ファンファニーシリーズ
超電磁ロボ コン・バトラーV




恐怖の千羽鶴
原 作 八手 三郎 構 成 企画者104 デザイン 石垣 好晴 ドラマ 長浜 忠夫


 ちずるの弾くピアノ、ベートーベン作曲 “エリーゼのために” の調べに乗って聞こえてくるのは、無粋な大作の大イビキ。
 「グワーッ、グォーッ」
 そんな大作を呆れて見ながら、豹馬は欠伸をした。
 「ふぁ、あーぁ。 全くよく寝るよなぁ、大作も…。 それにしたって、一体どうしたんだい敵さん? 今日で十日も音沙汰がないぜ?」
 豹馬の言葉にピアノを引く手を休め、ちずるが振り返った。
 「何を贅沢言ってるの? 豹馬くん。 あたし達が暇なのは、いいことなのよ。 ねぇ、博士?」
 パチリパチリと小介と将棋を指しながら、四ッ谷博士がちずるの言葉に答えた。
 「そーだっ。 我々の目標は一日も早く我々の仕事を無くす…おっと、ちょちょちょ、ちょっと待ってくれよ小介くん。 そりゃ、きついなぁー。これじゃ、ウチの王様の旦那、行くとこが無いぞ、こりゃぁ…」
 小介は、そんな博士の言葉に呆れながら…。
 「またですか? もうコレで三度目ですよ?」
 ビーッ、ビーッ、ビーッ。
 突如、鳴り響くインターホンの呼び出し音。
 「そーら、おいでなすったか敵さん」
 豹馬は 『待ってました』 というような調子。 それとは反対に、四ッ谷博士は緊張した様子でインターホンのスイッチを入れて所員に尋ねた。
 「どうしたっ、何が起こったっ?」
 こちらの心配とは裏腹に、インターホンの向こうの所員は、至って平静に話し出した。
 「いえ、何も起こりません。 ただ、所長宛に太陽学園の子供達から “千羽鶴” が送られてきました。 今、そちらへ持たせます」
 「ああ、そいつはありがとう」
 お礼を言って、インターホンのスイッチを切る。
 「…一羽一羽、真心を込めて折ってくれた千羽の鶴…。 いじらしいことをしてくれるねぇ、あのチビ共…ハハ。 さぁって…ん? どうした、小介?」
 千羽鶴が届いた事に、しみじみしていた四ッ谷博士だったが、小介の様子がおかしいことに気付き声を掛けた。
 「シィッ、何か鳥の羽音が。 それもたくさんの…」
 小介は耳を澄まし、注意深く音を聞いていた。
 「あぁ?」
 少々驚く四ッ谷博士。
 「千羽鶴?」
 ちずるは、突拍子もないことを言った。
 「まさかっ」
 ちずるの言葉に 『そんな馬鹿な』 という様子の豹馬。
 「ん…何が、どげんしたとぉ?」
 騒ぎに気付いて目を覚ました大作は、まだ半分寝ぼけている様子。
 どんどん近づいてくる羽音。 やがて、羽音の正体が部屋の中に乱入してきた。 ガラスが乱入者によって勢い良く割られる。
 「あっ?!」
 乱入者を見て、豹馬は驚いた。 ちずるの言葉が現実になって現れたからだ。
 「つ、鶴だっ!」
 乱入してきた折り鶴の大群を見て、大作も一気に目が覚めた。
 「危ないっ、伏せろっ!」
 とっさに身を伏せ、折り鶴の大群を避ける四ッ谷博士。
 「敵の作った、ロボット折り鶴です!」
 小介は、飛んできた鶴を見て、その正体を口にした。
 「畜生っ!」
 敵の不意打ちに悔しがり、豹馬は折り鶴を睨み付ける。
 「全員、銃を取れぇっ!」
 ロボット折り鶴に対して、全員が銃で応戦する。
 「あぶない、豹馬っ。 キャッ」
 ちずるは、豹馬を狙うロボット折り鶴に気を取られ、注意がおろそかになり、他のロボット折り鶴に自分の体を斬りつけられそうになった。
 「イテッ、腕をやられた。 こいつらの翼はカミソリで出来ている」
 怪我をしながらも、銃を撃つ手を止めない豹馬。
 「ああ、俺もだぁ。 あ、あ、足ぱやられたぁっ」
 柔道の達人大作も、相手が捕まえられない、動きが早く小さなロボット折り鶴では、いいように翻弄される。
 「いかん、応戦しながら後退だ。 非常用シューターで脱出し、司令室に逃げ込め!」
 四ッ谷博士の指示に従い、全員で銃を乱射しつつ後退する。すると鶴が方向転換をした。
 「ああっ、見てっ。 鶴が外に出ていく!」
 ちずるが示す方向を見ると、鶴が部屋から外へ出て、一カ所に集まり始めた。
 「おや? 千羽の鶴が一つに集まって行くぞ」
 小さなロボット折り鶴は、変形し始めた。
 「おおっ。 一つ一つが部分品になって、組み立てられていく」
 小さかったロボット折り鶴の集合体が、次第に大きな折り鶴に変化していく。
 「まず、羽。 あ、胴体!」
 瞬く間に、巨大折り鶴が形成されるのを豹馬は驚きを隠せない様子で見ている。
 「首っ? 首が出来たわ!」
 ちずるも、そのロボット折り鶴の素早い合体に驚愕している。
 「どんどん、でかくなっていきよるばい」
 大作の言う通り、あの小さかった千羽鶴の面影は、もう無かった。
 「うひゃぁっっ! こりゃぁ、折り鶴のオバケだっ。 ツルゴンだぁっ!」
 小介の叫びに応えるかのように、奴隷獣 “ツルゴン” が、皆の前で完成した。
 「ウッハハハハハハハハハ…驚いたかっ! これで南原コネクションもおしまいだな。 そぅれっ、ツルゴン、研究所を徹底的に壊すのだ!」
 一体、コネクションの様子をどこで見ていたのか? どこからかガルーダが現れて、ツルゴンにコネクション破壊名令を下した。
 「しまったっ。全機出動! 全機出動! 急いでコンバインするんだ。 警備隊員に告ぐ、全力をあげ進塔を守れ。 全砲火を集中せよ!」
 ビーッ、ビーッ。
 四ッ谷博士指揮のもと、警備隊が何とかツルゴンを押さえている間に、バトルチームは各バトルマシンに搭乗完了した。
 「全員、発進準備OK」
 バトルチーム全員の搭乗を確認して、豹馬が司令室に報告を入れる。 即座に四ッ谷博士の命令が飛ぶ。
 「発進!」
 一斉に発進するバトルマシン。 すぐにコンバインセット、合体のための編隊飛行に入る。
 「レーッツ、コンバイーン!」
 いつもの如く、合体を開始。 程なくして、コネクション上空に、地球の守護神の勇姿が現れた。
 「コン・バトラーVッ!」
 「んーっ、ちょこざいなっ。 それ、ツルゴン、お前の力を見せてやれぃ!」
 ツルゴンはガルーダの指令を受けて、コネクション攻撃を中止、コン・バトラーに向かって行った。
 「ゆくぞぉっ、アトミックバーナー!」
 ツルゴンに向けて、コン・バトラーの両腕から紅蓮の炎が襲いかかるが、ツルゴンは全く意に介さない。
 「いかん、全然堪えないぞ。 バトルガレッカー!」
 ツルゴンの様子を見て、豹馬は武器を変更した。 しかし、やはり全く通用せず、ガレッカーは弾かれてしまった。
 「ダメだ、おっそろしく固ぇ羽だ。 まるで歯がたたねぇ」
 「ウワッハハハハハハハハ。 超特殊鋼で作られたこのツルゴンの羽。 そんなオモチャが通用すると思うか! ゆけっ、ツルゴン。 その鋭い羽でコン・バトラーを切り刻め! その尖った爪で突き刺し、くちばしで引き裂くのだ!」
 ツルゴンの反撃が始まった。 超特殊鋼の翼が、爪が、くちばしが襲いかかる。
 「超電磁ヨーヨ…うわぁっ! だ、ダメだぁっ」
 ヨーヨーで応戦しようとしたが、ヨーヨーを繰り出す前にツルゴンに組み付かれてしまった。
 「うおぉっ、コックピットに爪がっ!」
 「きゃぁぁっ。 くちばしが、あたしの目の前に!」
 大作のすぐ横にツルゴンの爪が食い込む。ちずるの鼻先にはくちばしが!
 「大丈夫か?! 大作、ちずる?!」
 悲鳴の聞こえた二人を案じて、豹馬は声を掛けた。
 「そこだ、ツルゴン。 今の傷跡を狙え!」
 ガルーダは、形勢不利のコン・バトラーを見て勢いづき、ツルゴンにさらなる指示を与える。
 「ビックブラストッ!」
 コンVの大型ミサイルビックブラストが、ツルゴンに向かって突進。 命中し爆発するが、やはりツルゴンは涼しい顔をしている。
 「だ、ダメだ。 ビクともしねぇ」
 かなりの破壊力を持つビックブラストでさえ、ツルゴンに傷一つ付けられないのを見て、豹馬は焦りを感じ始めていた。
 「豹馬、助けて! あたしの肩を爪が、爪がぁっ」
 再びコン・バトラーに組み付くツルゴンの爪が、マリンのコックピットに深く食い込む。
 「待ってろ。 今、引き離してやる。たあーっ」
 コン・バトラーをフルパワーにしてツルゴンを引き離しにかかる豹馬だが、ツルゴンの爪は深く強く食い込んで全く離れない。
 「ダメだ、凄ぇ力だ。 一体、どうしたらいいんだ?!」
 「豹馬さん。 このツルゴンは、分解組立獣です。 どっかにポイントがあるハズだ!」
 万策尽き、頭を抱える豹馬に、ずっと考え込んでいた小介がアドバイスを与えた。
 「なるほど…。あ、そうだ。 最初に組立が始まった場所…羽、羽の付け根がポイントだ」
 豹馬の脳裏に、ロボット折り鶴が集まって組み立てられていく様子が甦った。 羽の付け根のポイントに、唯一狙いが付けられる腕を差し出した。
 「ロックファイター!」
 一斉に、コン・バトラーの指から小型ミサイルが連射され、次々とポイントに打ち込まれた。 予想通り、ここがポイントだったらしく、ツルゴンは悲鳴を上げてコン・バトラーから離れた。
 「ん、いいぞ。 ツルゴンが離れた。そこだっ、一気に責め立てろ!」
 「超電磁スピーンッ!」
 四ッ谷博士の指示に従って、豹馬は即座にコン・バトラーをスピン体制にする。
 「羽の付け根を狙って、突進だ!」
 ツルゴンは、先程のポイントへのロックファイター攻撃がかなり効いたのか、コン・バトラーのスピンによる突進に気付いていない。そのまま、ポイントをスピンが貫き、ツルゴンは大爆発して果てた。
 「やったぁーっ!」
 「でかしたぞ、コン・バトラーッ!」
 ツルゴンの爆発を見て、豹馬は歓声を上げ、四ッ谷博士も満面の笑みでコン・バトラーの活躍を称えた。


 卑劣な手を使って攻めてきたガルーダの攻撃は、今日も失敗に終わった。 だが、地球改造を狙うキャンベル星人の野望は、終わることはないのだ。 明日は、さらに強力な奴隷獣を差し向けて来るに違いない。
 頼むぞ、若き五人の戦士。 がんばれ、コン・バトラーV! 地球の平和は、君達の肩にかかっているのだ!




セリフはそのまま落としました。ちなみに、コネクション所員は立壁和也さん。最後のナレーションは市川治さんでした。
他の部分は、効果音などを聴いて私の想像で追記しましたので、余り本気にしないでね(^_^;



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