【イツキの不幸な1日】 P2 (涼X拓)がベースのつもり(-_-;)

「拓海のささやかなお願い」を涼介が叶えないワケもなく、かくしてイツキは勉強会に参加する事が決定した。
───が、しかし、よもやコレが自分に不幸をもたらすことになろうとは・・・・この時のイツキに判ろうハズもなかった。

(SCENE 2 不幸の当日)

「うわぁ・・・・でっけぇ〜!!」
───拓海のハチロクで高橋邸にやってきたイツキの第1声がコレである。
 口を大きくあんぐりと開けて驚いてるイツキを見て、拓海は自分が初めてこの家に来た時の事を思い出した。

───オレと同じ反応してんな、イツキのヤツ・・・
 あの時、涼介・啓介兄弟に連れられて来た拓海は、今のイツキと同じ反応をした。
『オイオイ、そんなに目ぇひん剥いてると落っことしちまうぞ?』と啓介は笑い、
『見かけだけさ。中は誰も居ないしリラックスしていいぞ?』涼介は微笑みながら軽く肩を抱いて拓海を邸内へと導いた。
今、思うと、2人の目の前で失態だったと拓海は思っているのだが、その時の2人が拓海の『予想通りの反応』に笑みを浮かべていたとは知る由もなかった。

「たくみー、オレ、何か緊張してきたよぅー」
「何言ってんだ、自分から行くって言ったクセに。・・・ほら、行くぞ。」
もういいかげん慣れた拓海が、さっさと足を進めて玄関へと向かっていく。
「うわ、待ってくれよぅ!」
イツキが慌てて駆け足で追いついたその時に、チャイムも押していないのに高橋邸の扉がカチャリと開いた。

「いらっしゃい、何だか賑やかだな。」
クスクスと笑いながら、涼介が顔を出した。
淡いクリーム色のセーターに、柔らかな生地の紺色のズボン。
ラフなスタイルなのに、彼が纏うと何故だか品がいいカンジになる。
一瞬、見とれるようにぽーっとなった拓海に、涼介が微笑いかける。
(もちろん、この笑顔の効果も彼は計算済みである)
「どうした?藤原。」
「・・・い・・いえ、何でもないっす。こんにちは、涼介さん。」
拓海は少し俯いて、ポリポリと照れたように頬をかきながら挨拶をした。
涼介は拓海のこの仕草がとても気に入っていて、クスリと笑みを浮かべると、今度は隣のイツキに視線を移した。

───ゾクリ
瞬間、イツキの背筋に寒いモノが走る。
「君が、武内くんだね?ようこそ」
 ・・・?何か、今一瞬、目がキツかったよーな・・・
ちろりと涼介を眺めてみる。今は全然そんな事はない。
気のせいだな、と自分に納得させたイツキは、 
「は・・はい、そうっす。今日はヨロシクお願いします!」
背筋をのばして、そう返事をしていた。
 ・・・前にも拓海が言ってたケド、何か、緊張すんなぁ。ホントに。
でも、思ってたより優しいカンジなんだなー、この人。
峠で見んのと大違いだぜ。
視線が自分から離れてから、緊張を解いたイツキは心の中で呟いていた。

「さ、中へ入ってくれ。」
さりげなく、拓海の背に手を回しながら、涼介は邸内へと2人を導く。
その動作は、まるで流れる水のようにスムーズで自然なカンジだ。
拓海はそんな涼介に嬉しそうに笑いかけると、涼介も微笑んで拓海を見つめる。
 ・・・?
イツキの心の中にまたもや疑問符が浮かぶ。
 ・・・何かちょっと・・・や・・・優しすぎねーか?
何だか、とても親密な2人の様子に、イツキはドキドキしてしまった。

「コーヒーでも入れて来るから。」
そう言われて、リビングに案内された2人は、持ってきた鞄から勉強道具を用意し始めた。
ちろりと、イツキは親友の姿を眺める。
心に疑問を持ってしまうと黙っていられるタチではないのだ。

 ・・・そういえば、何かコイツ、最近キレイになったっていうか、可愛くなったよーな・・・?まさか、まさかなぁ・・・イヤ、でも・・・・

 またちろりと拓海の方を眺める。何とはなしに、襟元へと目をやってしまう。
 ・・・そーいえば、最近、襟の高い服、よく着てんなぁ。コイツ…今日だってハイネックだし。

 ゴクンとイツキは唾を飲み込んだ。勇気を出して聞いてみよう。
「た・・・た・・・たくみ。」
いきなり、変に上ずった声でどもりながら自分を呼ぶイツキに拓海は首を傾げる。
「?何だぁ、イツキ?」
いつもの調子でボケーっとしながら拓海は返事を返した。
「あ・・あのさぁ、高橋さんってホント、拓海が言ったとおり、優しくて気さくな人なんだな。いつもこんなカンジなのか?」
そのイツキのセリフに、拓海はとても嬉しそうな顔をする。さっき涼介に向けたあの微笑みだ。
「そーだろ、緊張しちまうケド、話してみるとすごい優しくてイイ人だろ?」
拓海は自分の持っている涼介の印象を理解してもらえた事が嬉しかったのだが、イツキはその微笑みを誤解した。

「拓海。オレたち親友だよな。」
いきなり、真剣な顔して拓海の両肩に手を置くと、そんな事を言う。
「?どーしたんだ、イツキ?」
拓海はきょとんとした顔で、近づいたイツキの顔を眺めた。
「…お前、何かオレに隠してねーか?」
「何かって何を?」
「…だから、その…。ああ、もう、そんな事、言えねぇよ!」
頭を両手で抑えながら、悩みはじめたイツキに、拓海はますます首を傾げる。
どーしたんだ、コイツ。そんな事ってどんな事?
拓海にはイツキの考えてることがさっぱり判らなかった。
「よし、じゃぁ、拓海、お前、服ちょっと上げてみろ。」
口で聞いてもダメならば・・・と、イツキは実力行使に出た。
「はぁ?・・・ってオイ、何すんだよ!イツキ!」
強引に拓海の服をひっぺがそうとするイツキに、流石の拓海も慌てたその時、イツキの背後の扉が開く音がした。

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