【イツキの不幸な1日】 P1 (涼X拓)がベースのつもり(-_-;)
(SCENE 1 不幸の前日)
「たっくみー、おーい、たくみぃー、拓海ぃー!」
反響の強い学校の廊下、そんなに大声出さなくても聞こえるのに、なんであいつはああ叫ぶかな?と思いつつも、拓海は親友のイツキの声に足を止めた。
「何だよ、イツキ。1回呼べば聞こえるって…」
じろり。───拓海の隣に並んだイツキは拓海の顔をジト目でにらむ。
「んじゃ、返事しろよな。ったく、相変わらずボケーっとしやがって。」
「うるせー。生まれつきだよ。文句ならオヤジに言ってくれ。それより、何だよ。何か話あるんだろ?」
早く言えよとばかりに拓海が先を促す。
「そーだ、忘れるとこだったぜ。」
ポンと手をうちながらイツキは話はじめた。いつもこーやって、すぐ肝心なことを言い忘れるのだ。コイツは・・・。
「来週から試験だろ?明日、休みだから一緒に勉強しようぜ。」
───試験。それは学生に定期的に襲いかかる嵐である。
上手く乗り切れば、長い休みが手に入るが、1歩まちがえれば『補習教室』行き。
それでなくとも、近頃は車の勉強の為に、脳ミソはフル回転している。
これ以上詰め込むとマジで壊れるかも…と感じている拓海であった。
…が、今回ばかりは余り心配していない。何故なら…
・・・教えんの、上手いんだよなー、あの人。
拓海はボーっとその姿を頭の中に思い描いた。
最近、拓海に、車のことも勉強も色々と教えてくれる人だ。
───高橋涼介、『公道のカリスマ』と呼ばれ、顔良し、頭良し、性格良しと、とにかく何でも揃ってる彼に拓海はめずらしく懐いていた。
「…おーい、たくみ?たーくーみ?」
返事もせずに、またボーっと何処かへいってしまった拓海の意識を、イツキは呼び戻す。
こんなことはイツキにとっては日常茶飯事なのだ。
「…おぅ、わり。…勉強か。うーん、オレ、もう約束してんだよな…」
困ったように頭を掻く拓海を、イツキは意外なものを見る目で眺めた。
「え?お前がぁ?」
てっきり、いつもの『めんどくせぇな』が出ると思ったのに・・・。
「…約束って…もしかして、茂木とかぁ?」
拓海は首を振って『違う』と答えた。
「…なぁにぃー!お前、茂木以外の女とも…!」
顔を近づけて叫ぶイツキを、拓海は手で押しのける。
「バカ。違うよ。───ったく、なんで女にこだわんだよ。」
「…?んじゃ、誰と?」
イツキは不思議そうな顔をした。自慢じゃないが、自分以上に拓海と仲のいい男友達なんてこの学校にはいないハズだ。
「涼介さんと。」
「……りょ・りょ・りょーすけさんって、あの高橋涼介かぁ?」
イツキは、目を剥いて、驚いたように拓海に聞き返す。
「ああ。今度、試験だって言ったら、教えてくれるって言ったから。」
えへへ、と嬉しそうに笑う拓海を、イツキはポカーンと口を開けて眺めた。
───何か、随分懐いてんなーコイツ。めずらしー
イツキは興味深くなってきた。こんな風に、拓海が誰かに懐くのはめずらしい。
高橋涼介は一体どんな魔法を使ったのだろうか?
ちろり、と隣の拓海に視線を移す。
勉強しに行くというのに、ニコニコと随分機嫌が良さそうだ。
自分と負けず劣らず『勉強ギライ』の拓海が…。
「なぁ、拓海。それってオレも行ったらダメかなぁ?」
ダメで元々…と、イツキは同席を願い出た。
あの高橋涼介とどんな風に話をするのか…好奇心がムクムクとわき出てくる。
「…え?うーん、どうかな。」
涼介さん、優しいし、ダメとは言わないだろうケド・・・
拓海はちろりとイツキに視線を向けた。イツキはじっと拓海の返答を待っている。
どうやら引く気はないらしい。
「…涼介さんに聞いてみようか?」
拓海は溜息をつきながら、サラリと言った。
「え?ホントに?ホントに聞いてみてくれんのか?」
ラッキーとばかりにイツキは顔を輝かせた。
「聞いてみるだけだぞ。涼介さんがダメって言ったらあきらめろよ!」
多分、そんな事はないだろうけど・・・と思いつつ、拓海は一応クギを刺す。
「もちろん!サンキュー!拓海」
イツキはすっかり浮かれている。どうやらもう行けるつもりでいるよーだ。
しょーがねーなぁと思いつつ、階下の公衆電話へと足を進める拓海であった。
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