でも、オレ、他にも連れが居るしなー。」
 どうやら、彼女はこちらに合流したいと望んでいるらしい。

 ・・・飛んで日にいる夏の虫ってカンジだなー。
なつきの必死なその姿に、緒美は心でそう感想を洩らした。
でも、止めようとは思わない辺り、緒美の性格もかなりイイと思われる。

・・・ま、ショックは早いウチに受けておいた方があの子の身の為だよね〜。
 目の端に、猛然とこちらに向かってくる従兄弟達を捉えながら、緒美はこくこくと首を縦に振って1人でそう納得していた。

「ね?お願い、拓海くん……そのお友達にも頼んでみて!お願い!」
なつきは既に、お目々ウルウル攻撃に入っていた。(やーめーろー!きぃー(>_<))
 心の中では、どうせイツキだろうとか、この子と2人きりでなくて良かったとか、そんな事を考えながら。
「う〜ん、でも、オレ連れてきてもらってる立場だし・・・」
やんわりと断ろうとした拓海に、
「別に良いんじゃない?多い方が楽しいよ?きっと。」
意味深な笑みを浮かべながら、緒美は声を掛けた。

「でもな〜」
「どうした?2人とも。」
 う〜んと眉を顰めている拓海に、後ろから低い声が掛かった。
「わ!…わ、わ…」
 拓海はびくっと驚いたように跳ね上がり、そのまま後ろへツーッと滑ってしまった。
もちろん、その体は後ろにいる人物にぶつかって止まったのだが。
「り・・・涼介さんっ!ご…ごめんなさいっ!」
 縮こまって謝る拓海に、涼介は笑いながら声を掛けた。
「別にかまわないさ。オレの方こそ驚かしてすまなかったな。」
キラリとその歯が光って見えたのは、気のせいではないだろう。
拓海は「いえ、そんなの全然平気っす」とブンブン手を振って返事をすると、かち合った視線に同じく微笑んで見せた。(ああ、また兄と拓海が別人に〜(T_T))

 一方なつきは…と言えば、突然ドンッっと効果音付きで現れた(ように思える)2人の美形に呆然としていた。
片や、『これぞ美男子、白馬の王子もかくや』と言わんばかりの大人のムードに溢れた正統派ハンサム(大笑)、片や明るく脱色した髪をキレイに立たせて、キツイようで何処か甘い瞳の、見るモノの目を強烈に引きつける個性的な魅力のワイルド系ハンサム。
 どちらをとっても、その辺りには滅多に転がっていないだろうモデルばりのイイ男である。

・・・こっこっ・・・この人たちが、拓海くんの友達なのぉ〜!
うそ…とばかりに、何一つ言葉を発する事が出来ずに、なつきは2人を凝視した。
2人は…といえば、キョーミなさげになつきに一瞥をくれただけだったのだが。
「?」
あれ?となつきは心で首を傾げた。
・・・何だか今の視線、冷たかったよーな・・・まさかね。

「あの……こいつ、オレのガッコの友達なんすけど…」
ぼそりと拓海が涼介・啓介に話し始めた。
 先程なつきに頼まれた通り、一応話はしてみてくれるようだ。
・・・拓海くん!有り難う!大好きよ!
なつきは心でそう叫びながら、話をしている拓海の顔を見つめた。
「それで?」
うんうんと頷きながら、啓介は話を促した。
「その…連れが帰ったから一緒に居て良いかって言ってるんですけど……。」
怒っているのだろうか?と啓介を上目遣いで見ながら、拓海は申し訳なさそうに言った。
───別に啓介は怒っているわけではない。
声を掛けたのは、単に自分の方を向かせたかっただけで、彼のもくろみはどうやら成功したようである。
「ふーん」
言いながら、啓介はまたちらりとなつきへと視線を向けると、
「ま、別にいんじゃねぇ?」
ニヤリと笑いながら、そう言った。

 何だか不思議な笑い方だ。
嬉しい…とも違う。愛想笑い…でもナイ。
言うなれば、何かを企んでいるといったカンジだろうか?となつきは思った。
・・・何で?この人達・・・なつきの知らない人だしなー。
こんないい男、1度見たら絶対覚えているに決まっている。

「弟もああ言ってるし、藤原と緒美がいいのならオレはかまわないよ。」
涼介は拓海と緒美に視線を移してそう告げた。
もちろん、2人はこくんと首を縦に振っている。これで決まりである。
「有り難うございます。」
ペコリと拓海が頭を下げて2人に礼を言ったのを見て、
「よ・・・ヨロシクお願いします。」
なつきも慌てて頭を下げたのだった。
 ・・・あーあ、可哀想に。この先の災難も知らないで・・・
嬉しそうな様子のなつきを見て、緒美は声を出さずにそう呟いた。

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