#7 夢醒めて

「―――・・・?」
彼女が・・・サオリが目を覚ましたとき、そこは心地よく揺れる船室のベッドだった。






(・・・夢・・・にしては妙にリアルだったような気がするけど・・・。)

とその時、サオリは横の椅子で眠っている見慣れた女性の存在に気がついた。
(ユイさ・・・ん? ずっと看ていてくれたのかしら・・・。)

サオリがそう思った瞬間、静かだった海面が一瞬動く。

船が揺れる。 その揺れでユイナが目を覚ました。

目を覚ましたユイナの第一声。

「あ、サオリ。 起きてたの?」
なんだか拍子抜けな質問・・・。
(・・・起きてたの?って・・・、
 記憶がいまいち確かじゃないけど確かあの時私ぶっ倒れたはずだよね・・・。)
てっきり「大丈夫!?」とか、「気がついたの!?」とか聞いてくると思っていただけに
サオリは少々呆然とした。

「―――えっと・・・、ちなみに私はどーなってたんですか?」
「私たちもよくわからないけど。 なんだかあのタマゴ?にふれた瞬間凄いチカラがあふれ出てきたの。
 あの小さなタマゴから。 そのチカラを浴びてあなた、倒れたのよ。」
チカラを浴びて倒れると言う言葉に、サオリはさっきまで見た「夢」を思い出していた。

白い城と銀の天使、そして―――神。
その神によってチカラを浴びた自分、そして、消えそうになる意識。
彼女はそれをすべて鮮明に覚えている。
「でも目が覚めて良かった。 4日間ずっと倒れていたから。」






「4日間!?」
おもわず馬鹿でかい声で叫ぶサオリ。

「最初の2日間は静かだったのがその後うなされ始めて・・・。
 もうダメかと思って・・・。 でも、無事目覚めて良かったわね。」
そういうと、ユイナは立ち上がり部屋を出る。

(・・・、4日間・・・全然記憶が・・・ない・・・。
 ―――ん、あ・・・あの人は4日もぶっ倒れていた人に
 起きてたの?って聞いたわけ・・・!?)

サオリは一人、更に呆然とするのみだった。






それからしばらくして。

一度部屋を出たユイナはアキラを連れて戻ってきた。
彼の手には、例のタマゴが握られている。
サオリはすぐにそれに気付く。
「それって、私に反応した・・・タマゴ?」
「このタマゴが何かは未だに分からないけれど、サオリさんと何か関係があると思って。
 一応持ってきてみたよ。 身体の方は大丈夫?」
「まぁ、大丈夫よ。」

サオリの様子を見てアキラは安堵の表情を浮かべた。
「ならよかった。 ところで―――、
 サオリさん、このタマゴ・・・。 もう一度見てくれないか?」
彼の表情には申し訳なさそうなモノがにじみ出ていた。
まぁ、前回タマゴを手にしたことでサオリが倒れているのだから当然―――だろうか。

サオリ自身、やはりこのタマゴのことは知りたかった。
おそらく、神に関係しているモノだろう。
そうでなくとも、夢の話はして置いた方がいいかもしれない。
もしも本当に八勇者だとすれば、世界を巻き込んだ一大事なのだから。






と、言うわけで(笑)
サオリは再び、謎のタマゴを手に取った。
その瞬間。

ぴしっ。

「!?」

いままで全く動くことの無かったタマゴにひびが入り、わずかに動き始める。

「さぁ・・・、鬼が出るか蛇が出るか・・・?」
「こーゆー場面で使う言葉だったっけ・・・、サオリさん?」
2人の後ろのユイナは無言で笑顔―――なんだか夢の大天使ティアラと行動が似ているが。

そして―――。






ぱん!

と、音とともにタマゴが割れると、
中から出てきたのは小さな光の玉だった。
ふわふわと、空中を制止するわけでもなく漂っている。

「・・・なんだろ、これ・・・。」
「俺に聞かれても困るんだけど。」
一同、訳が分からず呆然。

「ちょい待ち、そんな呆然とせんといてくれや!」

突如、聞いたことのない少年らしき(関西弁らしき)声が響いた。
「・・・誰の声?」
呆気にとられるサオリの目の前へ謎の光球はふわふわ〜、と音もなく飛んできた。
サオリがおそるおそる口を開く。
「もしかして、今の声・・・この光球から聞こえてきたのかしら?」

すると―――
「お、姉ちゃんよう分かっとるなぁ。 結構美人やし。 ええねぇ。」

一同、さらに呆然。






「で、あなたは一体何者なの?」
ようやく落ち着きを取り戻し、サオリは関西弁らしき言葉を喋る光球【長いな・・・】←天の声
へと尋ねた。
まぁ、あまりにもありがちな質問だったが。

「ん、俺は今はこんな格好やけど、これでも正真正銘天宮殿の天使やで。」
「は・・・はい!?」
思わず、すっとんきょうな声を上げるサオリ。
夢の中で見た天使とは明らかに違う。
別人とかの問題ではなく、形状が明らかに違うのだから
サオリは全く訳が分からなかった。

と、後ろからユイナが声をかけてきた。
「ちょっと・・・私にはどうも話が掴めないんだけど?」
「私にも掴めないんで、私に聞かないで下さい・・・。」
なんとも頼りない返事を、サオリはつぶやいた。

と、光球。
「サオリ=イガラシやろ、あんた? 神に言われたことをもー忘れたんかいな?
 八勇者の一人、大地の勇者なんやで、あんたは!」
「!」
サオリは声にならない悲鳴―――
―――正確には声として出てこなかった悲鳴を上げた。

夢ではない。

真実なのだ。

「八勇者・・・!?」
存在を忘れられかけていたアキラが呆然とつぶやく。
一応、その単語は聞いたことがあるらしい。
―――まぁ、聞いたことのない人間も居ないだろうが。
それはもちろんもう一人のユイナも同様だ。
その彼女が口を開く。
「えっと・・・、天使さん?
 私たちにも分かるように説明してくれないかしら―――?」
「ん・・・、何や、まだサオリはあんたらに何も話してなかったんかいな。
 しゃーない、俺が説明したるわ。」






天使を名乗る光球の説明したことは、サオリが見ていた夢
・・・いや、夢ではない現実と一致するモノだった。

「大体の事情は分かったわ、それで、サオリに世界を救わせるってこと?」
「そや。」
天使(光球)はふわふわと、相変わらず止まることなく浮かんでいた。

「・・・。 サオリさん・・・、どうするんだ、あんたは?」
「決まってるでしょう、他の八勇者を捜すしかないわ。
 アレが―――あの夢が真実なら、このままでは魔王が復活する可能性があるのよ?」
アキラの問いに、サオリは力強く答えた。

実のところは、不安だらけだったが―――。

と、サオリの答えを聞き、アキラは頭をかきながら頷き、言った。
「分かった。 それならもちろん俺も行くからな?」

「え!? アキラ、この旅は今までとは桁違いの危険な旅なのよ!?
 分かってるの!?」
「じゃあ、世界が滅びるかもしれないってのをただ見てろって言うのか?
 もう見てるだけなのはイヤなんだよ。 あの時・・・都を守りきれなかった。
 もうイヤなんだ!!!」

アキラの言葉にサオリは言い返そうとはしなかった。
彼の性格はよく分かる。 何を言ってもこーゆーときは聞かない、頑固なヤツだ。
「・・・分かったわ。 でも、ユイさんは・・・?」
「何言ってるのよ、あなた達二人が行くのに私は留守番?」
「いえ・・・。 聞くまでもないか・・・。」
サオリはハァとため息を付きながらも、仲間のいる、その安心感に包まれていた。
改めて、仲間が大事であることに気が付いた―――。

と、そのユイナはサオリの横で浮遊する天使へと視線を移す。

「ところで―――、天使さん、あなたは?」
「ん、俺はもちろん行くで? 神から、八勇者を導けっちゅー命を受けとるんや。
 よろしく頼むで、ユイナ―――ユイナ=キタミ。 ウェスパの王位継承者、やろ?」

その名を呼ばれ、ユイナの微笑みが止まった。

「・・・さすが天使様・・・、お見通しって訳ね・・・。
 でも今の私は王位継承者でも何でもないわ。
 全てはあの日から―――。」
「ユイさん!」
サオリの声に、ユイナの口が止まる。
次の瞬間には、再び笑顔を取り戻したユイナの姿があった。

「ゴメン、ちょっと思い出しちゃって・・・。
 ・・・? そろそろ大陸・・・みたいよ?」

「陸!?」
ユイナの言葉にアキラが駆けだしていく。






悲しき思い出の眠る大陸で

新たな旅が始まる。



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慧太のつぶやき。

何か変な話になってますね。(汗)
ようやくユイの本名が出ました。
あ、天使の本名出すの忘れた。(汗)
次回だ、次回。(笑)

さぁ、何か最初の頃と文体が違うような・・・。(死)
終わる頃にはどーなる事やら。(笑)