【Flower】 P6 (啓X拓)  可愛い話を書きたいのー(>_<) 頑張るっす!

───数日後。

「くっそー、何でこんな日に限って!!」
 この数日、らしくもなく悶々と一人悩み続けた啓介であったが、やはりこのままじゃダメだという結論に達した。
考えて結論出る問題じゃないし、ウジウジしてるのは自分らしくない。兄の花が悔しいなら自分も贈ってみればいい。それでどうなるか解らないけど、今よりきっと自分の気は済むはずだ。
 それに何より、やはり堪えるのだ。…拓海に会えない毎日は。まるで色を失った世界みたいでツマラナイ。
 今日は絶対、何が何でも会ってやる!と、啓介は拳を握って1人ガッツポーズを取った。


・・・でもアイツ、まだ怒ってっかなー?
 ふと、もう何度思い浮かべたか解らないほど頭の中にこびりついてる、別れ際の拓海の姿を思い浮かべて啓介は動きを止めた。
 覚えてるのは、戸惑いと怒りが混じった声。悔しそうに自分を見上げてきた顔と泣いてないけど濡れているように見えた大きな瞳。
掴んできた腕の強さ。いや、熱さだろうか?帰ろうとしたのは自分の方なのに、思わず掴み返してしまうほど、あの腕を離したくないと思った。
・・・そして、堪え切れずに抱きしめてしまった時の事。
拓海が体を硬直させて息を呑んだのをリアルに感じたあの一瞬、頭の中は真っ白になった。

 思い出しながら、啓介はあの日拓海を抱きしめた自分の手を眺めた。
「・・・本当にアレであのハチロク転がしてるっつーんだから……詐偽だぜ。」
抱きしめた体の意外に細い感触が、まだ手に残っているようだ。
身長は、標準より上回ってるはずなのに、拓海はまだどこか少年の危うさを残したままだ。
 例えば女であれば、もっと細くて小さいけれど。でも柔らかな体は多少力を入れてもどうってことないって気がする。
でも拓海の場合は、これ以上力を入れたら折れそうだと、バカな事を考えてしまった。

 同性である拓海への恋情を変だと思わないわけじゃない。でもそれを上回る愛しさがある。自分の中のベクトルは全部拓海に向かって走り出してる。絶対手に入れたいから、最後まで足掻いてみよう。
・・・絶対、今日会ってやる!
 啓介はもう1度、両手の拳を握りしめた。

───バコッ!

「高橋。お前な、物思いに耽ってる場合か?コラ!」
 後ろから掛けられた声と同時に、強い痛みが啓介の頭を襲った。
「いっ…つ───」
 痛む頭を押さえて振り向くと、其処にはコワイ顔をして先程啓介にレポートの再提出を命じた教授が本を持って立っていた。まだ年若な男だが、レポートに提出に関しては甘えを許さない。
 ここ数日、拓海の事で一杯だった啓介の頭でロクなレポートが出来上がるワケもなく、ものの見事に再提出を食らったのである。しかも、今日中に…だ。
・・・ちっくしょー、この疫病神!
「ま、単位入らねーってんなら構わないけどな。」
 恨みがましい目で見る啓介の心の声が聞こえたのだろう。からかうような声でそう言ってヒラヒラと手を振り去っていった。

「・・・ムカつく!」
 吐き捨てるように言って、啓介は図書室へと足を向けた。単位なんて…と言いたいトコだが結構ギリギリなのでそう言えないのが辛いトコロだ。
 やらなきゃならないなら、やるしかない。啓介は、普段からその力を出せばいいのに…と思えるほどの集中力でレポートを仕上げ提出した。

★☆★☆★

 普通なら何日もかけて仕上げるレポートを1日で仕上げたのだ。
啓介が大学を出た頃には、時計の針が夜の9時を過ぎていた。

 とりあえず、買おうと決めていた花を求めて、啓介は花屋へと訪れた。だが、とっくに店じまいだ。
「がー!ちっくしょー。あんなトコで疫病神に捕まんなきゃなー!」
 ガシガシと頭を掻きむしって花屋の前で雄叫びを上げる啓介に、道行く人は不振な顔を向けた。
 くっそーと思いながら、とにかく啓介はFDで拓海の元へ向かった。この時間ならバイト先より自宅の方が会える確率が高いだろう。
 アホな事をしてる間に遅くなってしまった…と、一般道路を走るとは思えぬ速度で走り続けた。拓海が眠ってしまう前に着かなければ、今日は会えなくなってしまう。

 信号待ちの交差点で、啓介はイライラしながら煙草を銜えた。火と点けて窓を開けると、歩道に止まる汚い軽トラから花らしきものがちらりと見える。
 あれ?…と思いつつ、啓介は信号が変わってすぐ、その歩道へと車を寄せた。

「よう!兄ちゃん、いらっしゃい。…ってもう、あんましねぇけどな。どーだ?お母さんにでも持って帰ってやんねぇか?たまには孝行しなよ!」
 軽トラと同じくイマイチ冴えない花屋の親父が、愛想良く啓介に声を掛けてきた。
どうやらもう、帰るトコロだったらしく、確かに薔薇のような豪奢な花は売り切れらしい。でも、美しい花はまだまだある。飾られているのがこれまた汚いバケツでも、花の美しさは変わらない。其処にあるだけで人の心を和ませる、不思議な力を放っていた。
「コレなんか、どーだ?長持ちするから母ちゃん喜ぶぜ。それとも、兄ちゃん…もしかして、もう嫁さん持ちか?若いのに、大したもんだ。」
 一人で陽気にしゃべる親父に、啓介は苦笑した。何言ってる、この親父…と思いつつ、啓介も一緒に花を物色し始めた。
 デンファレ、スターチス、ガーベラ・・・
鮮やかな花が色々並んでいるが、啓介にはドレがドレだか分からない。だが店の親父が進めたカラフルな花は、拓海のイメージと少し違っててピンとこない。

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