#5 天界大戦

白い城。
1年前まで自分のいたあの城とは違う。
純白の壁が一面に広がる城。

そこに、サオリはいた。

【・・・って、どこですか、ここは。】←天の声

「ちょっと!! どこですかって、聞きたいのはこっちよ!!
 どこなのよここは!?」

【おい、サオリ!! 天の声に相づち返すなんて反則だろ!!】

まぁまぁ・・・、落ち着いて天さん(←天の声のこと。)
いきなり場面が変わりすぎて、サオリも混乱してるんだから。(笑)
そのうち彼女も慣れますって。
【わ・・・分かったよ】
じゃ、壊れちゃったストーリー元に戻しますからね。(笑)






サオリが立っていたのは大きな階段の下。
と、階段の上に何者かの人影が現れた。

「サオリ=イガラシさん、ね?」
そこにいたのは一人の銀髪の女性だった。
ただ、普通の人間では無さそうなのは確かだ。
彼女の背中には白い翼が生えている―――。

「・・・天使!」

サオリはかつてヒムロに見せてもらった一冊の本を思い出していた。
かつて、50万年続いたという天界大戦の様子をつづった聖書の写本。
その本で、サオリは確かにこの女性を見た気がした。

「こちらへ。」
そう言うと女性はサオリに背を向け、歩き出した。
まだ階段の下で呆然としていたサオリは、
あわててすぐさま女性に駆け寄ると単刀直入に訪ねる。
「もしかしてあなたは・・・大天使ティアラ様じゃないですか!?」

すると、天使は振り向き、微笑みながら無言で頷いた。

大天使ティアラ=ディオン。
誰もが一度はその名を聞いたことがあった。






今より5000年前に終結した50万年にも及ぶ「天界大戦」。
それは、「混沌」より生まれ出た「光」と「闇」―――、
つまり「神」と「魔王」の戦い。
今より100万年前に生まれた魔王は
自らの作り出した「魔物」で神の作った「生物」を消し去り
世界を我がものにしようとした。
そのことに危険を感じた神は結界を張り、
生物たちの住む「地上世界」と自分たちの住む「天界」を分断することで生物を守った。

魔王は激しく憤怒した。 そして、天界を我がものとし、それから地上を手にしようと考える。
天界を手に入れるべく神は天使や精霊を、魔王は悪魔や魔族を従え戦う。

これが、「天界大戦」。
戦いは熾烈を極めた。
しかし、主戦力であるはずの魔族のほとんどが戦いを放棄したことによって魔王軍の戦力が縮小。
数多くの犠牲を払い、神優勢のまま戦いは終わる、と思われた。

だが、今から約8000年前。

魔王軍の大群との戦いで、4人の大天使の一人・リディア=ノインが死亡―――消滅した。
突然の出来事に、神側のバランスが崩れ結界が消滅した。
つまり―――、魔王達の目の前に目的の地上世界が現れたのだ。

神が戦っている長い間に地上は独自の発展を遂げた。
その地上を支配していたのは「人間」。
彼らは「文明」を持ち、他者を支配していた。
だが―――、それも中級悪魔程度のチカラで壊滅するようなモロいものだったのだ。

人間達は今までに見たことのない、自分たちとはレベルの全く違う者達に為すすべがなかった。

神は焦った。
今、人間を初めとする生物たちを守らなければここまで数十万年にも渡る
【と言っても不死の力を持つ神達の時間感覚は人間達とは明らかに違うらしいが】
戦いの意味が無くなってしまう。

だが、生物を守ることに力を入れては戦力が分断し魔王軍に押されることは必至。
神は2つの大きな、大きすぎる選択を強いられた。

だが、事態は意外な方向へと動く。
生物たちを守ったのは、今まで戦わなかったあの魔族達だった。

魔族王・ブライト=ガルシアの考えた末の判断―――。
魔王を裏切り大戦に参加しなかった自分たちを魔王は許しはしないだろう。
このまま魔王が勝てば、次は自分たちが滅ぼされる番。
それは明らかだった。

今魔王側につけば許されるかもしれない、と言うこともささやかれた。
神側についても迎え入れてくれる保証はない。
これもまた、大きな選択だった。

結果、神は魔族を受け入れる。
【これは神は大戦のため魔族を利用したとの説もある。】
とにかく、神の危機は乗り切ることが出来た。

魔王はまたもや憤怒した。
自らの生み出した魔族が裏切り、生物を守り戦っている。
それは魔王にとって屈辱であった。

それをきっかけとして、魔王軍はあっという間に圧されていく。
数十万年に渡る戦いは、わずか3000年ほどで決着がつくことになる。

だが、最後の最後に魔王軍は意地を見せる。
魔族最強の大剣士・カルロス=ルシュルナークを討ち取り、
大天使の一人・フェルキナ=スピリットも壮絶な死を遂げた。
さらにはフェルキナの死によってその魔力が暴走し、地上世界は二つに割れた。
【現在ではそれがもう一つの世界・地底世界となっている。】
神軍の主力の死が相次いだことで、神は魔王のチカラを認めるとともに
自らも最後の秘策を出すことにした。

この3000年の間、人間を初めとする生物たちは
天使、魔族、そして悪魔達の戦いをただ傍観していたわけではない。
その戦いの影響を受け、彼らの文明は少し廃れてはいたが
彼らの戦闘能力は飛躍的に成長していた。
神は、そこに目を付けていた。

潜在能力の高い人間に自らのチカラの一部を分け与えることによって
彼らの眠っている能力をそれ以上に引き出すことができる。
神が選んだのは、8人の人間だった。
やがて彼らのチカラは天使と同格、それ以上までに成長する。
神は彼らを「八勇者」と呼んだ。

そして―――、今から5000年前。
天使、魔族、そして八勇者のチカラにより、魔王と多くの悪魔達は
異空間へと封印された。

その後。

魔族は神に自ら申し出て残りの悪魔たちとともに別の空間へと去っていった。
その別の空間が現在の「魔界」。
そして、神は再び天界と地上・地底界を結界で分断した。
こうして、長き大戦は終結したのだった。

【なんか・・・珍しく凄く真面目モードだったねぇ。】
そりゃ真面目モードが本来の姿でしょう?(←語り部さん職務放棄)






これが―――、世界に語り継がれる天界大戦の歴史だ。
この年を0年として現在、天使歴5031年。






そして―――、サオリはひときわ大きな扉の前へと案内された。
ティアラの後ろを、サオリは一言も発することなくついてきた。
【いやぁ、ここまでセリフがないとある意味楽だねぇ・・・。】

「ここです。」
ティアラの声とともに、重い扉が音もなく開く。
そこは、玉座の間だった。

―――そこに座っていたのは長い銀髪の男性だった。
その背中に翼はない。

その男性―――いや、まだ青年とも言うべき外見だが―――を見て
サオリはかつて無い威圧感を感じた。
「まさか・・・あなたは・・・!?」

「そう、このお方こそすべての生の創造主。 神にあられます。」
ティアラはそう言いながら微笑んだ。






「か・・・神様?」
呆気にとられるサオリに、『神』がゆっくりと近づいて来る。
そして。

「サオリ=イガラシだね。 突然こんな場所に連れてきて悪いと思っている。
 だが、これはこの世界に関わ・・・」

「ちょ・・・ちょっと待って下さい!!」

罰当たりだと思いながらサオリが神の言葉を遮った。
「神様って言うのは・・・あの・・・、私のかつて教えられた知識だと
 銀の髪ではなく金の髪をしていると思ったんですが―――。
 す・・・スイマセン、こんなことで。(汗)」
これには今度は神が呆然とした。(笑)
神だけではなく、ティアラまでも固まっている。
サオリも焦る。

「あ・・・あの、スイマセン!!!」
「いや、いいんだ。 君の知識は正しいからね。」
神はにっこりと微笑むとティアラの方をむき直した。

「ティアラ『様』、スイマセン、やっぱり俺無理ですよ。」
「・・・そう、それなら仕方ないですね。」
・・・様?
全く状況が掴めないサオリ。

「あの・・・、私には何がなんだか。(汗)」
【そりゃそーだ。 天の声の俺も掴めないし。(おい)】
「ごめんなさい、別に騙すつもりではないのです。
 ゆっくり説明しますから。」

変わらない微笑みを浮かべたまま、ティアラは言った。



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慧太のつぶやき。

文章多いなぁ(笑)
前回(#4)に比べスペースや改行連発少ない割に文ばかり詰め込んでしまった(汗)
まぁ、そんなこんなでいきなり登場人物が(笑)
サオリがここにいる理由、それは次回。
いつも微笑み(笑)、のティアラ様が登場しますが、このお方は
個人的にもお気に入りなので(おい!)重要人物ですよ。 あと・・・天さん大暴走(笑)
このときばかりは語り部さんも職務放棄(爆)