#12 憂鬱なるルガルマーダ

「・・・本当に村ですね。」
「本当に村なのよ。」
「少しくらい発展してると思ってました。」
「だから言ったでしょう、村なの。」

不毛な会話を続けながら、サオリは笑顔のユイナとともに街をフラフラと歩いていた。

アキラは荷物を宿に置くと、そのままへばって寝てしまった。
それを見たサオリは「根性がない」と怒っていたが、体力自慢のアキラが倒れるほどの
荷物がどれくらいの量なのかは、想像にお任せします。【誰だ】←天の声

そんなわけで、女2人はその間ルガルマーダの街を探索することにした。
一応、ジャスはサオリが持っている。【持・・・?】

ジャスが言うには、やはりこの村周辺から強いチカラを感じるらしい。
しかし、ジャスはチカラが弱まっているために詳しい位置まではわからず
仕方なく、サオリたちが自分の足で探すこととなったわけなのだが。

「全く、肝心なときに役に立たないんだから・・・。」
「やかまし。 とにかくココの村におることは確かや。」
「でも、村と言っても結構広いわね・・・。」
不毛な言い争いを続けるサオリとジャス(in袋)を横目で見ながら、ユイナが一人つぶやいた。






「で、見つかったんですか?」
「見つかってたら手ぶらで帰ってこないわよ。」
「確かに。(汗)」
結局一日探したが何も手がかりを得ることも出来ず戻ってきた2人を見て、
アキラは「はぁ」と大きなため息をついた。【その直後、サオリが刺さるようなにらみをきかせていたが】
「こりゃあ、先は長そうだなあ・・・。」






一晩明けて。
疲れていたためにサオリが起きたのは昼も近くなってからだった。
「あれ、アキラは・・・?」
「あ、サオリ、起きてたの?」
にっこりと笑顔を浮かべ、ユイナがどこかで聞いた言葉をつぶやく。
サオリの言葉通り、部屋にいるのは2人だけだ。

彼女は朝食のあまりのパンをサオリに手渡し、さらに口を開いた。
「なんか、ココの北西の炭坑跡の洞窟に亡霊がでるっていう噂を昨日チラッと聞いたって教えたのよ。
 ジャスと2人ですっ飛んでいっちゃったわ。(汗)」
「・・・まあ、彼霊術の家系だけ合ってそーゆーの大好きですからねぇ・・・。」
昨日とはうって変わって、今度はサオリがパンを持ったまま大きなため息をついた。

村は相変わらず静かな山村の雰囲気が漂っている。
ただ、宿の周りに少々人―――主に子どもが多いのが気にかかった。
どうやら、比較的珍しい旅人を一目見ようと集まっているのだろう。
昨日も、街を歩いていて何かと目を引いていたようだったことはサオリも少しは意識していたのだが。

「さて、それじゃあ私たちも行きましょうか・・・?」
「どこにですか?」
半ば引きずられる形でサオリが問う。
パンを食べ終わったサオリの手を持って、ユイナは外へと繰り出したのだった。
こちらは村人の物珍しそうな視線など気にならないらしい―――。
「決まってるでしょう、炭坑跡よ。」






「ユイさん・・・。」
「何?」
「私たちはこの村で勇者を捜すのが仕事だったような・・・。」
「あのまま村で探し続けても余計な荷物が増えるだけじゃないかしら?」

もっともな意見にサオリが沈黙すると、ユイナはそれを同意と受け取って再び歩き出していった。
炭坑跡へと。

その後ろ姿を見つめながら、サオリはふとこの一連の旅を思い出していた。

ウェスパの壊滅、行方知れずになったタツヤを探すため旅に出た。
何故かついてきたユイナとその護衛の為に何故かついてきたアキラとともに長い旅を続け、
いつの間にか再びウェセントの地を踏んでいる。
タツヤは手がかりすら見つからなかった。 しかし、旅の目的は増えていた。

八勇者。

今まで以上になんの手がかりもなく、天使・ジャスの感じるチカラのみを頼りにした、
今まで以上に当てのない旅。
それでも、当たり前のように2人はついてきてくれる。
正直、嬉しい反面、この先の苦労に巻き込みたくないという気持ちも膨らんでいる。
この先、もしも他の勇者達と合流したときユイナ達はどうするのだろうか・・・。

サオリは、一人そんなことを考えながら歩いていた。

「何暗い顔してるの・・・?」
気がつくと、先を歩いていたはずのユイナが横からひょい、と顔を出した。
あまりに突然だったので、思わずサオリは声を上げて飛び退く。

「ボーッと歩いてると危ないわよ? ほら、しゃきっとして!」
(自分で無理矢理連れ出しておいてしゃきっとしろって方が・・・)
仮にも彼女は王女なので、サオリも不満は口には出さない。
ユイナは「別に不満があれば言えばいい」と言うが、実際、言えない。

「また私たちのことでも考えてたの?
 私たちは大丈夫だから。 自分の身くらい自分で守れるわ。
 この先の旅がどんなに危険だろうと、私たちはサオリについて行くつもりだから。」
ユイナは普段はニコニコしている割に、喋るときは良く喋る。 しかも、言動は鋭かった。

ちなみにアキラが居ないためもあり、サオリと2人きりとなるとユイナは良く喋った。
比較的歳の近い女同士と合って、普段は静かにしているユイナの口数も自然と増えていく。
本人に自覚はないが、サオリはその『人を引きつけるチカラ』を持っている。

彼女のそのチカラは、ウェスパの時代からずっと変わらない。
それこそが、ユイナ達がサオリについていこうとした理由でもある―――のだが。






「サオリ=イガラシさん、ユイナ=サワタリさんですよね?」
唐突に名を呼ばれ、2人ははっと後ろを振り返った。
ちなみに、サワタリというのはユイナの偽名。
【―――さすがにキタミじゃ自分が王女だと言うことを公表しているようなモノだ。(笑)】

そこにいたのは、まだ幼さの残る少年と、その姉のような横にはねた黒髪の少女だった。

「何か・・・?」
「アキラさんから聞いています。 たぶん、女2人組が自分を追ってココに来るって。」
「また・・・ずいぶんと手の込んだことをするわね、彼も・・・。」
ユイナが半ばあきれながらつぶやいた。

と、黒髪の少女が更に問う。
「お二人はどうなさるんですか? 炭坑に入るなら私たちが案内しますよ?
 中は迷いやすいですからね。」
「それもアキラに言われてるの?」
「ええ。」
少女が笑顔で頷くのを見て、2人はため息をつきつつ顔を見合わせた。
そして。

・・・2人と一緒に廃坑の中へ行く?
 1 行く
 2 行かない

「・・・ユイさん、1ですか?」
「もちろん、聞くまでもないでしょう?」






「亡霊が現れるって言うのは、確かにこの辺りなのかい?」
「ええ、間違いないスよ。
 今までこの辺りで十数回は目撃されてますから。」
「ふ〜む・・・。」

難しい顔をしてアキラが唸った。
彼がいるのは炭坑の奥の、とある突き当たりだ。

地元の剣士の青年とともにこの炭坑に潜り込んだアキラは
眠ったままのジャスを明かり代わりにして【おいおい・・・】中を順調に進んでいたのだが・・・。
ちなみにジャスは、廃坑に入るずいぶん前から眠ったままだ。 起きたら文句を言うかもしれない。

「まあ確かに弱い霊力を感じるけれど・・・。 気になるほどじゃないなあ。」
「で・・・でも、見たんスよ! みんな! 俺だって!!
 ウソだと思って来てみたら・・・、最初は今みたいに何もいなかったんスよ。」
それを聞いて、アキラも反応する。
「・・・最初?」
「え、ええ。」
思わず青年も声を落としてつぶやいた。

「あの時は、しばらくココで原因とか手がかりを色々さがしてみたんスよ。
 元々ココが廃坑になったのも、亡霊騒ぎが原因で・・・。
 まだココは少しは鉱物も取れるはずなんスよ。
 ―――で、しばらく手がかりを探していたら、突然炭坑の壁という壁から・・・。」
そこまで言うと青年の顔は青ざめ、それ以上は言いたくない、と言う顔になった。

(どうするんや?)

突然、アキラの頭に聞き覚えのある声が響く。
「じゃ・・・ジャス!?」
「?」
思わず声を上げたアキラを青い顔の青年が不思議そうに見上げた。
それを見て、アキラの顔は赤くなる。

(じゃ・・・ジャスか・・・!?)
(そや、そんなに驚かんでもええやんか。)
隣にふわふわ浮かぶ光球―――ジャスの声が頭に響く。
(外では喋るな言うたからな。 頭に直接喋っとるんや。
 しっかし・・・目ぇ覚めたらいきなり廃坑の中っちゅうのはビビッたで。)
(ジャス・・・お前そんなことできたのか・・・!?)
アキラも驚きが隠せない。 コレが天使の力なのか―――?

(いや・・・元々は出来たんやけど、チカラが無くのーてからは出来へんかった。
 きっと・・・、八勇者が近づいとるんやな。 チカラが戻ってきとる。)
(なるほど。 じゃあ、今横にいるサブロウって青年―――
 話によるとなかなかの剣の使い手らしいが、彼は違うのか?)
(ちゃうな・・・。 本物やったらもっと本人に影響が出るはずや。)

頭の中でアキラとジャスの会話が交わされていく。
全く意味も分からず、サブロウ青年はただ立ちつくしていた。
見えない恐怖におびえ―――。



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慧太のつぶやき。

何か中途半端かな・・・。
現在、いろいろ忙しい毎日。(え)
少し文章力が落ちてるかな・・・。

頑張るぞ・・・色々(え)
あああ・・・、ココの部分も適当になってる。
ストーリーは結構重要に盛り上がってるんだから。
・・・こんなんでも。(笑)