用があって、自由時間に外に出た時の事たい。
写真館から出てきた家族連れを見て思い出したとよ。
ああ、もうそんな時期なんじゃのぉ。
あでやかな振り袖。 結い上げた髪。 普通はせんじゃろう化粧。 紅い唇が印象的たい。
七五三。
懐かしか。 オイの家もオイを始め、弟と妹がやったばい。 特に一番下の妹がやったのが最近じゃけん、思い出がすぐに蘇るとよ。
今の家族は、記念写真を撮ってきたとね。 家でもあるばい。
オイのヤツは今見返すと、恥ずかしか〜///
大三の写真と比べると、そっくりじゃ … 。 大三が着ている着物がオイのお下がりっちゅう事もあるんじゃけど … そっくりじゃぁ。
「ああ、大作んトコは兄弟いたんだったっけな」
豹馬しゃんの言葉に思い出したばい。 他のメンバーは兄弟がおらんね。
「ワイは、家の旅館で祝いの宴をやったんやけど、ほとんど憶えとらんワ(^▽^; 3歳と5歳の時やからなぁ」
「5歳というのは、物心がやっと付く頃ですからね」
「女の子は3歳と7歳だから。 3歳の時のは、さすがに憶えてないけど、7歳の時のは、ちゃんと憶えているわ。 着た事無い綺麗な着物にはしゃいだものよ」
「僕は、5歳の頃の憶えてますよ。 着物ではなく、洋服でやりました。 千歳飴持たされて神社で写真を撮られたんですけど、そんな時まで本を読んでいたので叱られました(^▽^;」
「ふ〜ん … 」
どぎゃんしたとね、豹馬しゃん? テンションが下がっちょる。
「なんや? テンション下がっとるなぁ、豹馬」
十三しゃんも気づいたとね。
「ん〜 … 俺、憶えてねぇしなぁ … 3歳のもそうだけど、5歳でやった記憶ねぇ … ってか、やってねぇかも」
えっ、やってなかと?!
「ちょうど5歳の時だったからなぁ … 両親が死んだの。 たぶんその時のゴタゴタでやらなかったんじゃねぇかな? 太陽学園もカトリック系だし、孤児達に晴れ着着せてやれる余裕ねぇもんな。 そーいや、色々行事やったけど、太陽学園で七五三があった記憶ねぇなぁ … 日本じゃ余りメジャーじゃねぇ “ハロウィン” なんかはあったのに … 」
意外な事実たい。 以前、太陽学園は結構行事をやっちょったような事ば聞いたけん、当然七五三もあるもんと思っとったばい。
「でも、着物を着なくてもできるでしょうに? 絶対に着物を着ないといけないって訳じゃないんだもの … 」
「そうだけどよ … 今思うに、他の子が着物着て両親と一緒にいるのを見ると … って、園長先生達は考えたのかもな」
あ、ナルホド。 太陽学園の子供達は両親ば亡くした孤児達。 着物はともかく、両親と一緒にいる子供達ば見るのが辛かことじゃ思うて、七五三の行事ば避けたんじゃね。
「今は、どうだか分からないぜ?」
豹馬しゃんの表情が、チョット寂しげじゃったのは、やっぱり七五三の思い出 … 両親との思い出が無かったせいじゃろか?
豹馬しゃんには、気の毒な話題じゃったね。
将来 … どれくらい未来かは分からんけど、自分の子供に寂しい思いばさせたくなかね。 七五三は一緒に祝ってやりたかよ。
ばってん、今はキャンベル星と戦争中。 イヤでも孤児になる子が増える可能性があるばい。
1日も早く、この戦争ば終わって、豹馬しゃんみたいな孤児が1人でも少なくなるようにと、そっと心の中で祈ったと。
* 忍のつぶやき *
実際に、施設関連で七五三を “やる・やらない” がどうだか分かりません。
ただ、太陽学園はカトリック系みたいだったので、日本色より外国色の方が強いかもって勝手に考えただけで(^▽^;
今は、五条雄吉さん辺りが、古着の着物を何着か寄付してくれて、毎年、七五三に該当する子が着回してるって事にでもしといて下さい。