【勝敗の行方】 P2 (兄弟×拓)→なつきVS高橋兄弟…別名、ちむのリベンジ(笑)
                      1700+1800Hit 雲丹さんリクエスト分

(SCENE 2 ライバル登場)

 初めて履く、スケート靴である。当然ながら、拓海は上手く歩けない。
「う・・・わわっ!」
ぐらりと傾いだ体を、両端から兄弟が支えた。
「大丈夫か?」
 優しい声で涼介に気遣われて、拓海は条件反射のように頬を染めて慌てて礼を言う。
「は・・・はい。すいません。」
「イキナリ無茶すんなぁ…お前。ここはまずはゆっくり歩く練習から…だろーが!」
 そう言うと、啓介は拓海を支えながらゆっくり歩き始めた。
まず歩けなければ、氷の上には立てないからだ。

「・・・啓兄ったらすっごくウレシそうねぇー?涼兄。」
 2人を眺めてる涼介の横にぴょこんと立つと、緒美は涼介の顔を覗き込んだ。
緒美の目は、まるで『うらやましいんでしょ?』と言わんばかりの光を讃えている。
フッと涼介は口元に軽い笑みを浮かべた。
「ま・・・たまには譲らないとな。拗ねるからな、啓介のヤツ・・・」
「・・・そーいえば、昨夜は涼兄が1人占めしたんだっけ?」
緒美のその言葉に、涼介は軽く苦笑するだけで応えた。

「?何だよ、アニキ・・・何、笑ってんだ?」
 戻って来た啓介が涼介に声をかけた。
その腕の中に、もう拓海は居ない。
流石は拓海、早くも1人で歩けるようになったらしい。
「ん?・・いや…お前は幾つになってもカワイイって話してたのさ」
「そーそー、拓ちゃんの側に居ると、啓兄ったら若返ちゃってるよ。」
 アハハと笑い声をたてながら、緒美も涼介の悪い冗談に乗ってみる。
「〜何だよ、それ。寒イボ立っちまうようなコト言うなよなー。大体なー、緒美!若返るって何だよ!オレはそんなに年食ってねぇよ!」
 思いっきり顔をしかめながら、啓介はそう文句を付けた。

「さ、拓ちゃん。歩けるよーになったんだし、滑ってみよーよ。」
 文句を言っている啓介を軽くかわして、緒美は拓海へと声をかけた。
拓海が返事をする前にぐいっとその腕を引っ張って入場口へと連れていってしまう。
さっと氷の上に乗った緒美に続いて、拓海も同じようにリンクの中へと身を投じた。

「わぁ・・・すげ!」
 ふわりと浮かぶような、足下の不思議な感覚に、拓海は感嘆の声を上げた。
しかも、思わずこぼれたというような笑顔付きで。どうやら、とても気に入ったらしい。
 拓海の嬉しそうなその様子に、高橋トリオの顔も自然と綻んだ。
ああ、誘って良かった・・・というところだろう。
この笑顔1つだけでも、ココまで足を運んだ甲斐があるというモノだ。

「涼介さん達も・・・っとと、あれ?」
 後に続くであろう、涼介達の方を振り向こうとして、拓海はまた体制を崩してしまう。
何と行っても、ココは先程歩いた場所と違って、つるつる滑る氷の上だ。
初心者がイキナリそんなマネをするのは無謀というモノである。

「おっと・・・危ないぞ。」
「だから、イキナリ無茶すんなって言ってんだろ?」
 又しても、転びかけた拓海の腰を掬い上げるようにして兄弟2人が支える。
くくくっと2人に笑われて、拓海はまた真っ赤になった。
「・・・ハイ。すいません。」
・・・何か・・・オレってカッコ悪〜まぁ、格好良さでこの2人に張ろうとは思わねーけどさぁ・・・
それにしても……と、拓海は恥ずかしくなっていた。
 もちろん、2人は拓海を格好悪いと思って笑ったワケではない。
拓海のコワイモノ知らずなこんな一面も、こよなく可愛いと思うのだから。

 ・・・拓ちゃ〜ん、だからダメだって、そんな顔見せちゃったら!
あんまし可愛い顔見せると、おいしく頂かれちゃうよ〜。

 そんな3人のやりとりを見てた緒美は、はぁと小さく溜息をついた。
そして、拓海を挟んで並び立ち、丁寧に滑り方などレクチャーしてる自分の従兄弟達の顔にちらりと視線を向ける。
 2人とも、普段からは想像もできないような優しい表情だ。
恐らく、周り中の女性から集まる、この熱い視線にも気づいていないのだろう。
2人がすっかり拓海ONLYビジョンになっているコトが、長いつきあいである緒美にはすぐに分かった。

 ・・・もう!普段からのクールな面の皮はドコやったのよー!……2人占めしてぇ〜!
緒美だって拓ちゃんと遊びたいのに〜〜!

 くるくると3人の周りの廻りながら、緒美が考えていたのはそんなコトだ。
やはり、血筋。どうやら拓海は高橋一族の好みにジャストミートというトコロだろう。
                     
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