【勝敗の行方】 P4 (兄弟×拓)→なつきVS高橋兄弟…別名、ちむのリベンジ(笑)
                      1700+1800Hit 雲丹さんリクエスト分

「・・・痛ってー、お前、ボーっとしてんなよなー!」
 礼を言うどころかそんなセリフを吐く不躾なその男に、ブチッと拓海の頭で何かが切れた。ところが、
「なーに言ってんのよ、このバカ男!!悪いのはどう見たって、貴方の方じゃない?!男なら潔く謝りなさいよね!」
拓海が怒鳴りつけるより早く、緒美がビシィっと人差し指を突きつけて、気丈にも怒鳴りつけたのだ。
「〜〜何だとー、この、ナマイキな!」
 怒った男が緒美へと腕を伸ばそうとすると、今度こそ拓海がその腕を遮りつつ、ドスのきいた声で怒鳴りつける。
「ざけんなよ、てめぇ……。女の子に手ぇ上げてんじゃねぇよ!」
 拓海の目は完全に据わっている。先程とはまるで別人だ。
・・・何だよ、コイツ〜。もしかして強ぇんじゃねぇか?!ヤベェ!
男は一瞬にして、拓海の迫力に怯んでしまった。

 そんな緊迫した空気の中に、
「ちょっと何してんのよー!・・・・アレ、拓海くん?」
なんとも気の抜けるような明るい声が飛び込んできた。
 3人が一斉に声がした方へと顔を向ける。
ストレートの髪を肩の辺りで揺らし、スケート場という場所にもかかわらずミニスカートをひらめかせている、その声の主の名前は『茂木なつき』。
現在、拓海に猛アタック中の同級生の少女である。
(・・・やっと出てきた(-_-;)でも、茂木の描写なんて出来ねぇ〜(笑))

「茂木。」
 拓海と男がハモってなつきの名を呼んだ。
そして、お互い顔を見合わせる。
「・・・た・・・拓海くん、どーしてココに?」
この2人に話をさせてはマズイとばかりに、なつきは畳みかけるように拓海へと問いかけた。
「どうしてって……別に、オレは誘われて来ただけだから。お前は?」
逆に返されて、ウッとなつきは詰まってしまった。
「な・・・なつきも誘われて来ただけなの。」
「こいつに?」
拓海は親指で、先程から自分達を眺めている男を指さした。
「う・・・うん。そう。ちょっと、気晴らしにーとか思って。」
 なつきはハハハとごまかすように笑いながら、言いにくそうにそう答えた。
そりゃ、現在アタック中の身では、他の男の誘いに乗って遊んでいるトコを見られては余り気分の良いものではないだろう。
「ふーん。」
 拓海は何の感慨もナイようにそう相槌を打った。
 こういう時の拓海は非常に判りにくい。
何にも考えていないように見えて、実はすごく怒ってたりする時もあるし、見たまま何も考えていない場合も多い。どちらなのかは、判断が付け難いのだ。

 いやー、拓海くん!お願い、怒らないでよー。
どうやらなつきは前者と判断したようだ。話題を逸らすように言葉を続けた。
「あの……ところでどーしたの?2人とも…」
先程からケンカになっていたらしい、自分の連れと拓海にそう尋ねた。
「どうもこうも……この人が後ろから拓ちゃんにぶつかってきたのよ!なのに謝らないから怒ってたの!」
 ずっと蚊帳の外扱いだった緒美が、ぎゅっと拓海の腕に取り付いて、なつきに答えた。

・・・えぇ!何?何なの、この子は!拓海くん〜!

 この時、なつきは初めて緒美の存在に気づいたのである。
なつきよりも長くて艶やかな黒髪をさらっと流し、大きな瞳はくっきりとした二重瞼に縁取られて、光を反射してキラキラと輝いている。
細身の体に可愛く着こなしたパンツルック、白いフィギアのスケート靴とも色を合わせていて、抜群のセンスが伺える。
 拓海の隣を陣取っているその文句なしの美少女に、なつきは驚いて声も出ない。
拓海にこんなに親しい女の子が居たなんて知らなかったのだ。

「ねぇ……その人、貴女の連れなんでしょ?いいの?放っといて?」
自分の方を見て変な顔をしているなつきに、緒美は声をかけた。
「え?・・・あぁ、大丈夫?」
おざなりなカンジで慌ててそんな風に問われて、気分いい人なんて居ないだろう。
案の定、男は不機嫌そーな顔をした。
「大丈夫じゃねーよ・・・たく、今日はケチがついたぜ。なつき、もう出ようゼ。」
 拓海への牽制のつもりだろう。名前の方でなつきに声をかけた男に、でもなつきは従わない。
「何言ってんのよ!拓海くんにぶつかったんでしょ?謝りなさいよ!」
 連れであるなつきにまでそんなコトを言われて、男はチェッと舌打ちすると、
「もうイイ!オレ1人で帰るわ……お前はソイツらと仲良くやってりゃイイだろ?」
そう捨てゼリフを残して、結局謝らずに1人で去って行ってしまった。

「ちょっと、待ちなさいよー!」
怒鳴ろうとしたなつきを、
「オレの方はもういいよ、茂木。それよか、追わなくちゃ行っちゃうぞ?アイツ。」
 自分の方を気にする必要はないと、拓海はなつきを促した。
「ううん。もーイイの、あんなヤツ!こっちからお断りだよ。それより、拓海くんは大丈夫?ケガはない?」
心配そうに、なつきは拓海に声をかけた。
「ああ、オレは全然。ちょっと転んだダケだしな。」
「よかったー。ゴメンね、拓海くん。」
「茂木が謝るコトないだろ?悪いのはあの男なんだから。」
 拓海は、何でお前が謝るんだとばかりに、首を傾げてそう言った。
「緒美もそう思うよ。気にしなくてイイって。」
 明るい声で緒美が賛同した。
笑顔もやはり可愛い緒美に、なつきは内心とっても焦っていた。
 ・・・マズイ。この展開は非常にマズイわ。拓海くんは渡せないんだから!

「そっかー。それもそうね。……ところで拓海くん?」
 ごくりと唾を飲み込んで、なつきはさっきから聞きたくて聞けなかった問いを口にした。
「その子……誰?……ウチの学校の子じゃナイよね?」
 これだけ可愛い子が居れば、当然校内でも話題になるはずだ。絶対に別の学校の子だと確信しつつ、なつきはそう問うた。
「え?・・・ああ、彼女?…緒美ちゃんって言うんだ。オレの友達。」
 ・・・『緒美ちゃん』?!・・・私なんて未だに『茂木』なのに〜!
 内心焦るなつきとは別に、友達と言われた緒美は嬉しげに微笑んで拓海の顔を見た。
「えへへ。そう友達なの!緒美です、ヨロシクね。貴女は拓ちゃんの学校のお友達?」
緒美がなつきにそう問い返した。
 ・・・『拓ちゃん』?!・・・私が『たっくん』て言ったら怒ったくせに〜!
「うん、そう。・・・茂木なつきです。ヨロシク。」
頭の中ぐるぐるしながらも、なつきはそう答えて緒美と握手を交わした。

・・・コレは、強敵だわ。拓海くんったら、やっぱり油断出来ないわー!

 しかし、悲しいかな。この時、なつきはまだ知らなかったのだ。
ホントの強敵はもっと別のトコロに居るというコトを・・・。

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