日常戦闘記録 7月

　「大作ぅ。　下、ちゃんと支えてろよぉ」
　「大丈夫たい」
　オイは、大きな笹飾りをシッカリと抱えたと。
　昨日は、七夕。　結構年中行事をやっちょるコネクションでも、七夕飾りが７月に入ってすぐに飾られたとよ。
　殺伐としてしまいがちじゃけん、ソレを吹き飛ばすように、色々イベント事があるばい。
　まだ、未成年のオイ達にも気を遣ってくれちょるみたいじゃし、オイ達より幼い一木兄妹もいるけんのぉ。
　ばってん、七夕が終われば、飾りは、はずさにゃいけん。
　みんなで、こげに綺麗に飾り付けたもんじゃけん、勿体なかと思うんじゃけんど … このままじゃと、季節はずれ、ムードも無くなるたい。
　今、脚立の上で、豹馬しゃんが、上の方で笹が倒れないよう結ばれたヒモを解いちょる。
　他の部署でも飾られてた。　ばってん、仕事の邪魔になってしまうっちゅう事で、ここリビングルームにある笹より、小さな、ささやかな笹じゃった。

　「七夕も終わりやなぁ」
　「綺麗なのに、勿体ないわね」
　「でも、このまま飾っておくと、季節感がおかしくなりますからね（笑）」
　みんな、オイが考えた事と、同じ事考えちょるね。
　「そーいや、この笹、どうするんだ？」
　「焼却処分です」
　「願い事は、煙に載って、天に届きそうね」
　「でも、ホンマは、川や海に流すモンなんやで、コレ」
　えっ？　流す？！
　「出たなぁ、旅館の一人息子（笑）」
　「そー言った雑学は、人一倍ですよね、十三さん（笑）」
　「任しとき～♪」
　季節毎の節句は、客商売の旅館では、必須行事。　加えて、お客しゃんに説明ばするけん、実家が旅館の十三しゃんは、その辺の雑学が凄かばい。

　「 “七夕送り” もしくは “七夕流し” っちゅうてな、川や海に流して穢れを清めるっちゅう風習があったんや。　けど、今は流すの禁止されとるから、無理やな。　環境問題とか、絡んどるみたいやで」
　環境問題 … そうじゃろうね。　いくら自然の物じゃっちゅうても、そう簡単に土に戻る物でもなか。　水に流せばなおのこと … 。　特に竹は、腐りにくかモンに見えるばい。
　「流すのは “７日の朝” とか、 “７日の夜” とか、色々説があんのや」
　「そう言えば、お雛様にも流す物があるって言ってたわね？」
　「 “流し雛” やな？　人の形をした紙の人形（かたしろ）で体を撫でて、それを川に流すことで穢れを祓い、災厄祓いを願うんや」
　「日本人の穢れって、 “流す” 物なんですね」
　そう言われれば、そうじゃのぉ。　どっちも流しちょる。

　みんなの手も借りて笹を床におろす。
　ほんに勿体なか。　この飾り、暇を見て７月になる前から作ったとよ。
　コレは、コネクション中の飾りと一緒に、コネクション内の焼却施設で焼却処分たい。
　ちずるしゃんの言った通り、煙に載って、願い事が織り姫と彦星のいる天に届く事を祈るしかなかね。

　燃やす事では、穢れは取れんかのぉ？