最近、豹馬がちずるにピアノを習とる。
最初は、何をトチ狂ったんかと思たワ。
豹馬とピアノやで?! どう考えても、似合わんし、アイツがそないな事するタマかいな。
「何や〜? 芸術にでも突然目覚めたんかい?! その歳でピアノのお稽古かいな」
驚きもしたやけど、その姿が可笑しゅうて、色々からかったろ思うた訳なんやけど … 。
「十三しゃん、いかんばい」
「そうですよ。 豹馬さんは、至って真剣です。 教えてる、ちずるさんもね」
「?」
大作と小介まで豹馬の肩もちよる。 何や、おもろないなぁ。
「アレも、訓練の一環なんですよ」
「アレが訓練〜?!」
小介の言葉に、思わず声がうわずってしもた。 バトルチームのメンバーに、ピアノが何の訓練になるんやぁ? 娯楽にしかならんのと違うか?
「ピアノで指の訓練しちょるとよ」
「!」
ピアノと訓練。 その関連が思いつかず悩んどったら、大作が教えてくれて、やっとワイにも合点がいった。
「そか … そっちの訓練か … 」
豹馬の手 … ガルーダに撃ち抜かれて潰された … アレは、ワイも目の前で見てたさかい、苦い記憶や。
あのまま豹馬が復帰できなんだから、きっとワイは、もっと大きな罪悪感に押しつぶされとったかもしれん。 ああやって、 “人工細胞” つこたサイボーグ義手のおかげで復帰したから、ワイも … 。
あの腕、使いこなすのに、豹馬は色々訓練しとった。 拒絶反応に、苦しんでた時期もあった。
けどぉ … 四ッ谷のおっちゃんが、太鼓判を押したにもかかわらず、まだ訓練をしよっちゅうんか?
「何だかんだ言っても、 “人工細胞” は、研究途中の物ですからね。 あの人工細胞を腐らせてしまう薬品もあったでしょう? 他にも、色々悪影響のある薬品等もあるかも知れませんから、博士達が色々調べてますよ。 それと、あのまま訓練を終わらせてしまった結果、人工細胞の筋肉が衰えて、また拒絶反応が出ないとも限りません。 ですから、訓練は続けた方が良いと、豹馬さんが判断して、自主的にやってるんです」
ああ、そうやった。 勝田博士がキャンベル星人に協力してる間に、色々改良したらしいけど、地球側にあるデータは、改良前の物。 詳細は、勝田博士しか分からへんしな。
「で、ピアノかいな」
「ちずるしゃんが勧めたとよ。 指の訓練になるっちゅうて」
「ええ、腕全体の訓練は、他にいくらでもやりようがありますけど、指の訓練となると … それで、ね」
確かに、ピアノは指をバシバシつこて演奏する物やしな。
「それやったら、パソコンのキーボードとかでもええんやないか? 実用的でもあるで」
なんだかんだで、ワイらは今、コンピューターと切っても切れん生活しとる。 パソコンは必須や。
「確かに、ソレは豹馬さんも言ってましたよ。 でも、パソのキーボードとピアノの鍵盤では、抵抗力が段違いなので、訓練ならピアノの方が断然良いんです」
「?」
小介の言うてることが、よく分からんかった。 『抵抗力が段違い』 ?
「さっき、オイ達も、ちょっとやらしてもろうたんじゃけど、ピアノの鍵盤は、キーボードのキーを押すのと同じようにはいかんばい。 ちょっとくらいじゃ、音も出んと」
「そうよ。 ピアノって 『ひく』 とは言うけど、漢字で書くと 『弾く』 だし、昔は、あの鍵盤を指で 『叩く』 と表現されたくらいなのよ。 音を出すには、それだけ力がいるの。 チョット押した位じゃ駄目。 実際にやってみれば分かるわよ」
豹馬のレッスンを一通り見て、自主練習時間になったらしいちずるが、ピアノを離れてワイらの話に入って来よった。
「ホンマかいな?」
「ホントよ。 豹馬が終わったら、やってみなさいよ。 参考までに、最初、豹馬は張り切ってやりすぎて、筋肉痛になったって事を教えておくわ」
「なんやてぇっ?!」
ピ、ピアノで筋肉痛 … ソレも、あの豹馬が … 信じられへんかった。
その後、豹馬のレッスン終了後、実際にやらしてもろたけど … ホンマや … 。
豹馬が、 「ピアニストを尊敬した」 て言うてたけど、納得や。
世のピアノを弾く方々、お見それしました … 。
* 忍のつぶやき *
いや、ピアノで筋肉痛になるかどうかは分かりません(^▽^;
実際、経験無いんで … 。 要するに、私は、それだけ真剣に練習してなかったって事ですね(爆) まぁ、筋肉痛になるほどはやらなかったけど、徐々に筋肉が発達してはいたかも。
でも、素人の人が、いきなり張り切ってやりすぎたら筋肉痛になりそうな気がしてね … 。
全然、例えが違うかも知れないけど、“ラジオ体操” って有るじゃないですか? アレは普段筋肉痛になるような体操じゃないですよね?
だけど、真剣に … ホントに真剣に、曲げる所をしっかり曲げ、のばす所をしっかりのばして、そんな風にあの体操を10回ばかりやると、翌日筋肉痛になりますよ。 ホント。 コレは経験あり(^▽^;